東日本大震災:現地医療活動レポート21

12月に入り大槌町を吹く風はだいぶ冷たくなってきた。

東日本大震災:現地医療活動レポート21
私たちこころのケアチーム(医療チーム)は大槌町社会福祉協議会の生活相談員の皆さんと、現在は町の集会場を巡回しながら「健康のツボ講座」をおこなっている。こころのケアと直接関係ないのでは?という疑問を持たれる方もあるかもしれないが、ここには、体のケアこそこころのケアに最も重要なツールだと考えている我々の思いがこめられている。講座では、鍼灸師でもある精神科医を中心に、ヨガや整体などの東洋的健康の観点や方法も取り入れながら参加者の方々の具体的な心身の悩みにアプローチしていく。

最近では、この講座に、県立大槌病院にお勤めの宮村医師にもご参加いただいている。被災された方々に何かできることはないかと震災後故郷の長崎よりこの町に越し、2012年4月より同病院に赴任されたのだ。宮村医師は、こころと体のつながりを専門とする心療内科の医師であり、実は、長年の修行を積まれた僧侶でもある。

宮村医師はこの講座において、こころについてこのように説明する。

「心はどこにあるかと聞かれたら脳ですが、脳をいくら細かくしても心はみつからない。心とは、脳の働きそのものです。では脳の中でこころの機能はどうなっているか。脳の中心部には生命を維持し体を機能させるための『意』の機能があり、そのひとつ外側には哺乳類共通の情動をつかさどる『情』、最も外側は人間に特徴的に発達した知性の『知』の機能がある。体をあまり動かさない知性優位の我々の生活は、脳の最も外側の『知』の部分がよく働いているものの、逆に最も中心の『意』の部分があまり使われていないともいえる。こころとは脳の働きそのものですから、生物として体を十分に使わないという『意』の部分の影響は『情』の部分にも伝わりこころに影響があるのです。脳をみると体とこころは密接につながっているということがよくわかります。」

気持に余裕がない状況では「運動は身体の健康に大切とわかっているけど」なかなか体を動かすのは億劫になりがちである。しかし、実際講座において体を動かすと、生物が本来そなわっている機能『意』が活性化し、気持ちよさを感じ『情』、これならやってみようか『知』へとつながり、しんどい気持が楽になるというこころの姿が現れてくるのが、参加者の表情の変化をみているとよく分かる。 「手足が冷えてつらいのよ」と訴えていた方が、小さな部屋の中で少し動いてみただけで数十分後にはうっすら汗をかいて笑顔になっている。

お互いに悩みを打ち明け、励まし合い、笑いながら元気を取り戻すお手伝いをこれからも続けていきたい。

ニココロプロジェクト 医療チーム 
看護師 関本史恵

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。