
最初の子どもを妊娠した当時、サイさんは妊娠中の母親が直面する健康上のリスクについて十分な知識を持っていませんでした。夫もサイさんの体調をあまり気にしておらず、サイさんは妊娠前と変わらず畑仕事や農作業を続けていました。妊婦健診も医師が指定した日程どおりには受けず、約20km離れた街の市場へ買い物に行く機会があるときだけ、ついでに受診する程度でした。体調は特に問題なく、自分は健康だと感じていました。
やがて出産予定日が近づき、サイさんは家族とどこで出産するか相談しました。当時の2023年7月は雨季で道路事情が非常に悪く、バイクで病院まで行くのが困難だったため、自宅で出産することにしました。当時は、サイさんの村では女性の多くが医療者が立ち会ってない自宅出産をしていたため、自分も自宅出産で問題ないと思っていました。義母と年配のお産を手伝った経験のある人が出産を手伝うことになりました。
ところが出産当日、激しい痛みを伴った陣痛が約2~3時間続きました。そしてサイさんはあまりの痛みに気を失いかけ、みるみる容体が悪化してしまったのです。驚いた家族は急いで車を持っている隣の村の知人に頼んで車を出してもらい、クアン郡病院へ搬送しました。病院でサイさんの心拍数と血圧が低下していて、胎児機能不全を引き起こす可能性があることが判明しました。病院ですぐに適切な処置が行われ、サイさんは無事に出産。母と赤ちゃんの命は守られました。
この経験は、サイさんにとって大切な教訓となりました。病院で出産することは、妊婦と赤ちゃんの命を守るために非常に重要であると実感したのです。もし今後また出産することがあれば、医師の指示に従い、妊婦健診を定期的に受けて経過を確認し、必ず病院で出産したいと考えています。それによって不安を減らし自分自身の健康を守ることができると感じています。
そして、サイさんは現在、世界の医療団のプロジェクトの村落保健ボランティアに志願し、自分の村の女性が同じ経験しないよう、自身の体験を伝えるようになりました。村の女性だけでなく男性も集め、妊娠中の健康管理の大切さについて理解を深めてもらうための健康教育を行っています。妊婦健診を妊娠中に少なくとも4回受けること、医師の指示に従うこと、重労働を避けること、栄養のある食事をとること、そして必ず病院で出産することなど伝えています。
サイさんはこう話します。「病院で出産することで、母親と赤ちゃんの安全を守ることができます。予期しないことはいつ起こるかわからず、母親の命に関わる深刻な事態につながる可能性もあります。そのため、妊娠中から出産まで適切な医療を受けることが、母子の健康と命を守るために何よりも重要なのです」
サイさんのような村落保健ボランティアの活動により、サイさんの村では2026年に出産した女性11人のうち9人が病院で出産しました。現在、100%を目指して世界の医療団と村落保健ボランティアが活動を続けています。

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