第3回ハウジングファースト国際シンポジウム総括レポートはこちらから
鼎談:ポリーヌ・ロンテ 氏 × サンドリン・ビュタイェ 氏 × 稲葉 剛 氏
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MdM:つくろい東京ファンドについて、おしえてください。 |
易になってきて、路上から脱する人も増え、路上生活者の絶対的な人数は減ってきました。 |
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生活保護を受けることができたとしても、
まず乗り越えなければならない集団生活(首都圏の場合)
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稲葉:集団で福祉事務所に押しかける、まるでデモのようでした 笑 |
題が深刻化しているんですが、物件に入居者が入らない大家さんから連絡が来るようになりました。 |
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1人暮らしができるか、できないかの判断とは・・・
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稲葉:はい、そこが問題なんです。現行の生活保護の制度では、敷金、礼金など初期費用として上限279,200円を支給する仕組みがあります。ただその制度を利用するには、「1人暮らしが可能」という福祉事務所の判断がなければならない。福祉事務所は、金銭管理ができない、キレイにできない、などの理由をつけてきます。そこで私たちが、アパートに入った後もサポートするので、と話し、初期費用を出してもらうよう交渉します。 |
方式の場合、福祉事務所の判断をクリアしなければならないというデメリットがある反面、一方で自分の住みたい部屋をゆっくり探すことができるというメリットもあります。借り上げ住宅の場合、ここに住みたいというご本人の希望があれば、最初から直接、恒久的なアパートに入ってもらうケースもあります。 |
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敬遠される高齢者のアパート入居、87歳宮田さんの場合・・・
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稲葉:日本では、70歳以上の高齢者はなかなかアパートを貸してもらえない、今、特に東京などの都市部で孤独死が問題になっています。部屋の中で亡くなっていて、その発見が遅れる、次の借り手が見つかりにくくなるので、大家さんとしてはそのリスクを避けたい。 |
稲葉:精神障がいの方と、というのは聞いたことがありませんが、高齢者と学生が住むというのは実験的にも行われていますし、高齢者が多い団地に学生を受け入れて、コミュニティ活動に参加することを条件に家賃を安くするというのは最近聞きますね。 |
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LAの路上から東京のアパートへ! 宮田さんのお話はこちらから
ハウジングファーストが全てじゃない、どう活用させていくか。フランスの場合・・・
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稲葉:今、7団体で活動を行っているのですが、それに対してもいろんな反応があります。従来型というか、たとえば貧困ビジネスはダメだけれども、宿泊施設できちんとしたサービス(支援)を提供すればいいのではないか?という意見や東京オリンピックを機に、”ハウジングファースト”が行政によって悪用されるのを懸念している などの議論もあります。 |
間8000ユーロが支給され、民間の住居に入居し福祉支援を受けられるいわゆる「ハウジングファースト・ライト」と呼ばれる制度が立ち上がる予定です。現在、例えばソーシャルワーカーの訪問の頻度など具体的な点を詰めているところです。 |
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ハウジングファーストが公的に取り入れられると・・・ベルギーの場合。
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稲葉:IDRは公的な助成を受けていますか? |
っているが、政権が変わればまたどうなるかわからない。ちょうどあと2年で選挙があります。私たちは保健省からの助成を受けて、活動しています。ブリュッセルは支援団体が多いので、助成金の申請をする時にそれぞれがフォーカスする対象を示さなくてはならないというのもあります。 |
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日本で公的に運用するために、必要なこと
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稲葉:日本で行政がハウジングファーストにお金を出すとなった場合、サンドリンさんの話にもあった「夢(妄想)を実現する」というような支援の個別化が難しくなるのではないか、を懸念しています。 |
サ:ベルギーでは、生活保護をもらったとしてもアパートなどに入らなくてはならない、というルールはありません。そのため、ソーシャルワーカーが路上やカフェに訪問することもあります。 |
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なぜハウジングファーストなのか、それはそこに一人一人の人生があるから、制度でひとくくりにできるものではない。
公的にハウジングファーストが導入されている2つの国との違いはたくさんある。でも共通していることもある。トマト(意見の相違)はどこにでもある、そして当事者、チーム、支援団体、行政、大家さん、コミュニティ、すべては対話することから始まることも。
ハウジングファーストはひとつじゃない、その国の、その地域の、ハウジングファーストを。
■ポリーヌ・ロンテ 氏保健社会学研究者・政治学博士
DIHAL(難民や貧困層にむけた住宅支援を手がけるフランス政府機関)が2011年より実施する公的ハウジングファースト・プログラム(アン・シェ・ソワ・ダボー)の公衆衛生研究チームにて、5年間活動に従事。2015年6月、「アン・シェ・ソワ・ダボー」の質的評価をまとめた340ページあまりのレポートを発表した。2008年~2012年にはWHO協力団体にて、フランスのメンタルヘルス分野のベストプラクティス提言活動にかかる研究及び普及活動に携わる。2003年より現在まで、フランスの国・地域のメンタルヘルスにかかる政策にて、重度の精神障がい者のケアが適切に行われているか、精神医療の制度や職業慣習の見直しに努めている。
■サンドリン・ビュタイェ 氏公衆衛生/熱帯医学専門看護師・ブリュッセル Infirmiers de rue(路上の看護師たち)ハウジングファースト・プログラム責任者
8年にわたり、路上生活者の支援活動に従事し、衛生状態の改善、感染症予防対策などに取り組む。当初より住宅支援、精神医療、社会福祉を軸にした支援アプローチを取り入れ、路上生活者の社会復帰や自立のサポートを行う。現所属団体「Infirmiers de rue(路上の看護師たち)」では、2013年よりハウジングファーストの実践を開始、地域社会に対するアドボカシー活動も担う。活動は実践だけにとどまらず、ベルギー国内やアイルランド、フランスなどでもハウジングファーストの啓発活動を行っている。
■稲葉 剛 氏立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授/一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事
1969年、広島市生まれ。1994年より東京で路上生活者支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者への相談・支援活動に取り組む。2014年、一般社団法人つくろい東京ファンドを設立し、空き家活用による低所得者支援を事業化。同法人は、ハウジングファースト東京プロジェクトの住宅支援部門を担当している。
現在、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)、『ハウジングプア』(山吹書店)など。