©Olivier Papegnies

ネパール:大地震から2年4か月―今も続くメンタルヘルスケアのニーズ

2015年4月25日、南アジアの内陸国ネパールで、9,000人以上が命を落とし、約50万件の家屋が倒壊するという大規模な地震が発生しました。2017年8月には、南アジアの広範囲で豪雨による洪水や土砂崩れが発生し、世界の医療団が今もメンタルヘルスケアを続けているシンドゥパルチョーク郡もその被害を受けました。度重なる自然災害により、住民のさらなるこころの疲弊が懸念されており、十分なケアが求められています。

世界の医療団(MdM)は、地震発生後すぐに緊急医療支援を開始し、現在もこの大地震で崩壊した地域の再建のため、震源に近く甚大な被害を受けたシンドゥパルチョーク郡で介入を続けています。


私たちはまず、50人以上からなる緊急支援チームを現地へ派遣するとともに、15トンにおよぶ医療器具や薬を輸送しました。最初の数日から数週間にかけては、緊急医療支援に加え、腸チフスと細菌性赤痢の感染拡大防止にも全力を注ぎました。


急性期を超えたあとは、シンドゥバルチョーク郡の医療施設の復旧に着手しました。79か所ある施設のうち61か所は完全に倒壊し、14か所はひどい損傷を受けている状態でした。MdMは地域の人たちとともに、医療を提供できる状態へ戻す作業と、清潔な水を確保するための井戸の修復を行いました。


©Olivier Papegnies

しかし、2年4か月経過した現在もシンドゥパルチョーク郡に暮らす人々は、大地震による精神的な影響に苦しみ続けています。多くの人々が未だに家の再建すら始められていない状態にあり、こころの健康や飲酒にかかわる問題が増えています。


「大地震から2年以上が経過しましたが、住民たちはまだ家に戻れていません。悪化する経済や精神的な問題など、新しい試練が次から次へとやってくるのです。地域の人たちのアルコール摂取量も増えています」MdMと協働するコミュニティーリーダーのひとり、Chitra Kumari Shresthaさんは話します。MdMがシンドゥバルチョーク郡で活動を続けるひとつの理由は、こころのケアの必要性です。


大地震以前も、シンドゥパルチョーク郡では、メンタルヘルスケアがほとんど行われていませんでした。精神疾患を抱えた人へのケアは限定されており、カウンセリングや必要な治療を受けるための他施設への紹介システムなどもありませんでした。ある最近の調査において、ネパールで精神疾患を抱える人たちの約90パーセントは治療へのアクセスを持たないことが明らかになっています。


先日、私たちは、シンドゥパルチョーク郡のKalikaヘルスポストで、統合失調症の症状が見られるために、近隣住民から距離を置かれているという年配の女性に出会いました。私たちは彼女にきちんとした診察と治療を受けてもらうため、付き添いの息子の分とともに首都カトマンズの病院への行程を手配しました。


この大地震のニュースは、もう報道では取り上げられていません。しかし、ニーズがある限り、私たちは活動を続けます。

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