ラオスで実施しているスマイル作戦。12月上旬に実施した際、手術を受けたのはラオス北部のサイソンブン県に住む2歳9ヶ月になる女の子ナムサイちゃんです。
ナムサイちゃんは11ヶ月の時、かまどの上で煮えたぎる熱湯に右手をつっこみ、やけどをしてしまいました。両親は急いで隣の県のシェンクワン県病院まで連れて行き、治療をしてもらいました。ところが、医師は手をグーの形のままで包帯を巻いたので、そのまま指が癒着して固まってしまいました。あとになって両親は、指同志がくっつかないよう指が開いた状態で包帯を巻いたら、このように完全に硬直しないと知りました。父親は「シェンクワン県病院は大きい病院だから娘に一番いい治療してくれるだろうと信じていた。医療者のやることは絶対だと思っていたのに……」と悔やんでいました。
そんな時、近所のおばあさんから、一昨年の秋にシェンクワン県病院で世界の医療団が実施したスマイル作戦によって、同じように指がくっついていた男の子の手が、元通りになったという話を聞きました。
両親は自分たちの目で確かめたいと、シェンクワン県に住む男の子、ボビー君に会いにいきました。自由に手を動かせるボビー君を見て、自分の娘も手術を受けさせたいと強く願いました。また、ボビー君のお母さんから「ビエンチャンまで行かなくても、シェンクワン県病院ならできる」と聞き、ボビー君がシェンクワン県病院でこんなに良くなったのなら、自分たちの娘にも可能性があると考えました。県病院のフェイスブックに、12月に日本人医師たちと手術を行うという告知を見て、すぐ病院に予約を入れました。
手術には日本から上田百蔵形成外科医と石原恵看護師がボランティアで参加し、現地の医師や看護師と協力して行いました。ナムサイちゃんの手は、指が曲がったまま癒着し組織が硬くなって自由に動かすことができなくなっていたため、指を1本1本慎重に切り離し、皮膚は股間から移植。そして指が正しい位置に収まるようワイヤーを入れて包帯で固定しました。

「オペ室に入る娘はすごく泣いていました。手術は4時間かかりました。手術が終わっても娘は頭がもうろうとするのか、リカバリー部屋でひどく泣いていました。私たちは何度も『そばにいるから大丈夫だよ』と言いました。病室に移された娘を落ち着かせる為、大好きなお菓子や飲み物をいっぱい買いました。でも、食べたり飲んだりするのは苦しいようで何も口にしませんでした。この時期を乗り越えたら、娘の手は他の人たちみたいに完璧な手になると信じています。娘が手術を受けられて本当にうれしいです」と話すのはお父さんです。

ナムサイちゃんのお母さんは、
「村人からは『絶対よくならないとい』とか、『すごくひどい症状なので手術は無理だ』とか『お金と時間のムダ』と言われました。でも、『娘がよくなるチャンスがあれば、手術をする』とお父さんが言い返しました。娘が大きくなって何不自由なく自分のことができるようになってほしいと思いますし、娘のために最善を尽くしたと思います。
日本人の医師は手術の前に、私たちに手術の絵を書いてくれて、どのようなことをするか詳しく説明をしてくれました。また、どれぐらいで指に入れたピンを外せるか、いつになったら包帯がいらなくなるかなど説明してくれました。『指に追加する皮膚は足の付け根から取るので、小さな傷跡が残るけど、下着で隠れるからね』と言ってくれました。お医者さんは私たちにちゃんと伝えてようと一生懸命に話してくれました。すごいいい人だと思いました。以前にシェンクワン県病院で悪い経験をしましたが、このお医者さんにここで手術をしてもらったら娘は良くなると信じられるようになりました」と言います。

そして二人は、
「私は皆さんに手術を怖がるなと伝えたいです。手術をしたら自分の子どもが良くなる希望が持てます。どんな状態でも子どもは大切でかけがえのないものですから、良くなる可能性があるならその機会を与えてあげればいいと思います娘の手が良くなればいいですが、たとえ娘の手が今のままであっても、娘は私たちの誇りです」と話してくれました。
今回手術を行った上田百蔵医師は、
「2歳の女の子は手の平がくっついており、早めにやったほうがいい症例だったので、今回こちらで手術できてよかったです。一緒に手術をしたラオスの医師たちはとてもまじめで、手先も器用で縫合が早く、今後の可能性をとても感じました」と感想を伝えてくれました。
手術後のモニタリングやリハビリについては、シェンクワン県病院と連携して実施し、回復を見守っていきます。
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