東日本大震災:現地医療活動レポート8

私たちが週末訪れる避難所の1つで、若い女性との出会いがある。

東日本大震災:現地医療活動レポート8
自分の身体を自分で傷つけてしまう”自傷行為”を繰り返している。彼女に自分を傷つける理由を尋ねると「日常のイライラを解消するため」と答えた。震災でたくさんの方が亡くなられた現実がある一方で、怪我も一切せず助かった身体を自分で傷つけるという行為は、傍から見ると否定的なものに捉えられる。実際に、彼女は「傷跡を見せた友人たちからは、周りに心配をかけて楽しむなと何度も怒られた」と話している。

しかし、話をしていく中で、幼少期から家庭内のコミュニケーションが希薄であること、自分の存在を否定する言葉を親からぶつけられた経験をもつこと等、彼女が安心して生きていける環境が整っていないことが明らかになった。彼女は自分を傷つけるという行為の裏側にあるものは「死にたいという気持ちではない。生きたい」と話した。他人に傷を見せて楽しんでいるわけではなく、そこにあるものはただ人とつながりたいという想いであり、死にたいという気持ちよりも、自分を傷つけなければ生きていけない環境をどうにかして生きたいからである。

彼女に出会ってから1ヶ月が過ぎた。現在は、自分を傷つける対処法から新たな対処法へシフトチェンジを試み、人とのつながりも新たに作ろうと自ら奮闘している。初めは常に頑張っている笑顔だったが、最近は自然に見える。被災されている方の中には、このように震災以前からこころのケアを必要としていた方もたくさんいると考えられる。大地震、津波という未曽有の大災害を経て、生きることが更に難しくなってしまった今、安心して生きられる環境作りをこの大槌町で彼女と新たな仲間とともに模索していきたい。

社会福祉士 精神保健福祉士 白江香澄

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