逆子でへその緒が首に巻き付いて仮死状態で生まれて来た赤ちゃん。病院での出産と適切なケアが、二人の命を救いました
ラオスは東南アジアの中でも高い妊産婦死亡率(WHO発表:10万人の出生当たり112人)と、新生児死亡率(ユニセフ発表:1,000人の出生当たり20人)を記録しています。妊娠と出産時に、適切な医療を受けることができれば、これらの命を救うことができたはずでした。しかし、ラオスでは特に農村部で、母親と新生児の死亡率が高い状態が続いています。自宅で分娩する伝統があり、医療機関が遠くアクセスが難しいためです。
でも、ここに紹介するのは、そんな村に住みながらも適切な医療サービスを受け、命が救われた母子の物語です。
フアパン県クアン郡の山々に囲まれた村に住むマイユさんは、現在19歳です。17歳で結婚し、すぐに第一子を妊娠しました。村で行われる健康教育の集会に参加したとき、保健ボランティアから、妊婦健診を受けるよう勧められました。この保健ボランティアは、世界の医療団が村の人々が自分たちで健康を守れるよう養成しており、定期的に村の人々に正しい健康知識を伝える健康教育を行っています。マイユさんはアドバイスに従って、妊娠4ヶ月目に近くの診療所で妊婦健診を受けました。
そこで、診察した医師から、マイユさんがまだ若く、しかも赤ちゃんが逆子でハイリスク妊娠であることを知らされます。母体と胎児の合併症を防ぐためには、定期的に妊婦健診を受け、病院で出産するように言われました。マイユさんは医師の言葉に従い、出産まで計5回、妊婦健診を受けました。
ある日、マイユさんはお腹が痛くなり、家族はクアン郡病院へ緊急搬送しました。この病院には、安全な分娩について、世界の医療団の訓練を受けた医師と助産師が配置されています。病院到着時、マイユさんのお腹の痛みは激しく、時間とともにますます痛くなっていきました。そして到着から2時間後、お腹の痛みがピークに達した時、赤ちゃんが産道へ降り始めました。赤ちゃんは逆子でしたが、医師たちは自然分娩で出産させることができました。ところが、赤ちゃんの首にはへその緒が巻きついており、赤ちゃんは呼吸することも泣き声をあげることもしませんでした。マイユさんは赤ちゃんが死んだと思い、ショック状態に陥りました。医師たちはすぐ赤ちゃんの蘇生処置を行い、しばらくすると赤ちゃんは泣き声をあげたのです。マイユさんはようやく安堵しました。ただ、マイユさん自身も出血のリスクがあったため、医師たちは注意深く経過を見守りました。
3日後、母子の両方に合併症がないことを確認し、二人は帰宅が許可されたのです。
現在19歳のマイユさんと生後1歳半の赤ちゃんは、とても元気です。マイユさんはこの時の経験についてこう語りました。
「病院で出産していなかったら、私と赤ちゃんは生き延びられなかったでしょう。私の赤ちゃんの命が今あるのは、村の保健担当の方と世界の医療団の尽力のおかげです。とても感謝しています」

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