5月13日に世界の医療団が発表した憂慮すべき報告書の中で、ガザにおける急性栄養不良は、わずか1年半の間に、数十年にわたる長期的な人道危機に直面している国々に匹敵するレベルにまで達していると指摘。その根本的な原因は、イスラエル当局による封鎖です。世界の医療団は、各国に対し、ガザの人々が栄養不良に関連して亡くなることを防ぐため直ちに行動を起こすよう要請します。
過去10ヶ月間、世界の医療団は、包囲されたガザ地区で運営されている最大6つの保健センターで、子どもたちや妊娠中・授乳中の女性の急性栄養不良を診てきました。2024年には、1歳未満の乳幼児のほぼ4人に1人、妊娠中および授乳中の女性の19%が急性栄養不良*に苦しんでいることが確認されました。
– 2024年11月、子どもの急性栄養不良率は17%に達し、2024年に記録された中で最も高い水準となりました。2024年10月以降にガザに入ることを許可された人道援助トラックの数が激減したことと反比例して増加しています。WHOによると、2022年にはガザ地区の5歳未満の子どものうち、急性栄養不良に陥っていたのはわずか0.8%でした。
– 2025年1月19日に発効した一時停戦により、イスラエルによる封鎖の一部が解除され、食料品の持ち込みが増加しました。その結果、子どもたちの急性栄養不良率は2024年11月の17%から2.7%へと大幅に低下しました。
– この進展は、2025年3月2日の支援物資の全面封鎖、3月18日のイスラエル軍による停戦合意違反の攻撃再開によって、あっという間に覆されました。2025年4月、世界の医療団のセンターで診察を受けた妊娠中または授乳中の女性の5人に1人、子どものほぼ4人に1人が、急性栄養不良に苦しんでいるか、急性栄養不良のリスクが高い状態でした。
イスラエルによるガザに対する軍事攻撃と包囲が15ヶ月以上続いた後、ガザのデイルアルバラ県とハンユニス県で報告された子どもや妊娠中・授乳中の女性の急性栄養不良は、イエメンと、同じレベル(世界の医療団が支援する診療所では2024年に約11.5%)に達しました。イエメンは10年以上戦争に苦しみ、ユニセフによると世界で最も食料が不足している国のひとつに挙げられています。
「私たちが目撃しているのは人道危機ではなく、飢餓が戦争の武器として利用されているという人道性と道徳が破綻した危機です。イスラエル当局にこの残虐な封鎖を解除するよう圧力をかける手段を持つ第三国の不作為は容認できず、国際法の下では何もしないことは共謀とみなされる可能性があります。今こそ宣言するのではなく、行動を起こす時です。人道支援の違法な剥奪によって、200万人以上の命が危険にさらされています」と、世界の医療団フランスの理事長のジャン・フランソワ・コルティ博士は非難します。
事実は明白です。何千人もの命を危険にさらしているこの食料危機は、人為的なものであり、イスラエル当局がガザへの人道支援を部分的に許可したり、全面的に遮断したりする決定に端を発しています。
* 世界保健機関(WHO)によれば、栄養不良率が10%というのは高く、15%というのは危機的です。
報告書

英語版はこちら
報告書から
デイルアルバラの診療所で働く世界の医療団の看護師の証言 急性栄養不良に苦しむ4歳の女の子が母親に連れられて来ました。その子は髪の毛がごっそりと束になって抜け落ち、頭皮がむき出しになっていました。衰弱した姿は、まるで化学療法を受けた老女のようでした。 その姿は、私だけでなく、娘の健康状態が悪化していくのをただ見守るしかなかった母親にとっても、衝撃的で辛いものであったと思います。戦争の影響で、1年以上も急性の栄養不良に苦しみ、家族は子どもに与えるのに十分な食料を見つけるのに苦労していました。 その子どもの顔は青白く、疲労と衰弱の跡が深く刻まれており、長引く飢餓と栄養不足の苦しみを物語っていました。成長と発達に必要な栄養素が不足し、筋肉は衰え、免疫力も低下していました。これは、食料が不足し医療が受けられず、子どもたちが極度の急性栄養不良に苦しんでいるガザ地区の多くの事例の一つに過ぎません。 ※子どもを診察した結果、急性の栄養不良が脱毛の決定要因であることがわかりました |
---|
