©Eric Rechsteiner

ニココロプロジェクト

ーこころのケア活動ー

大槌町 被害状況


大槌町 被害状況 町民1,284名の犠牲(2013.2.28現在)
全壊・半壊家屋3,717棟

町の基幹医療施設およびクリニックの多くが、地震および津波被害により、ほぼ機能停止状態となりました。

大槌町町勢要覧2014より







いのちに寄りそう最善の方法を探して


世界の医療団(Médecins du Monde:MdM)日本は、医療を中心とする専門家ボランティアNGOとしてどうすれば被災地域に貢献できるのかと、3月11日発生直後から被災地域の情報収集を始めました。時間の経過とともにこころのつらさの増大が予測される中、岩手県精神保健福祉センター統括のもと、全国からの派遣チームで構成された「岩手県こころのケアチーム」の一員として、2011年4月3日、大槌町で活動を開始しました。県医療局との調整により、初期から行政主導の緊急医療支援の枠組みに参画できた結果、地域の方針に沿い、かつNGOの強みをも活かすことのできる活動に繋がりました。

当初、被災状況があまりにも大きかったため、活動内容を精神科医療に限定せず、出会う人おひとりおひとりのこころが楽になっていくためにできることは何かと考え実行していきました。しだいに最低限の衣食住が確保されていくと、不眠、不安に苦しむ人、そして、生きる理由を問う人と多く出会うようになっていきました。

つらい思いが少しでも軽減されるために必要な支援は何か、孤立し悩み苦しい思いをしている人と出会うためにはどうしたらいいか、何をしなければならないのかを考えながら、出会えた方の話にじっくり耳を傾け続けました。こうして形にしていった計画が、3つの活動テーマ:相談や診療で“今ここにある”ニーズに応える「個別支援」、個人・家族が孤立することがない「地域の仕組みづくり」、被災者でもある「地元支援職との協働とその支援」でした。ひとりひとりが“今ある、または将来起こりうる困難を乗り越えられる”と思えること、大槌にその術があることを達成すべき活動の成果としました。わたしたちは「医療」班と「運動」班(※1)の両輪でこの課題に取り組みました。

そして3年半。大槌町や隣接する釜石市で活動した医療、福祉、鍼灸、ヨガ・運動指導の専門家の数は延べ211名にのぼりました(※2)。2014年9月、わたしたちの役割とこの間に積み重ねた経験と教訓が、今後の大槌町のこころのケア活動に引き継がれるのを確認して、MdMは現場での活動を終えました。

私たちの活動計画は、多くのご賛同者の東北の力になりたいという想いや、ご寄付、物資をいただいたことで実行することができました。また、自らも被災者である現地の支援者からのご協力があってこそ、その計画を実現していくことができました。この協働の成果をここに報告致します。

※1 公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所が主体
※2 1名1回につき複数日数の派遣を1名とカウント


©Eric Rechsteiner



そしてこれから…


MdMの活動を通じ、大槌の人や多様な風土が好きになったボランティアがたくさんいます。運動サロンでは民謡でリズムをとって盛り上がる方々、「こころもからだも軽くなった」と笑顔で帰っていく方に出会いました。3年前は睡眠薬を持ち込んで相談に来られた医療講座参加者でも、あちこちで普及される睡眠・健康の豆知識を身につけていかれ、3年目には精神科医の出番がないほど参加者同士で語りあう場面も頻繁になり…サロンや講座の枠を越えて知識が広く地域に定着していくようでした。

そんな大槌でずっと聞き続けている声があります。
『大槌の復興はこれから。どうかこれからも大槌をはじめとする被災地を見守り続けてほしい、大槌の声を全国に発信し続けてほしい』

利用できる公共交通機関も医療機関も充実しているとはいえなかった状態で震災にあい、医療・町政・産業、すべてが大きな被害を受けた大槌町。それでも大槌の魅力…暖かい人々・海や山とのつながり・郷土文化…はそこにあり、復興に向けた取組みは今後も長く続きます。

MdMは、地元支援者との試行錯誤の3年半が、今後の大槌町でのこころのケアに貢献できることを願い、現場を離れてもできることで大槌町を応援し続けたいと思います。

2015年3月


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