© Olivier Papegnies

中東危機

ーシリア、イラク、レバノン、トルコの今ー

中東危機MdMの活動2016年

世界の医療団 in シリア


背景


内戦により医療システムは崩壊、状況は今もなお悪化の一途を辿っています。医療者の不足、医療施設への意図的な攻撃が、危機的な状況に更に追い打ちをかけます。国内で機能する医療施設は2016年前半時点で48%*¹(『Syria Humanitarian Needs Overview 2017』より)とされ、市民への医療支援が喫緊に必要とされています。

©Reuters


シリアでの活動


紛争に巻き込まれた市民がプライマリならびにセカンダリヘルスケアにアクセスできるよう医療施設を設置するほか、現地の医療施設で支援活動を行っています。これまでダルアー、イドリブ、アレッポにて活動を実施、2017年には世界の医療団(Médecins du Monde:MdM)スペインがハサカにて新たな支援活動を開始しました。イドリブ難民キャンプで運営する6つのクリニックでは、施プライマリヘルスケア、セクシュアル・リプロダクティブヘルスケア、メンタルヘルスに関する診療、そのほか産前・産後ケア、予防接種、急性栄養失調の治療などを行っています。また42ヵ所の医療施設に医療機器や医薬品の提供、わずかに残る医療従事者の賃金、倒壊した医療施設の修繕費などの財政的支援、さらに国内の医療スタッフ向けにトレーニングを行っています。

地域での支援活動


MdMは、シリア、イラク、ヨルダン、トルコ、レバノンに住まう避難民が必要とする医療支援を行うことをミッションに掲げ、支援活動に奔走しています。

主な3項目:
  1. シリア危機支援
  2. イラク危機支援
  3. 近隣諸国の難民支援

  • 現況、人道的見地に沿った支援
  • セクシュアル・リプロダクティブヘルスケア、メンタルヘルスケア、心理社会的ケアを含めたプライマリヘルスケアの提供
  • 長期化する危機のなか、救命救急と回復を軸にした支援
  • 分極化する状況下での多角的パートナーシップの構築と活用
  • 現地支援団体の支援力強化と国内医療制度構築に向けた助言
  • 国内の医療情報システム開発、助言
  • 学術機関との連携により、根拠に基づく情報提供・国際人道法の侵害、医療サービスへのアクセスを妨げる障壁を訴えるアドボカシー活動

MdMがサポートする医療施設での一般診療件数MdMが運営するクリニックでの一般診療件数MdMが運営するクリニックでのセクシュアル・リプロダクティブヘルスケア関連の診療件数


世界の医療団 in イラク



世界の医療団 in イラク 診療件数

背景


史上最悪の人道危機のひとつと言われるイラク危機。国内外の紛争によって、多くの国民が避難民となりました。医療を必要とする人は、2016年だけで180万人から1,030万人に増加*¹、医療ニーズは拡大し続けています。多くの病院やヘルスセンターが打撃を受け、情勢不安から住民の医療アクセスが制限される事態が起きています。
2017年 イラク人道危機対応計画

イラクでの活動


紛争被災者、国内避難民、帰還者や避難民受け入れ地域を対象に、医療サービスの質とアクセス向上を図る活動を行っています。また、現地機関との連携、キャパシティ・ビルディングを実施し、現地の医療体制強化と持続可能な医療サービスを提供するための支援活動を行っています。現在、MdMはドホークとキルクークの難民キャンプにて活動を実施するほか、モスルからの避難民を支援するため、2016年ニナワ行政区へと活動地を拡げています。治療、予防診療を含む包括的な医療サービス、健康と衛生面に関する啓発活動、医薬品の無料配布、特に女性を対象とするセクシュアル・リプロダクティブヘルスに関する医療支援、心理的・精神的ケアなど、その活動は多岐にわたっています。

©Olivier Papegnies


世界の医療団 in レバノン


背景


増え続ける難民が、レバノンの医療システムに大きな影響を与えています。もともと公的医療サービスでは十分なプライマリヘルスケアを受けることができず、高額な民間の医療機関に頼らざるをえない制度でしたが、一部補助による低額診療が可能となっても、医療へのアクセスは程遠いものとなっています。2016年の統計では、難民の16%が経済的理由により必要とする医療を受けることができなかったと報告されています(『レバノンにおけるシリア難民の脆弱性評価』より)。また、レバノンに滞留するシリア難民の70%が、生活に適した固定住居を持たないまま避難生活を送っています。固定住居を持たない難民は、検問で捕まるリスクが高く、それは移動の自由が制限されること、しいては医療へのアクセスが奪われることになります。

世界の医療団 in レバノン 診療件数

レバノンでの活動


レバノン国内の医療制度の体制強化を目指すほか、シリア難民や国内の社会的弱者が医療によりアクセスできるよう支援活動を行っています。MdMは現地の支援団体や組織と協働、現地の大学と共同研究にも取り組んでいます。ベッカー高原地域では、現地の医療施設がレバノン保健省の医療ネットワークに加入、医療機関の認定が得られるよう、現在4カ所のプライマリヘルスケア・センターを支援しています。また、医療技術力向上を図るための医療者向けトレーニングも行っています。医療施設では一般診療、セクシュアル・リプロダクティブヘルスサービス(産前・産後ケア、家族計画)、非感染性疾病の治療、性暴力や性差別を防止する取組みを行うほかその被害者へのケアを提供しています。メンタルヘルスケアと心理社会的ケアでは、アウトリーチ活動をはじめソーシャルワーカーによるケアマネジメント、セッションや教育トレーニングの提供、必要とされる場合には精神医療専門家への仲介、また食糧配給券の支給、シェルター、法的扶助サービス、教育、再定住など生活全般にかかる支援サービスも行っています。もちろん精神面での診療が必要とされるケースには、精神科医療専門家による個別カウンセリングやグループ療法なども提供しています。

©Olivier Papegnies


世界の医療団 in トルコ


背景


シリア危機が勃発してから大量の難民がトルコ国内外に押し寄せ、トルコの公的医療制度は逼迫しています。シリア難民としてID登録ができれば、無料で公的および民間の医療を受診することができますが、診療に係る費用(薬代や交通費など)はその保障に含まれず、難民の財政状況を圧迫しています。ID登録がない難民は、救急のみ無料で診療を受けることができ、その他のプライマリヘルスケアに係る診療費用は自己負担しなければなりません。MdMが医療支援を行う施設で受診したうちシリア難民の10~20%は、登録がありませんでした。

世界の医療団 in トルコ 診療件数

トルコでの活動


トルコでは2016年7月1日から活動を開始、難民・移民が必要な医療を受けることができるように、トルコやシリアの医療団体と協働し医療支援活動を提供しています。イスタンブール、レイハンル(ハタイ県)、ディヤルバクル、バトマン、イズミルにある11の医療施設で医療支援を行っています。プライマリヘルスケア(一般診療、非感染性疾病の治療)、セクシュアル・リプロダクティブヘルスケア、メンタルヘルスケア、心理社会的支援(個別相談、グループセッション、行政相談)を提供しています。また必要に応じて、セカンダリケアへのアクセスを確保するとともに、財政支援、医療機器・医薬品の提供、医療者への技術指導なども行います。シリアとトルコの国境沿いにある医療センターにおいては、トラウマを抱える患者に対して術後診療とリハビリテーションを実施、レイハンルの病院では手術などの支援も実施されています。


©Olivier Papegnies

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