東日本大震災から7年

東日本大震災から7年が経過しました。被災者を取り巻く環境は大きく変わり、問題は多様化、かつ、複雑化しています。
世界の医療団は、変化する被災地ニーズに合わせて、今も福島県相双地区、川内村で支援を続けています。

地震、津波、そして原発事故という、未曾有の被害を被った福島県。原発事故による影響は、ほかの被災地とは異なる課題を残し、それは時間が経過するとともにより複雑になっています。今も避難生活を続ける方がいる一方、避難指示解除になった故郷に戻るかどうか、決断を迫られている方もいます。帰還ができるようになっても、病院や商店など、日常生活を支えるまちの機能がほとんど戻っていない場合もあり、戻ったとしても新たなストレスを抱える可能性もあります。

福島県 避難の状況 福島県 避難の状況
県外への避難者数(1月16日現在) 34,202人

(復興庁)
県内への避難者数(1月31日現在) 16,426人
避難先不明者 13人
(福島県災害対策本部)
合計 50,641人

全体の避難者数(1月16日現在) 75,206人
(復興庁)

世界の医療団は、震災後、相双地区の崩壊した精神科医療を立て直すことを目的に設立されたNPO法人「相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会」とともに、相双地区でこころのケアに取り組んできました。月に一度、現地に派遣する精神科医は、同じ医師が行くことによって、患者さんが不安なく診察を受けられるようにしています。看護師や臨床心理士によるアウトリーチ(訪問)活動、サロン活動では、住民の方々と支援者、また、住民同士のつながりを生んできました。
また、2016年6月にすべての避難指示が解除された川内村では、帰還された高齢者の方々が安心して暮らせるよう、役場に精神科医を派遣し、認知症の予防講座を開催したり、高齢者がいきいきと暮らせるまち作りの助言を行ったりしています。

©MdM Japan


世界の医療団は、福島県での活動開始から5年の節目を迎えた2017年、これまでに積み重ねてきた活動から見えてきた課題をもとに、今後の復興に向けた提言をまとめました。

提言1 ふくしま心のケアセンター及び連携してその機能を担う機関の常設化が望まれる
提言2 PTSD(心的外傷後ストレス障がい)や自死を防ぐ地域の仕組みの構築が急がれる
提言3 住民の回復力(レジリエンス)を信じた地域再生のため、前向きな取組みの発信を図ることが望まれる

提言書の詳しい内容はこちらから

震災と原発事故から7年という時が経過し、被災者を取り巻く環境は大きく変わりました。問題はより複雑化、かつ、多様化しています。

「原発事故がもたらした最大の不幸は、いろんなものがバラバラにされたことです。家族も、職場も、地域も。「バラバラ・ハラスメント」(バラ・ハラ)と言ってもいいくらい。ハラスメントへの対処で大事なのは、被害者がまず嫌がらせをされたことに気づくこと。苦しんでいる人には、「あなたのせいではない。震災と原発事故のせいだよね」と伝えたい。時が経つとだんだん、自分がなぜこんな状況になっているのか判らなくなってきますから。」
(相馬広域こころのケアセンターなごみ保健師の伏見香代氏の言葉 中澤正夫著『「福島に生きる」ということ―バラバラ・ハラスメントを超えて』より)

世界の医療団は、これからも、住民や現地支援者のニーズに合わせた支援を行うと同時に、被災地の現状を発信していくことで、今も震災は現在進行形で続いていること、そして、支援を必要としていることを社会に訴え続けていきます。

これまでのあたたかいご支援に感謝申し上げるとともに、引き続き、皆さまのお力をお貸しいただけますようお願い申し上げます。

©Kazuo Koishi

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