ラオス小児医療プロジェクト:現地レポート15

~ラオスの子どもたちを取り巻く栄養事情~

ラオス小児医療プロジェクト:現地レポート15
世界の医療団のラオス・プロジェクトでは2ヶ月ごとにヘルス・プロモーターに対するミーティングを行っています。 ヘルス・プロモーターとはヘルス(健康)をプロモート(促進)する役割を担うボランティアのことで簡単にいうと、村民の健康を推進するボランティアのことです。(レポート912など参照)
マス・メディアが発達した日本とは違い、ラオスの村においては健康に関する情報を得る機会がありません。ヘルス・プロモーターはそんな村民に対して健康に関する情報を提供するという重要な役割を担っています。ヘルス・プロモーター・ミーティングではヘルス・プロモーターに対し小児の健康に関する情報の提供・共有を行います。

1月のテーマは「小児の栄養」。このテーマをとりあげたのは、ラオスの子どもたちをとりまく栄養事情があまりよくないという背景があります。ある調査によると、ラオスでは、完全母乳育児が推奨されている6ヶ月未満の乳児の60%は完全母乳育児を受けていません。また、6~23ヶ月の乳幼児の約60%の子どもが栄養状態の不良により、貧血とされています。また、6~11ヶ月の半数近くの子どもたちが、食事内容や貧困などが理由で満足に食物を摂取できていないという現状があります。

ラオス小児医療プロジェクト:現地レポート15
この背景にはさまざまな理由がありますが、その理由のひとつに村民の栄養に関する知識不足があげられます。例えば、ラオスでは母親は生後2~3日の赤ちゃんにもち米(ラオスの主食)を与えることが当然とされており、これが原因で栄養不良となり、さらには免疫力が低下し、死に至ることもめずらしくありません。また、ラオス独自の文化に関連し、乳児に母乳を与える産後女性に対する食事タブー(禁忌)などがあり、これにより偏った食生活になりやすく栄養不良の原因のひとつとなっています。そのため、栄養に関する正しい知識を村民にもってもらうということは、健康な赤ちゃんが増え、乳児死亡率の低下につながるのです。

今回のヘルス・プロモーター・ミーティングでは完全母乳育児と各成長段階における適切な離乳食の与え方について、また3大栄養について学びました。3大栄養については栄養カードを用いたアクティビティを取り入れました。黄色を主食、赤をたんぱく質、緑をビタミンと色分けした布に食品が描かれたカードをそれぞれの栄養素ごとに置いていきます。カードには普段ラオス人に馴染みのある食べ物、例えばもち米や昆虫(!)など(ラオス人はアリやコオロギなどの虫を日常的に食します)を取り入れました。これにより、普段何気なく食べている食品は全てそれぞれの栄養素に分類されること、そして栄養不良の予防には全ての栄養素からバランスよく食べるなどといった栄養に関する知識を、このアクティビティを通して、興味深く理解を深めることができました。
午後のセッションではすでにヘルス・プロモーターに配布したフリップ・チャートを用いて、小児の栄養に関する健康教育の練習を行いました。このミーティングを通して、今後一人でも多くの村民が栄養に関する正しい知識を得る機会が増え、それを実施することで、一人でも多くの子どもたちの栄養状態が改善できることを期待しています。

ラオス駐在看護師 木田晶子

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