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ワクチン接種を希望するすべての人のために

各地でワクチン接種が本格化し始めた5月下旬、池袋の公園での炊き出し医療生活相談会の会場と週一回の夜回り活動にて、安定した住まいを持たない方や生活に困っている方などを対象に、私たち世界の医療団は新型コロナウイルスワクチン(以後ワクチン)に関するアンケートを実施した。


なぜアンケートを実施したのか


普遍的万能な解決策ではないものの、長引くパンデミックの収束に向けての大きな道筋にもなっているのがワクチンだ。4月30日、政府は、安定した住まいを持たない方もワクチン接種を受けることができるよう「ホームレス等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の周知等について」通達を出した。ワクチン接種の具体的枠組みやスケジュールは、自治体の裁量に委ねられている。各自治体がスケジュールを組み、ワクチン接種券(以後、接種券)を発送、住民票のある住所に接種券が届く、そして予約などの手続きを自身でする。ところが、住民票がない、路上やインターネットカフェなどの不安定な住まいに暮らす、接種券はおろか情報さえも届きにくいという現状がある。昨年の特別定額給付金の支給を巡っても、支援の現場では住民票がないから受給できないという声を聞くことがあった。ワクチン接種に関しても、実際は接種券が届かない、そして保険証や運転免許証などの身分を証明できる書類がない、がためにあきらめてしまっている人もいるのが事実だ。そこで、接種券や情報を入手できない恐れがある人たちの、ワクチンに関するニーズを明確にしようと、私たち世界の医療団は今回の大規模アンケートを実施することにした。


有事でなければ聞かれることのなかった声を可視化する


ワクチンアンケート
©MdM Japan
私たちの活動拠点である豊島区では、既に住民票がない方、住まいが安定していない方への接種をどう推進するかを図っていた。そこで、活動パートナーTENOHASIの支援現場にてアンケートを実施、身分証の有無や普段の居所などの状況を確認しながら当事者のニーズを明確にし声を伝えることにした。
炊き出しに並ばれる方や夜回りでお会いする方に、「接種を希望するか?」「ワクチン接種が始まっているのを知っているか?」「接種券は住民票の住所に届くが受け取れるか?」「接種を希望する場合どこで接種したいか?」「身分証はあるか?」などを聞いていった。


無料なら受けたい
行政からの接種の有無での差別、強制されるのではと不安
住所や身分証明書がないと結局受けられないんじゃないか
経済的な問題で受けられない
副作用が心配。すぐに出なくても1年後に出てくるかも。色々な副作用で他の病気になるかもしれない
副作用の情報がない
副作用が出ても病院に行けない
高齢者だから、もう要らない
そこら辺で野たれ死にした方がいい。死ぬのを待っている
もう充分生きたから
仕事、生活保護制度、オリンピックが終わった後どうなるのか


これらはすべてアンケートで上がった声である。



アンケート結果概要



アンケートの結果まとめ→

ワクチンアンケート

アンケート実施日

5月22日(土)
東池袋中央公園池袋炊き出しの配食に並ばれた方&医療相談にいらした方
(約380人)
5月26日(水)
池袋駅前公園 夜回りのおにぎり配布に並ばれた方
(約 60 人の内、炊き出しで未回答の約30人)


回答者:314人(回答者の約75%が50代〜70代)

ワクチン接種を希望する:182人(58%)、うち接種クーポンを受け取れない、もしくは分からないと答えた人は 54 人
接種を希望しない・わからない・検討中:123人(39%)


予約クーポンを受け取れる 125 人中、予約ができない人は 49 人


電子機器やインターネットがない、やり方がわからないなどが主な理由、豊島区コミュニティソーシャルワーカー(CSW)による予約サポートの周知徹底、炊き出し会場での区の相談ブース設置などの対応を検討している。


接種券は、住民票の住所に送られてくるため、接種券を受け取ることができない人が確実に存在する。これまで社会福祉サービスから排除されていた、あるいはされがちだった人たち、聞かれることのなかった声をそのままに行政に届けることができた。
豊島区との協議はすでに始まっており、「ワクチン接種を希望するすべての人へどう届けるか」に向けた取り組みへの対話も進んでいる。今回の結果から、若い人たちの声や住まいのない人たちの実態に関するより詳細な調査が必要だと認識し、再度のアンケートの実施を予定している。



前からあるもの、その後にあるべきもの


支援現場では、日々感染症と向き合いながらの活動が続いている。各地の炊き出しや相談会では、20代〜30代の若い方、女性や家族連れ、外国籍の方、様々な方が食事や医療、居場所、安全を求めてやってくる。生活困窮者は明らかに増えている。それでも、疎外されやすい人たちの本質は大きく変わっていない。一度、住まいを失ってしまうと、社会福祉へつながることが困難になってしまう構造上の問題だ。安心安全な住まいは権利、健康も権利、それら人権は、どこにいても、誰であっても、保障されるべきものである。



住まいのあるなしに関わらず、すべての人へ情報と社会福祉サービスを届けるため、当事者の声を聞く、それらをもとに政と対話し協働する、そして今、彼らの声を反映させる取り組みが始まっています。活動の根底をなすのは、支援の現場で一人ひとりのSOSや声に耳を傾けること、その声を社会に届けながら、誰もが「健康は権利」を享受できる社会を目指し活動を続けてまいります。

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©Kazuo Koishi

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