©MdM Japan

ラオス小児医療強化プロジェクト:現地活動(医療スタッフ能力向上)レポート Vol.1

初回レポートは、まず活動1「保健医療スタッフへの研修」について、初年度の主な活動はIMCI研修の実施です。

活動1.保健医療スタッフのキャパシティ・ビルディング


村民にとって最も身近な医療施設であるヘルスセンターのスタッフ、ヘルスセンターから搬送されてくる患者を受け入れることになる郡病院のスタッフに対する小児医療研修は、ラオス小児医療プロジェクトの重要な活動のひとつです(活動1)。

フアパン県は全国で最もスタッフの配置数が少なく(医療人材不足)、また、世界の医療団が2016年から2017年にかけて活動対象郡で実施した聞き取り調査からヘルスセンターには小児医療に特化した研修を受講した医療人材がほとんどいないことがわかりました。そのため、現在働いているスタッフ一人ひとりが小児医療についての知識を高め、質の高いサービスを提供できるようになることが、人材不足を少しでも補うためのアプローチと考えています。

プロジェクトの核となる二つ目の活動は、村落健康委員会メンバーへの子どもの健康に関する研修の実施です。村落健康委員会メンバーは村人たちから健康に関する相談を受けたり、健康集会を開くことで知識を普及する役割を担います(活動2)。

©MdM Japan

県病院で、入院する子どもを診察する受講者


初回レポートは、まず活動1「保健医療スタッフへの研修」について、初年度の主な活動はIMCI研修の実施です。

IMCI(Integrated Management of Childhood Illness:小児疾病統合管理)とは、WHOとunicefが中心となって開発した診断補助ツールです。5歳未満児の死亡率が高い国、つまり経済的に不安定で、人材・技術・医療資材など医療資源にも乏しい環境を想定して、5歳未満児の死亡原因の上位を占める肺炎や下痢、回復の障害となる栄養不良などに焦点をあてたものです。

ラオスの母子保健国家戦略においては、11の重点分野があり、世界の医療団(MdM)の活動1はこのうちの「子どもの治療」分野の支援にあたり、同分野への具体的方法としてIMCIが採用されています。経済基盤が不安定で、医療設備が整っていない状況、また、冒頭に説明した医療施設の人材不足や診断能力の不十分さなどラオスの現状に対応することが目的で導入されました。IMCIがヘルスセンターレベルに定着すれば、ヘルスセンターで治療できない患者にも、応急処置を施し、手遅れになる前に高次の医療施設に搬送することが可能になると期待されています。

MdMの活動1の目標は、事業終了後も県や郡レベルでヘルスセンターへの研修・監修を継続し、ヘルスセンターのサービスの質を維持管理、また向上させていくことにあるため、ヘルスセンタースタッフへの研修に入る前に、まず、県・郡病院のスタッフをトレーナーとして養成することから始めました。
初回の研修は5月、首都ビエンチャンからIMCI研修のトレーナー2名をフアパン県まで招聘しました。普段は公立病院に勤める小児科医です。また、既にトレーナーの資格をもつ2名の県病院スタッフも、実地経験を積むため研修トレーナーとして参加しました。

ラオス小児医療強化プロジェクト
グループワーク
一方、受講者は県病院と郡病院のスタッフで、5日間かけて映像学習、グループワーク、県病院の母子保健センターでの実習、小児科外来や入院患者を対象にした実地研修などに取り組みました。
受講者の多くが、普段から子どもも大人も関係なく診察しているのが現状ですが、子どもと大人の診察は大きく異なります。教育課程で小児医療知識・技術を確立できないままに実践を積んでいるスタッフも少なくないため、改めて小児医療に特化した学びを得、不安を自信に変えていく第一歩になったようです。


ラオス小児医療強化プロジェクト:現地活動レポート Vol.1
スーパーバイザーとしての活動について学習する受講者
続いて9月4日から5日間、再びビエンチャンからトレーナーを招聘し、5月と同じ受講者に対してIMCIトレーナー養成研修を行いました。
参加者からは、5月の研修時に比べて知識が定着してきたことを自覚できたとするコメントがありました。
「5月の研修は新しいことがいっぱいで整理するのが大変だったけど、今回はだいぶ落ち着いて学習できた。」
確かに、5月の研修後のテスト結果では、70点以上を取得した参加者が全体の3分の1であったのに対し、9月の研修後テスト結果では、参加者全員が70点以上を取得しました。

こうして参加者12名全員が好結果を残しトレーナー養成研修を終えたことで、彼らがトレーナーとして活動できる基盤ができたことになります。つまり、郡のトレーナーによるヘルスセンタースタッフへの研修を始める体制が整ったのです。医療設備、医療技術、医療知識すべてに不安を抱えたヘルスセンタースタッフから「研修を受けたい」という声を2016年の調査時から聞き続けてきました。いよいよ、彼らの要望に応えられるときが来ました。

次回レポートに続きます。

©MdM Japan

修了証を手に記念撮影

参考文献
Ministry of Health, Lao PDR, National Strategy and Action Plan for integrated service on Reproductive, Maternal,
Newborn and Child Health 2016-2025.
Lao PDR -Ministry of Health, National Health Statistics Report – 2014.
World Health Organization, Integrated Management of Childhood Illness (IMCI) global survey report, 2017.


*本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。