©Kazuo Koishi

衆院選: 被災地、被災者の側に立った真の復興を!

衆院選のさなか、各政党の公約が掲げられました。いくつかのメディア、特に地方紙の報道にもありましたが、かつての目玉公約であった被災地復興政策についてどの政党もその優先度は低く、もとより風化を感じせざるをえなかった被災地では一層の置き去り感が拭えません。

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私たち世界の医療団は現地パートナーとともに6年半経った今も、福島でこころのケア活動を続けています。だからこそ、お伝えしなくてはならない、と考えました。

かけがえのない人、家、仕事を失い、あの日からそれまでの人生、暮らし、環境、家族、すべてが変わってしまいました。

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から6年半、避難者数はいまだ8万人を超え、そのうち約65%が福島の人々です。
ショック状態のままの過酷な避難生活、その後も仮設から自宅、仮設から復興住宅等への移転が幾度と繰り返され、落ち着くことのない日々が続きました。
日本がかつて経験したことのない未曾有の複合型災害、何をするにも安全性もデータも確証されていません。情報は錯綜し、えもしれぬ不安と闘うなかで、被災者の方々は家族分離、賠償格差、仕事を失ったことによる経済的困窮、風評被害、被爆や放射能への不安と恐怖と闘ってきました。なにより仕事など生きがいを失った喪失感は、被災者のこころに大きな影を落とし、それは今もなお続いています。事実、福島県では震災関連死や自殺の増加が顕著であるほか、また遅発性PTSD*の発症の増加も確認されています。

また、福祉・医療人材が限りなく不足している事態のなか、自らも被災者でありうる自治体職員、福祉・医療・支援活動に携わる一人一人が奔走し続ける一方で、精神的肉体的疲労も限界に達しつつある光景も幾度となく見てきました。

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毎年あの日が近づくと住民だけでなく、福祉・医療・支援活動に携わる人々の中で緊張と様々な思いが交錯する。「マスコミが押し寄せ「孤立」「孤独死」「自殺」「行き届かない支援」と心ない言葉を置いて嵐のように帰っていく。そのような取り上げられ方しかしない、精一杯の支援者にとってそれは心情的にとてもつらい。」
あるMdMボランティアの言葉です。
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福島県では、今年に入り相次いで避難指示の解除がなされました。これまで暮らしていた仮設は閉鎖され、築いたコミュニティーもまたバラバラとなってしまいました。インフラや生活とともに地域コミュニティ再建をこれから図る地域もあります。復興住宅で、再建した自宅で、どんな場所であろうと、被災者の方々の新しい暮らしが始まっています。支援する側は、みまもりからもれてしまう人がいないよう、手探りながらも新たなこころのケアを実践しています。

今、これまで以上に、コミュニティと絆作りが求められています。

-真の復興支援とは-
震災前になかった防波堤や建物を作ることでは終わらない。住民がどんな状況でも安心して暮らせるまち作りを後押しすることにある。そのまちに住む住民が、自らの手で住まい作り、仕事作り、コミュニティ機能の強化などに取り組む回復過程を支えることは、被災地と被災者の復興を支援することに他ならない。

その実現に向けて、行政の果たす役割はとてつもなく大きいのです。国政から、被災地・被災者の側に立った真の復興に取り組む、福島で支援活動に携わる私たちからのお願いです。


*心的外傷後ストレス障害のうち、少なくても6ヶ月以上経過して症状が出現してくるもの

©Kazuo Koishi

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