これまでトランプ大統領が発令したいくつかの大統領令は、これら社会的に弱い立場にある人々、私たちが医療支援を行う人々、彼らすべての基本的人権を侵害するものであり、そして私たち世界の医療団の理念に真っ向から反するものです。
トランプ大統領による一連のアクションによって、世界の医療団の3つのコア・バリューが脅かされています。
1. 私たちは女性の人権とその権利を尊重します。新政権発足の第1日めに通称「グローバル・ギャグ・ルール」として知られる「メキシコシティ政策」が導入されるのは、これが始めてではありません。これまでレーガン大統領から後の共和党の大統領がそうしたように、そして民主党の大統領は即座にその制度を廃止させてきました。今回のトランプ大統領によるこの厳しく懲罰的そして有害な大統領令は、今後多くの、その数は決して少なくはない、そして安全ではない中絶が行われる結果をもたらし、自らの支持者をも裏切ることになるでしょう。また、このトランプ氏版「ギャグ・ルール」は、すべての米国所管の機関が行うあらゆるグローバルヘルスにかかわる資金調達活動に影響を及ぼし、最終的に、この方針は過去数十年にわたって積み上げてきた医療セクターにおける数多くのめざましい功績を無効にし、時代を逆戻りさせることになります。女性と子どもたちに与えるインパクトは、計り知れません。すべての女性は1人の人間として、社会的平等、経済的平等、政治的平等、そして医療的平等のもとに、健康で尊厳のある生活を営む権利があります。「グローバル・ギャグ・ルール」はこれらの機会を必要とする人々の権利を否定するものであり、私たち世界の医療団は断固として反対の立場を表明します。
2. 私たちは、戦争捕虜や拘留、逮捕、もしくは投獄されたすべての人々に対する人道的な扱いを尊重しています。単に役立つ情報を持っていそうだというただそれだけでの理由で、証拠もないままに「拷問」という野蛮で違法な手段を用いること、を容認する忌まわしく許しがたい発言が米国の大統領によってなされました。 世界の医療団は、国連による拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱いまたは、刑罰に関する条約)を支持、尊重します。
3. 政治的混乱、内戦、紛争、または政治的、民族的、宗教的迫害の恐れから逃れた人々、その人の持つ政治観や民族、性的指向、宗教などの理由によって迫害されたすべての人々が難民申請を行う権利があると信じています。米国が掲げる難民受け入れプログラムは、長年にわたり世界において尊重されるものでした。シリア難民とイスラム教国7カ国からの入国禁止令、そして4ヶ月間の難民受け入れプログラムの停止措置、これらの規制は不当かつ非人道的であり、いまだ紛争地帯にいる多くの人々の自由をなくし、結果的に彼らの健康を脅かすことにつながります。