社会的弱者の医療アクセス状況について - 世界の医療団2016年度調査報告書より

欧州における難民問題は危機的状況
各国の医療アクセス状況はより深刻化

社会的弱者の医療アクセス状況について - 世界の医療団2016年度調査報告書より
世界の医療団では例年に引き続き、12カ国* 31ヵ所に滞留する難民を対象にした医療に関する調査を実施、11月15日、ブリュッセルの欧州連合国際プレスセンターにて、欧州における医療アクセスを持たない人々の状況をまとめたレポートに関する記者会見を行いました。調査の結果、妊産婦や子どもなどの社会的弱者が医療アクセスから除外されているという状況が、改めて浮き彫りになりました。これら問題の深刻さを、数字が物語っています。

 • 調査対象者のうち68%が社会保障制度から除外(妊婦も含む)
 • 54%の子どもが麻疹、おたふく風邪、風疹の予防接種を未接種、破傷風については32%が未接種
 • 妊婦のうち40%が産前のケアを未受診(世界の医療団により診療を受診するまで)
60%がエイズ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス検査を受けておらず、検査に関する情報も未入手
 • 約60%の妊産婦が、逮捕・拘留への不安から行動範囲を制限

社会的弱者の医療アクセス状況について - 世界の医療団2016年度調査報告書より
調査対象者のうち3.1%が難民となった理由の一つとして、健康上の問題を挙げています。実際、欧州で医療を受けたことで、調査対象者の4分の3に持病があることが判明しました。医療を受けるために難民になるというのではなく、難民になって始めて診療を受けることができ、治療が必要だということがわかるのです。

各国政府は難民に至るその過程を考慮し、難民を適切に受け入れるべきです。

世界の医療団フランス理事長のフランソワーズ・シヴィニョンは「2015年は、難民に対する国際支援の長所と短所が露になった1年でした。難民を助け、彼らのニーズと希望に応えたいという思いから集まった世界中の人々の支援は長所となり、一方、短所とは、欧州の政府が命がけで戦火から逃れた難民を適切に受け入れる枠組み作りに合意できなかったことにあります。」と話しています。

世界の医療団は、以下について欧州連合またその関係機関に要求します。

 • 「連帯、平等、正義」の理念に基づき、全ての難民に対し医療保健サービスを提供すること

 o 妊産婦への産前ケア提供と安全な出産の確保、また(必要であれば)中絶の選択が可能であること
 o 子どもたちへの予防接種の実施と保健医療の提供
 • 人道法の基準を満たす受入れ環境(施設、衛生設備、医療、情報アクセスなど)の整備
 • 合法かつ安全なルートを設け、難民申請ができるようにすること
 • 難民の過半数を占める女性と子どもに対する受け入れ環境の整備と保障の確保

 o EU加盟国による未成年者の拘束の解除、また孤立した子どもが安全に生活できる施設を設けること


*ドイツ、ベルギー、スペイン、フランス、ギリシャ、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、イギリス、スウェーデン、スイス、トルコ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。