活動の現場から―フランス・カレー

アフリカや中東から移民らが殺到しているフランス北部の港町カレーには、通称”ジャングル”と呼ばれた難民キャンプがありました。フランスにいることもできず、しかしイギリスに渡ることもできずに、多くの難民たちが劣悪な衛生環境下に留まることを余儀なくされていました。
治安悪化の懸念などから、当局による強制的な”ジャングル”の取り壊しから2週間が経過しました。代わりとなった難民受入れ施設は、すでに人間生活に必要最低限のニーズにすら応えられない状況に陥っています。

活動の現場から―フランス・カレー
難民受入れ施設において、難民たちは、医療を受けることができず、食事も十分に行き渡らないために1日に1食しか与えられない日もあります。また、難民受入れ施設で働くスタッフは専門的な訓練を受けていないため、難民たちの悲惨な状況を目の当たりにすることによって精神のバランスを崩してしまうことが懸念されます。

精神医学の専門家の調べでは、同伴者のいない未成年者の約90パーセントが精神状態に何らかの問題を抱えていました。人生を大きく変えると信じた決断への期待が失われたとき、それがこころへの大きな負担となってしまったのです。

難民受入れ施設の状況が劣悪なために、屋外で寝ている難民たちもいます。このような状況を受け、11月10日にはパリに400人が寝泊りできる”人道キャンプ”が設置されましたが、男性のみが対象のこのキャンプには、最も守られるべき女性や子どもたちは入ることができません。

世界の医療団は何年にも亘りフランス国内の難民支援に取り組んできましたが、弱い立場にある人々への支援が脆弱であることや、彼らの状況についての情報共有が非常に乏しいという現状に愕然としています。カレーの難民キャンプが取り壊されたあとも私たちが治療を行ってきた人々を継続的にケアするため、難民受入れ施設の場所を教えてほしいと、取り壊しが決まった時点から訴えてきましたが、未だに場所はわからないままです。上述の現状は、唯一、私たちに連絡をくれた数名の難民から得た情報で、継続的なケアを行えるのも彼らのみという状況です。

カレーでは、警察は難民たちを捕らえ続けており、また、多くの警察官がユーロスターの駅や港に配置されています。

「白人以外のすべての人を逮捕しているようだ。」と世界の医療団カレー地区担当アシスタントのメラニー・ヴィオンは証言します。「警察はカレーの広範囲に及んで難民を探していると考えています。」

逮捕された難民たちは拘留施設に入れられます。中には明らかに精神的に問題を抱えている男性も含まれていました。

「カレーのキャンプが取り壊され始めたとき、彼はまだ自分のシェルターの中にいました。彼に精神疾患があることはわかっていたので、チームが彼のシェルターに向かっていたのですが間に合わず、彼はパニックになり暴力的になってしまいました。警察は彼の精神疾患を認めていたにもかかわらず、1週間も拘留し続けました。私たちは釈放を訴えました。釈放後はひどいストレス状態にあったためか、難民受入れ施設に入ることを拒みました。パリに行ったのではないかと思います。」

幾重もの困難を乗り越えたにもかかわらず、今もなお過酷な環境にある難民の精神的な負担は非常に深刻である言わざるを得ません。「人道ニーズは最優先されるべきことですが、人権はその過程において侵害され続けてきたのです。」と、メラニーは語ります。

世界の医療団では、命がけで海を渡るシリア難民を「医療のリレー」で救うため、皆様のご協力を必要としています。
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