東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート16

今回は、福島県相馬市にある仮設住宅、復興住宅でこころのケア活動を続けている増田利佳看護師のレポートをお届けいたします。

東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート16
私はこころのケアセンターなごみと協働し、相馬市でサロン活動と個別訪問を行っています。
現在なごみ主催で行っているサロン活動は、震災前の居住地が飯舘村の方が暮らす大野台第6仮設住宅と震災後に建てられた復興住宅の集会所で行っているものの2つです。

飯舘村では2017年3月に帰村宣言が出される予定となっています。
現在第6仮設住宅には136世帯254人が暮らしています。
本当は村に帰りたいけれど、若い家族が戻りたくないと言っている、除染の進み具合が心配などとの声がきかれていて、みんながみんな来年帰るわけではありません。みなさん、複雑な思いを抱えていらっしゃいます。

戻ったとしても、買い物、銀行、郵便局、病院などが元に戻っているわけではなく、不便な暮らしを強いられることになります。また、除染土の入った黒いフレコンバックがあちこちにあり、その問題もあります。 刈敷田(かりしきた)の復興住宅に暮らすみなさんはもともと相馬市に住んでいて、漁で生計を立てられていた方がほとんどです。震災により海が汚染されてしまったので、仕事を失ってしまい、いきがいやすることを失くしてしまったと言われています。

震災後、半年経ってきのこ狩りをして放射能を調べてもらったら、「売り物にはならないけど、自分が食べる分には問題ない」と言われたとのこと。
売り物にならないような物を自分が食べるのはよくないだろうと、それ以来楽しみだったきのこ狩りもやめてしまったとのこと。日常生活があの日を境にがらりと変わってしまったとみなさん、おっしゃいます。

今年の4月に熊本地震がありました。相馬に暮らすみなさん、熊本のことを心配されていました。それと同時に、みんなの気持ちが熊本に向いてしまい、自分達が忘れさられてしまう、そのことの恐怖、寂しさを感じておられるようでした。

サロン活動では血圧や脈拍を測定し、健康状態をうかがいながら、おはなしをうかがっていきます。また、折り紙など作品をつくったり、お菓子を作ったり、時にはゲームなどをしています。サロンの時間をとても楽しみにしている様子が伝わってきます。被災者の皆さんが生活を再建し、いきがいをみつけいきいきと暮らしていくためのきっかけづくりのような役割があるのだと実感しています。

個別訪問は、震災後、アルコール依存症になられてしまった高齢の男性がほとんどです。
妻を震災で亡くし、結果として子どもとも疎遠になってしまい、生きがいを失いアルコールにおぼれてしまう方が多いです。アルコールを多量に摂取することで認知症になってしまったり、栄養不足、運動不足から歩けなくなってしまう方もいます。いきがい、仕事、話し相手を失い、耐えることに限界がきてアルコール依存症になってしまわれているように思います。

女性と違い、どれだけ辛いかを話される方はあまりいません。けれども、私達の訪問を待ちわびている様子が伝わってきます。何度か訪問をする中で、同じ時間を共有することが大切なのだと実感しています。言葉ではなく、一緒に過ごす時間の中で信頼関係が生まれ、被災者の方が強く前を向いていくきっかけになっているのだと感じています。

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