ラオス小児医療プロジェクト 現地レポート19

ラオス小児医療プロジェクト 現地レポート19
*ヘルスプロモーターと村長に聞き取りをする県保健局、郡保健局、MdMチーム

世界の医療団日本は、村人の健康に対する行動変容を通じ、地域全体としての子どもの健康やそれを取り巻く環境変化を目指し、その支柱となる自立した地域医療システムの構築を目指してきました。 人々の習慣ともいえる行動が変わっていくことに時間がかかるのはもとより、地域の人々の健康状態の変化は、活動と同時に見られるほど簡単に導かれるものではありません。したがい、これまで3年以上にわたる現場活動の結果をみるためにも、そして、初めての海外中長期型プロジェクトを今後に活かしていくためにも、活動として欠かせなかった要素や改善できる要素を知ることが重要と考えています。

2015年12月には現場拠点であったパクセ事務所を閉所しましたが、以上の理由から事後モニタリングを実現させるため、事業終了前から県保健局と話合いを続けてきました。その結果、2016年3月を第1回として、この事後モニタリングをスタートさせることができました。第1回目はエンドライン調査の意味合いも含み、また県保健局と世界の医療団で第2回目以降のモニタリングの方法論など検討する、その試験的なモニタリング実施でもありました。結論としては、県保健局からも方法に改善を加え、共同継続していく意志を確認することができました。
今後は県保健局と第1回モニタリング報告書をまとめ、県保健局による今後のアクションを検討するための考察材料として活用してもらいたいと考えています。

今回の情報収集は、大きくわけて、医療施設(郡病院とヘルスセンター)での診察技術の確認と、村落での健康普及活動の継続状況、各医療施設の5歳未満児受診者数の確認です。5歳未満児の養育者へのインタビューなども実施し、3年間で地域(村)の健康への意識の高まりがあったのか、また、その変化の実感とはどんなものだったのかを知りたいと考えました。また、変化をもたらす効果があったのか、さらに効果を高める可能性のある要素を導きだすための分析を、全てのデータを照合して行う予定です。

第1回目となるスクマ郡では、郡病院および2箇所のヘルスセンターと周辺村落を訪問(3月21、22日)。ムラパモク郡では、郡病院および3箇所のヘルスセンターと周辺村落を訪問しました(3月23-25日)。チャンパサック県保健局の母子保健課からも3名、各郡保健局からも1-2名がモニタリングメンバーとして参加しました。世界の医療団からは、早川小児科医と医療通訳、ラオスコーディネーターと現地スタッフが参加しました。

村落健康普及ボランティア(ヘルスプロモーター)インタビュー
世界の医療団は、2ヶ月に1回、各医療施設エリアでヘルスプロモーター研修を実施してきました。ヘルスプロモーターは、村長の協力なしでは村人を集めることができません。彼らの活動環境の難しさを誰もが認識しつつ、一方で5歳未満児の健康や妊産婦へのアドバイスなど、世界の医療団のコミュニティワーカーなくとも継続していくことに大きな期待が寄せられています。県母子保健課からもヘルスプロモーターが活性化された今、今後も積極的に協働していくための計画を立案中と聞いています。
どの村でも共通していたのは、話をきいたヘルスプロモーターがその任務についてきた年月のなかで、村の人々の健康に対する態度に変化が現れたということです。また、今後も村長と協力し、村人が集まる機会をとらえて健康教育を提供していくとのことでした。(2016年に入ってから既に数回実施した村もありました)

世界の医療団との研修に関しては、以下のようなコメントがありました。
「世界の医療団の研修で、たくさんのことを学ぶことができた。今後の研修が頻繁になくても、村長と協力してやっていくことができる。」

「他のボランティア仲間と悩みや経験を共有したり、方法論を話し合ったりするいい研修だった。」

インタビューした私たちをいい意味で絶句させた彼らのコメントは、
「(今後の健康教育や妊婦や子どもへの援助について)わたしがやらなかったら誰がやるっていうんだ?」

「わたし一人では村人全員に健康教育を提供していくのは難しいよ。でもね、”ピアワーカー”がいるから、村全体に情報が伝わるのは早いよ。」(ピアワーカーとは、自主的にヘルスプロモーターから得た情報をその場にいなかったほかの村人にも伝えてくれる協力者のこと)

ここ数年のコミュニティの変化についての彼らの実感は、
「この3-4年で村(人)は変わったという絶対(100%)の自信がある。」

「以前はわたしたちが何を言っても聞いてもくれなかった養育者が、今ではわたしらの言うことに耳を傾けてくれる」(例えば予防接種の啓発)

「積極的に子どものために医療サービスを利用する養育者が増えているよ」

(医療サービスの利用や村人がヘルスプロモーターの意見を尊重し始めた事に関しては、小児医療費の無償化や、保健局の政策がその行動を後押ししているとの意見もありました。)

村人がヘルスプロモーターを頼り始めていると感じられたコメント
「村内で健康についての情報が混乱したら、説得にいったりヘルスセンタースタッフと村人の間を仲介したり、、、自分たちがやらないといけないことは結構あるよ」

「妊婦が出産時にヘルスセンターまでついて来いって言うんだよ。そのまま郡病院に搬送されるケースもあって、そのときはそのまま郡病院までついていくんだ」

今後の自主的な活動が期待できるコメント
「あと10家族くらい、教育内容への理解が追いついていない家があるから、個別に家庭訪問して説明していく計画だよ」 「正しい母乳育児の説得はなかなか大変で、これが今後のフォーカスだね」

―――――――――――――――――
本レポートは、収集したデータを整理分析する前の現場速報です。スクマ2村、ムラパモク2村の合計4村で行ったヘルスプロモーターへの聞き取りを中心とする情報です。 対象村は合計で112村あるので、2回目以降も継続していくなかで、異なる状況での村訪問になるのかもしれません。

プロジェクト担当 熊澤 幸子

*本プロジェクトは2016年3月まで資金の多くを「日本NGO連携無償資金協力」の助成を受けて実施しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。