ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)

ヨーロッパで起きている難民の受入れ危機について、現地の情報をまとめました。

ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)
2015年11月19日以降、バルカン諸国(最初にスロベニア、クロアチア、続いてセルビアとマケドニア旧ユーゴスラビア)はシリア、イラク、アフガニスタン国籍以外の難民の入国規制を開始し、アフリカやアジア(イラン、モロッコ)からの難民の入国は認められず、彼らは引き返さざるをえない状態になりました。その結果、少なくとも1,500人の難民がマケドニア旧ユーゴスラビアの国境に程近いギリシャのイメドニ島で立ち往生する事態となり、冬支度のない現地の状況は非常に厳しいものとなっています。
足止めされた結果、自殺やハンガー・ストライキ、口を縫うなどの過激な抗議行動をとる難民も見られます。

ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)

ベルギー


2015年8月より、1ヶ月に4,000-5,000人の難民がベルギーに到着するにもかかわらず、政府の難民申請は追いついていない。多くの家族が、水も食料もシェルターもないブリュッセルの外国人登録局の前で野宿をしている。ベルギー政府は1,000床ある夜間のシェルター提供やファンドの立ち上げなど対応の強化を図っているが、医療サービスとしては緊急対応のみで、妊産婦や子どもへの初期的なケアや慢性疾患などの対応は行っていない。シェルター、食料、医療、社会的、法的支援、彼らの子どもに関する教育へのアクセスがない状態で、常時、2,000人以上が登録局の前で難民登録の機会を待っている。
またテロの脅威にさらされた登録局は、数日間に渡って余儀なく閉鎖された。パリで起きたテロの影響により、今やメデイアの関心は、難民危機からベルギーでいつ起こるかもしれないテロの脅威に移っている。
世界の医療団はパートナーとともに診療活動を行っている。医師、看護師、精神科医、通訳などが、1日30-40人の診察にあたっている。申請書類を持たない難民、難民認定を受けていない難民、そして難民認定されたもののここしか知らない、もしくは馴染みがあるとの理由で世界の医療団に来る難民、そして大部分が到着したばかりの難民と、患者層は様々である。

ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)

フランス


カレーでの人道危機を受けて、世界の医療団はパートナーNGOの Secours Catholique (Caritas)とともに難民キャンプの環境改善を求めて提訴、結果、行政により飲料水の配給施設、トイレ、ゴミ収集システムなどが設置され、また同伴者のいない未成年を48時間以内に保護するルールなどが新たに強化された。
11月中旬にはカレーのキャンプ内の診療所も破壊されたが、診療再開に向けて活動している。
冬の到来から不安が募り、キャンプに到着する人々の間にストレスや自暴自棄になる感情を抱える人が増えている。またパリで起きたテロ事件から、ホスト社会から締め出されるのではないかという恐怖感も芽生えている。事実、11月21日、22日に火災が発生し、1平方キロに渡って燃え広がった。その一週間前にもカレーのキャンプでは2,500m²を焼失する火災が起きている。残念ながら、世界の医療団の移動型クリニックも放火の被害にあったが、アウトリーチ、メンタルケアの診察を続行している。

ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)

スロベニア


昨年のこの時期と比較しても、西バルカン・ルートは北欧を目指す難民で2,000%の増加率を記録したが、厳しい冬と国境の厳しい入国制限のため、2015年11月からは大きな混乱は起きていない。スロベニア警察によると、セルビア・ハンガリー国境封鎖後25万超の難民が流入、平均して1日2,000人から6,000人が入国、オーストリアを目指す。
UNHCRによると、11月17日、スロベニアの南東の国境では11kmに渡るフェンスが設置された。ドボヴァ、Gruškovje、Petišovciなどから国境を越え、難民登録を済ませ、収容施設かバスか電車でオーストリアに向けて出発する。10月や11月上旬と比べ、手続きはスムーズに行くようになった。
11月19日、政府機関はイラク、シリア、アフガニスタンからの難民のみ通過を許可する方針を打ち出し・・・

ヨーロッパにおける難民受入れ危機 最新レポート(2015年12月2日)

スウェーデン


10月まで、計10万人を超える人が(うち23,000人が同伴者のいない未成年者)スウェーデンで難民申請を行った。現在は、毎週8,000人から1万人が、マルモから流入している。彼らを取り巻く情勢は地域によって、全く様相が変わってくる。
真冬の到来が近づくにつれ、シェルターの混雑から感染症の蔓延のリスクが高まることが危惧される。行政は子ども連れの家族や同伴者がいない未成年などのケアに重点を置き、単独の男性の健康問題が置き去りにされている傾向がある。
ストックホルムから600kmのスウェーデン南部のスコーネ地方には、多くの難民が到着する。行政当局は、医療へのアクセスを整備したが、受入れに関する問題は一向に解決しない。現在、8万人以上の人が政府から提供されたシェルターに滞在して・・・


レポートは こちら(PDFファイル)から

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