ラオス現地レポート17:村落健康教育普及活動について

世界の医療団ラオス小児医療プロジェクトでは、郡保健局や郡病院・各郡に複数存在するヘルスセンター・村落の3つのレベルにおいて健康教育普及活動と健康教育の質の向上に取り組んでいます。
このレポートでは、村落における健康教育普及活動についてお話したいと思います。

ラオス現地レポート17:村落健康教育普及活動について
みなさんは普段どのように健康についての情報や知識を得ているでしょうか?
日本であればテレビ、インターネット、健康関連雑誌など様々なメディアを通じて情報を得ている方がほとんどだと思います。
<それでは、ラオスの村落においてはどうでしょうか?もちろん、都市部を除く農村部には、テレビ、インターネットなどほとんどありませんし、遠隔地の村の女性の多くは字が読めないこともめずらしくありません。つまり、村落に住む村人は健康に関する情報を得る機会がほとんどないのです。そのため、私たちでは当たり前のような公衆衛生の知識―例えば、ごはんの前は手を洗う、川の水は飲まず煮沸した水を飲む、生ものは食べず火の通った調理されたものを食べる等―に乏しく、下痢などの感染症にかかってしまうことが多いのです。とくに抵抗力の弱い子どもは、医療機関への受診が遅れることにより命を落としてしまうことも少なくありません。このような現状ですので、ヘルスプロモーター(村落健康普及員:ボランティア)が行う村落健康教育は住民が唯一健康についての情報を得ることのできるとても大切な機会であり活動なのです。

ラオス現地レポート17:村落健康教育普及活動について
世界の医療団は2012年の活動開始から、コミュニティーワーカー(現地ラオス人看護師スタッフ)がヘルスセンタースタッフと共同でヘルスプロモーターが村落で健康教育活動が行えるように、人材育成を行ってきました。そして現在、スクマ・ムンラパモク両郡で、ほとんどのヘルスプロモーターらがスタッフのサポートにより自分たちで健康教育活動が行うことができるようになりました。これは約3年を通じた世界の医療団の活動における大きな成果です。しかしながら、多くの村人が農業や個人ビジネスなどに勤しんでおり、あまり健康教育に関心がないのが現状です。健康教育の場にどれだけ多くの住民を呼び込み関心をもってもらうかが一つの課題です。

ラオス現地レポート17:村落健康教育普及活動について
村落健康教育活動についてはラオス保健当局もその意義を認識しており、2015年12月の村落活動終了までに県保健局と共に強化していくプログラムとして合意しています。現在、村落健康教育活動は単なる健康教育の枠を飛び越え、地方自治体を含むコミュニティとヘルスセンタースタッフの連携の強化といった、より包括的な意味合いをもつようになってきています。
例えば村での健康教育集会を行う場合、ヘルスプロモーターが村長からの理解を得、住民への呼びかけに協力してもらわなければ住民は集まりません。各村の村長やキーパーソン、ヘルスプロモーターの関係性を考慮したサポートが必要なのです。また、ヘルスセンタースタッフが村落で予防接種キャンペーンを行う場合なども同様です。ヘルスセンターのスタッフと村長らとの結びつきや信頼関係が弱ければ、本当に住民を巻き込んだ地域の健康推進にはなりにくいのです。 つまり、包括的な村落健康教育活動とは、地方自治体、ヘルスプロモーターとヘルスセンタースタッフが共通目標を認識し、目標達成に向けて連携を図ることでより多くの住民を健康教育に呼び込み、公衆衛生に対する関心を高めていこうという動きです。

ラオス現地レポート17:村落健康教育普及活動について
プロジェクト終了を間近に控えた現在、世界の医療団がサポートしてきた健康教育活動を、コミュニティが自分たちの力でどう継続していくかが一つの鍵になっています。それまでにできるだけ地方自治体とヘルスセンター・スタッフの連携を強化していくこと、そして今後もヘルスプロモーターが地方自治体やヘルスセンターと連携し健康教育を行っていけるような環境を創っていくことが私たちに課せられた目標です。

<写真上から>

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村落の集会でフリップチャートを使いながら村民に説明するヘルスプロモーター。 最初は人の前で声を出すことをためらうヘルスプロモーターもいました。

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集会前にヘルスプロモーターと世界の医療団のスタッフが内容確認をします。

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家庭訪問し、プチ勉強会を開くヘルスプロモーター。
子どもが大勢いると、集会に出てくる時間をつくるのも大変ですが、こうして次回集会への参加も促します。
ヘルスプロモーターの実践を、今後世界の医療団に代わってヘルスプロモーターと協力していくヘルスセンタースタッフが見守っています。

ラオス小児医療プロジェクト 駐在看護師 木田晶子
(原案執筆2015年9月)

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