スマイル作戦 ミャンマー2015 現地レポート

形成外科手術を必要としながらもその機会に巡り合うことのない患者たちに手術を行う「スマイル作戦」。
今回で5回目となるミャンマーでの同プロジェクトが2015年6月21日~27日に実施されました。
世界の医療団の活動に今回始めて参加した山脇 枝里子看護師によるレポートです。

スマイル作戦 ミャンマー2015 現地レポート
2015年6月21~27日、初めてスマイル作戦に参加した。スマイル作戦のことを知り応募を決めた日からの念願が叶い、ミャンマーでのミッション参加が決まった時は、嬉しさと期待で胸がいっぱいになった。それから出発までの間、私に務まるのかという不安、また今回看護師は私一人という責任の重さも同時に抱えながらこのミッションを迎えた。

私は関西空港から向かったため、成田空港から出発した他のメンバーの方たちとは、バンコクでの乗り継ぎ待ちで初対面となった。メンバーはスマイル作戦やその他の海外医療支援の経験豊富な方々で、私ともう一人麻酔科の先生のみが初めての参加であった。私は緊張でそわそわしていたが、穏やかで和やかな雰囲気に私の緊張は大きく緩和された。

スマイル作戦 ミャンマー2015 現地レポート
ヤンゴン空港に到着し、活動地であるネピドーまでは車で約6時間、スコールや車のトラブルに見舞われながらもネピドー総合病院に到着し、大勢の患者さんや病院のスタッフに歓迎された。一息する間もなく、そのまま外科医の先生が二手に分かれ診察が始まった。多様な種類の口唇口蓋裂、熱傷後瘢痕拘縮など私にとっては初めてのたくさんの症例に驚きながらも、先生たちは手慣れた様子で次々と診察しオペ可能か判断していく。約50人の患者を診察したうち45人がオペ可能となり、現地医師によって5日間の手術スケジュールが組まれた。

手術初日、どの患者のオペを行うのかもわからないまま病院に向かった。そのまま手術準備、手術開始、気づけば夜8時、計8人の手術が無事に終わった。私はとにかく必死であまり記憶がない。手術室内の大量の虫や頻繁におこる停電、マニュアルでの器械の洗浄滅菌、患者のプライバシーが全くないことなど、とにかく日本とは全く違う現地の環境に慣れることや2列同時で次々と行われる手術の流れについていくことに精一杯だった。2日目以降は前日の反省点を踏まえ、予想以上に多い口蓋裂の手術に対応するために器械をうまくまわすこと、現地スタッフとも積極的にコミュニケーションをとるよう心掛けた。夜まで手術が続きくたくたになる日もあったが、毎日手術後に病棟に訪れると、切望していた手術をやっとの思いで受けることができた患者とその家族が希望に満ちているように見え、また明日もがんばろう、と彼らに元気をもらうことができた。

スマイル作戦 ミャンマー2015 現地レポート
最終日、最後の手術は27歳の女性だった。彼女は数年前に服に火が燃え移り、全身熱傷を負った。そして瘢痕が拘縮し、手足や首を満足に動かすことができなくなっていた。日本ならきっと適切な時期に適切な治療を受けることができ、こんなにひどい拘縮にはならないはずである。彼女はこのチャンスを得て、少しでも体の自由を求め、手術に臨んだ。全身の熱傷により皮膚が固く術前の点滴ルート確保で手こずり、彼女は痛い、痛いと叫び、約2時間もの間辛い思いをさせてからの麻酔導入、手術となった。手術中、私たちスタッフは彼女にかわいそうな思いをさせてしまったことを申し訳なく感じていた。しかし手術は無事に終わり、麻酔が覚めて彼女が発した初めの言葉はミャンマー語で「ありがとう」だった。その後も彼女は私たちに感謝の意を表し続けていた。そんな彼女の態度は、私たちの気持ちを救ってくれた。もちろん彼女の強さ、人柄の表れであるが、きっとそれだけでなく、医療を受けることすらままならない発展途上国の現実を表している彼女の言葉だったのかもしれない。

たくさんのトラブルや失敗、反省、学び、喜び、刺激的な5日間を終えた。今回一緒に活動した先生方は、日本とは全く違い設備や器材が十分ではない、トラブルと隣り合わせの異国の地で、きっと大きなプレッシャーと戦いながら精神的にも体力的にも辛くなる時があったはずだが、患者の未来を手助けしたい一心で全ての手術を滞りなくこなしていた。そんな先生方の勇敢な姿が今も目に焼き付いている。私はメンバーにたくさん迷惑をかけ、たくさん失敗もした。そしてちゃんと仕事がこなせていたのかさえもわからずにいたが、全ての手術を終えた最終日、ある先生に、初めてで一人なのによくがんばったね、と声をかけていただいた。ほっとしたのと同時に次はもっともっと貢献できるようになりたいと強く感じた。

スマイル作戦 ミャンマー2015 現地レポート
その先生の「どう?やみつきになるでしょう。」という言葉もまた、深く心に残っている。ここに集まった患者さんは皆、必要な手術を受ける機会を求め、必死の思いでやってきている。そんな患者さんが手術を受けることができ、元気な姿や笑顔を見た瞬間に感じた達成感は大きな喜びであり、忘れることができない。また、今回手術をできなかった患者や二次手術を必要とする患者もいた。彼らはまた成長してから次の機会に手術を受けることになるはずであるが、彼らに次の機会が絶対にあるのかどうかは決してわからない。私たちには当たり前となっている医療を受けることができずに苦しんでいる人々が、世界にはまだまだいることを目の当たりにした今、また手術を受けることができて喜びを手に入れた人々を見て、私もこの活動を止めることはできないだろう。

手術室看護師 山脇枝里子

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