ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート13

世界の医療団は、2014年12月に、対象施設(スクマ郡とムラパモク郡の2つの郡病院と10のヘルスセンター)スタッフを対象に小児医療研修を行いました。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート13
今回の研修では、小児医療知識や技術のみならず、チームワークについてもあわせて学ぶ構成を目指しました。郡病院は事情が異なりますが、ヘルスセンターはチームと呼ぶにふさわしい小規模な人数で運営されています。にもかかわらず、チームワークという言葉が現場医療スタッフの腑に落ちるには時間がかかるだろうことを思わせるエピソードがあったことがひとつのきっかけでした。

それは・・・

あるヘルスセンターで、ある日突然施錠タイプの大きな棚が4つも購入されていました。建物内に収まりきらないくらいの大きさで、実際に4つのうち2つは屋外におかれ、患者さんの待合スペースをも占拠していました(写真:上)。

4つも棚が必要な理由をたずねたところ、スタッフのうち1名は説明しました。このヘルスセンターのスタッフ4名で、誰がどの書類や薬を管理しているかはっきりさせ、万が一紛失したときの責任が明確にできるようにと。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート13
確かに、書類やテキストの整理、そして医療施設の清掃一般について何をどう説明したらいいのかといった状態から駐在看護師による指導が始まったので、整理しようという意気込みは前進です。当初は、棚に言葉通り「突っ込まれて」いく書類はいつしか棚からなだれ落ち、窓から舞い込む砂やほこりがその上に積もっていました。この状態が気にならず、必要な時に必要な書類やテキストが出てこないことが問題でした。写真(下)は、徐々に「整理」が定着し、棚と机を巧みに(?)利用して整理された書類です。

4つの棚の話しに戻ると、交代勤務であれば、薬は屋内併設の薬局(倉庫)で、書類は関係者が必要時にアクセスできる場所で共同管理するのが便利かつ合理的だと思われましたが、ひとりにひとつ棚を割り当て、管理物を分けてしまおうという発想でした。お互いにフォローしあうなどこの状態では語れるものではありませんでした。

4つの棚は他に例を見ない究極の一件でしたが、このような背景のもと、一緒にひとつの目的を達成するための作業をすること、共同作業のなかにも役割分担で効率的に作業を進めることができること、これを実感してもらうために今回の研修では積極的にグループワークを取り入れました。

また、ディスカッション内容を他のグループと共有してさらに議論を深め、さらに、子どもの診療場面のロールプレイの後は各ロールプレイの改善点やよかった点を全員で振り返り、情報や知識が部屋の中で行き交う場作りを意識しました。 これは情報や知識の共有がもうひとつの課題でもあったからです。ヘルスセンターや病院は休診することができないので、一部のスタッフがこれまでの研修に参加しており、研修に参加したスタッフには、学習した知識や技術を同僚に共有するよう念を押してきました。しかし、それも簡単なことではありませんでした。

さらには、地域医療がいざという時に機能するためには、ヘルスセンター・郡病院・郡保健局や県保健局が普段からコミュニケーションをとっておくことが大切です。まずは同じ医療施設で働くもの同士から、そして地域医療関係者間のコミュニケーションへと広がっていくことを期待しています。

研修の詳しい内容は次回レポートで報告します。

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