世界の医療団・活動報告会2014レポート

2014年11月25日(火)、飯田橋の東京ボランティアセンターに於いて、「世界の医療団・活動報告会2014」が開催されました。

世界の医療団・活動報告会2014レポート
「世界の医療団」は1980年にパリで発足し、世界各地に医療・保健衛生分野の専門スタッフ中心に派遣し、「人道医療支援」に取り組む国際NGOです。治療の他にも活動の障害となるさまざまな人道に反する行為や状況を世界に向けて「証言する」活動も行っています。タレントの滝川クリステルさんが広報の顔に就任して3年目。ACジャパンのテレビCMや、主要交通機関や病院等の公共施設にポスターが貼られており以前と比べてかなり認知度も高くなってきたことと思います。

世界の医療団・活動報告会2014レポート
報告会は、はじめに事務局長の畔柳よりご挨拶をさせて頂き、それに続いて現在国内外で進めている4つのプロジェクトについて活動報告が各15分ずつ行われました。今回は東京地区にお住まいの医師看護師4名が登壇されましたが、この方たちは滝川クリステルさんを中心に撮影されたポスターのうちの4名でもあります。

はじめに、石原恵看護師より「スマイル作戦」についての報告です。このプロジェクトは先天的疾患や戦災などが原因で、顔面や身体に著しい奇形・損傷が生じた人々に修復外科手術を行い、”ごく普通”の社会生活を取り戻そうという医療支援プロジェクトです。石原看護師は看護師として16回、ミャンマー、マダガスカル、バングラディッシュでのスマイル作戦に参加しています。最近行ったミャンマーのネピドという土地は日本に引けを取らない位の医療設備が整っていて現地スタッフも日本人とある意味共通した、マニュアルに則って勤勉に働く資質を持っているとのことでした。しかし多くの現場は日本とはかけ離れていて、例えばバングラディッシュでは勉強机のライトと先生のヘッドライトで手術を行うといった環境です。また、術後の管理教育も十分ではなく、今後行っていく必要があると考えているそうです。医療現場においては、限られた時間と機材を使って優先順位を決めながら、みなで協力し柔軟に進めてよりよい結果を出すことの大切さを感じたと、ご自身の体験を交えて語りました。

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続いては、「東日本支援プロジェクト」担当の玉手氏と精神科医の小綿一平先生より現在もお二人が携わっている「福島そうそうプロジェクト」についての報告です。これは福島県の相双地区(相馬市、南相馬市、双葉郡)において精神科病院とクリニックのすべてが閉鎖されている現状を打破するため、精神科医・看護師の派遣、医療機器の提供、福祉車両の提供等により支援しています。プロジェクトには約10名の精神科医とそれを支える看護師等の医療スタッフが今も携わっています。この地域は元々精神科の病院が少なかった上に、震災や福島第一原発事故の影響で職を変えざるをえなかった人、また避難等で日常生活をなかなか取り戻せない程の深い悲しみを抱えている人が多いのが現状です。小綿医師は毎月現地を訪れており、こういった方々の心のケアをしています。震災後3年近くたった現在でも震災関連死の比率が増えていることを受け、ストレスの発散ができない孤立した人、特に高齢の男性をどうケアしていくかが、今後の課題とのことでした。

世界の医療団・活動報告会2014レポート
3番目は小児科医の早川依里子先生より「ラオス小児医療プロジェクト」についての報告です。出産1000人中42人が5歳の誕生日を迎えることなく命を落とすという現状を受け、先に世界の医療団フランスが周産期医療のミッションを始めました。世界の医療団日本は、現地保健局の要請を受けて、2012年10月から5歳未満の死亡率を下げるための小児医療ミッションを開始し、包括的な母子保健事業を行っています。ラオス行政、地方行政と連携を取りながら、医療人材の育成に重点をおいて、サービスの質の向上、知識のアップ、患者さんとのコミュニケーションの取り方、特に子供の場合は親からどうやって子供の症状についての情報を得るか、手洗いや予防接種の重要性を伝えること等を行っています。また、地域にあるヘルスセンターでは圧倒的な医師不足のため、看護師が医師と同じような治療行為を行うこともあるため、そういった人たちへの教育も重要です。2年間の活動を通じて確実に現地医療スタッフの質は向上しており、また患者さんの受診率も上がっているという効果を感じているとのことです。

世界の医療団・活動報告会2014レポート
最後は内科医の西岡先生から「東京プロジェクト」についての報告です。このプロジェクトは「医療・福祉支援が必要な生活困難者が地域で生きていける仕組みづくり・地域づくりに参加する」という理念の元、池袋周辺と他の地域でホームレス状態にある人に向け、医療・保健・福祉へのアクセスの改善、そして精神状態と生活状況の底上げ、地域生活の安定を目的として活動しています。具体的には毎週水曜日に夜回りをし、おにぎりやパンを配ることや月に2回の炊き出し、カトリック医師会とも協力しながら医療相談等を行っています。日本はGDPが世界第三位、高校進学率も99%の豊かな国と言われていますが、国民の平等を表すGDKSという数値は世界でもかなり低いとのこと。ホームレスの人にいたっては平均寿命も短く、普通に医療機関にいってもちゃんと治療されない、雑に扱われてしまうといったこともあります。こういった現状から西岡医師は今後セカンドオピニオンの重要性が高いと考えているとのことです。

平日夜の開催でしたが、支援者や実際に東京プロジェクトの活動に参加しているボランティアの方等、世界の医療団を支える多くの方が集まりました。また、活動に興味を持ちこれから参加しようかと考えている方からの質疑等もあり、大変中身の濃い報告会となりました。
世界の医療団は今後も上記のような中長期的プロジェクトをはじめ、内戦の続くシリアやアフリカ地域のエボラ出血熱といった緊急ミッションも含めて、世界各地で活動を行っていきます。毎月の支援と合わせこういった緊急ミッションへの協力も引き続き行っていますので、活動にご興味のある方、ご支援いただける方は是非サイトにアクセスしてみてください。

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