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ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト

健康知識が確実に村の人々に根づいていっています

世界の医療団は、バングラデシュ・コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプとホストコミュニティで非感染性疾患(NCDs)の予防事業を行っています。事業の柱は二つで、一つは保健ボランティアによる予防啓発(健康教育)、もう一つは連携医療機関の能力・体制強化支援です。

そのうちの健康教育では、これまで住民の間に健康についての情報を得る手段や機会がなく、間違った生活習慣で健康を悪化させているケースが多くみられており、正しい情報を伝える必要がありました。世界の医療団は健康教育を行うボランティアに、できるだけ具体的にどうしたらいいのかを伝えてもらうようにし、代替案も提示。イラストや写真教材で理解しやすく、人々がすぐに取り組めるようにしています。

今回ホストコミュニティで、NCDsに罹患している健康教育の対象者に聞き取り調査を行いました。いずれも健康の大切さに気づき、これまでの習慣を変え、教わった知識を実践。体調にも変化が表れています。


トスリマさん(35歳)
高血圧で糖尿病。3回の健康教育を受けた。 家族:夫、息子2人、娘1人(同居)


以前、何度か入院し辛い思いをしたので、もう二度と同じ体験をしたくない。夫は「子どものことを考えて健康に気を遣いなさい」などと叱咤激励をしてくれ、娘は運動を勧めて食事を管理してくれ、協力的。
ボランティアの健康教育は具体的で、個別に家庭訪問して行ってくれており、今後も継続してほしい。これまでは血圧が高くてしんどくて寝ていたことが多かったが、今は大丈夫。精神的に落ち着き、幸せを感じる。
以前は別の私立病院に通っていたが、ボランティアの勧めで現在は地域の診療所に月1回通い、医療費が安くなった。

 健康教育前  健康教育後
 砂糖過多(自家製のお菓子、ピタ(※1)など ピタを減らした。空腹時はキュウリやニンジンを食べる。
 炭水化物過多 ご飯は1回/日、あとはロティ(※2)
 塩分過多 スプーンで計量
 油過多 スプーンで計量
運動不足 娘の勧めにより定期的に実施
※1 米粉で作ったバングラデシュの伝統的なお菓子
※2 全粒粉を使った無発酵の薄焼きパン

ミゾラニ・シャマさん(67歳)
高血圧で糖尿病(17年前、糖尿病と診断を受けて1週間後に糖尿病性網膜症により片目を失明)。4回の健康教育を受けた。家族:夫、息子、娘、孫


ミゾラニ・シャマさん義眼になったことのショックや後悔が大きく、今より悪くなったら……という不安はある。今まで誰も健康のための情報は提供してくれなかった。もっと早く知っていれば生活習慣を改善できたのにと思う。健康教育を受けたあとは気分がよく、健康で丈夫になった。夫、孫、息子、娘が薬の管理や家事のサポートをしてくれ、学生の息子はアドバイスしたり励ましてくれる。改善した生活習慣を続けていく自信はある。神様から授かった身体は大切にしないといけない。
 健康教育前  健康教育後
 炭水化物過多 砂糖はスプーン2杯だけ。あとはロティ。野菜の摂取を増やした(卵・肉は食べず魚を少し)
 噛み煙草(20回/日) 噛みタバコは毎食後(3回/日)にし、他の時間にはグーズベリー(※3)をしがむ
 塩分過多 スプーンで計量
 油過多 スプーンで計量し、5ℓ/月→2ℓ/月に。
※3 現地でグーズベリーと呼ばれる木の実
バングラデシュのグースベリー






シュキ・ラフマンさん(70歳)
高血圧で心臓病。4回の健康教育を受けた。家族:妻、息子5人(うち4人はマレーシア、1人はバングラデシュ国内で別居)

シュキ・ラフマンさん噛みタバコを取りたいという欲求を抑えるのがつらかったが、心臓病で苦しかった経験をもう二度と味わいたくない。これまではさまざまな医者にかかっていたが、細かく指導を受けたことがなく、ボランティアの健康教育はとても具体的で個別にやってくれるので助けになった。食欲が増し、前より健康になったと感じる。農業を始め、牛やヤギの世話をしている。
2人の息子の嫁が15日間ずつ交替で薬剤を管理し、塩や油はスプーンを使って計量してくれている。健康教育で教わったとおり、油は小さなボトルに移してから使用するようにしている。健康でいられるのは神様のおかげで、恵みに感謝している。いつまで生きられるかわからないが、神様が生かしてくれるうちは健康でいたい。今の生活習慣を続ける自信はある。

 健康教育前  健康教育後
 砂糖過多(砂糖の入ったお茶を5-6回/日) お茶の回数減(1-2回/日)と砂糖の減量
 塩分過多 塩を追加で入れない
 運動不足 朝のお祈り後ウォーキングを毎日30-40分。食欲が増した。
 噛み煙草・喫煙(何年か前に禁煙) 5-6ヶ月前からやめている。最初代わりにチョコレートを食べていたが、甘いのでグーズベリーに変更(2kg購入)。

ジャヒダ・アクターさん(41歳)
糖尿病で高血圧(下の子の妊娠中に両方悪化)。4回の健康教育を受けた。家族:夫、子ども5人(1歳~17歳)

ジャヒダ・アクターさん以前は完全にコントロール不良で、体調もよくなく、このままではいつか死ぬと思っていた。生活改善の必要性は知っていたが、信じていなかった。何度も訪問してくれるボランティアに勧められて、少し実践してみたら体調がよくなり、効果的だと感じた。それから生活改善の効果や必要性を信じるようになった。身体が楽になり、丈夫になったと感じていて、ボランティアには感謝している。将来、子どもたちの教育を支えないといけないので、健康を保つことが大切だと思う。
 健康教育前  健康教育後
 油過多 小さいボトルに移し、スプーンで計量
 塩分過多 塩を追加しない。スプーンで計量
 噛みタバコ(4-5回/日) 回数を減らす(1-2回/日)
運動不足 牛の世話、家事、農業
炭水化物過多 ご飯を減らし、野菜を増やした


これらのインタビューから、人々の行動が変わる共通点には次の4つの要素が鍵になっているのではなかと考えられます。

1、家族の協力や助け(励ましや監視・プレッシャー、薬の管理、調理法の工夫)
2、(人生における)役割・使命・責任・価値(子どもの将来のために健康でいたい、健康であることが幸せ)
3、病苦体験(辛い症状を和らげたい。入院を二度としたくない、医療費がかかる)
4、信仰(神への感謝、神から授かった身体を大切にしたい)


健康教育はNCDsの罹患者だけでなく、家族にも実施し、患者のサポートとともに、世帯全員の健康向上にも役立っています。また、ホストコミュニティだけでなく、キャンプでも継続しており、今後も人々に健康的な生活習慣が身に着くよう繰り返し伝えていきます。


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