世界の医療団 2023年度活動報告会を開催しました

3月5日の夜、オンラインイベント「動画と語る 2023年度活動報告会」を開催しました。今回は2023年の世界の医療団の各活動について、現地の人々の声や状況をわかりやすく伝える動画を交えて担当者から報告しました。
支援者をはじめ、社会人や学生、メディアの方など70名近くの方に申し込みいただきました。

最初に事務局長の米良より「2023年は自然災害の数が増えた。紛争と内戦の犠牲者が増え、国も自分自身も健康を守り切れない状況が生まれている。活動の規制などNGOを取り巻く環境も厳しくなっている。そんな中、支援の現地化の潮流を受け、多くのさまざまな方と連携して活動を実施した」とあいさつしました。次いで、第一部「緊急支援の現場から」としてガザでの支援について報告。激しい攻撃の続く中で、人道支援物資の搬入や子どもたちのこころのケアなどを実施しましたが、世界の医療団のスタッフも犠牲になり、事務所も破壊されるなど、病院や人道支援従事者も攻撃の的になっており、現地の医療は壊滅的な状況です。動画では現地職員たちが切迫した状況を伝えました。また、動画のコメントに出てきた「連帯、正義、人道、公平」が2023年の活動のキーワードでもあったことを伝えました。

次いで海外事業プロジェクト・コーディネーターの中嶋より、トルコ・シリア地震支援とウクライナ医療支援について報告しました。はじめに共通する現象として自然災害や紛争時には保健システムの機能不全が生じ、より脆弱な立場の人々が困難な状況に陥ることに言及しました。トルコ・シリア地震では、死者5万9000人以上という大きな被害が出て、1年がたった今も多くの人々が過酷な環境下での避難生活を余儀なくされています。特にシリアでは紛争から逃れた人々が震災に遭うという二重の被害に苦しんでいます。家族を失い、故郷を失ったなかで、世界の医療団の支援が希望になっているという現地の人の声を紹介しました。


次いでウクライナにおける医療支援について報告。移動診療車による巡回医療や医療物資支援や病院の補修支援などを実施しましたが、3年目に突入した戦争は終わる兆しが見えず、特に戦線に近い地域では攻撃のために計画を延期せざるを得ない状況も生まれていることを伝えました。

第二部「長期支援の現場から」では、最初にメディカル・コーディネーターで看護師の木田より、ロヒンギャ難民キャンプとホストコミュニティの両方で実施している非感染性疾患(NCDs)予防のための健康教育や、現地の医療体制支援について詳細に報告しました。動画では、それぞれの現在の環境や現地のボランティアによる健康教育の様子と、行動が変わったと話す人々の反応を伝えました。

ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト
次にラオス地域医療強化プロジェクトについてプロジェクト・コーディネーターの小川より報告。医療へのアクセスに多くの課題を抱えるラオスの山岳地帯で、住民への健康教育や医療従事者の能力向上支援、行政と連携した現地医療体制改善支援を行っていることを紹介しました。動画では健康教育の成果として行動が変わったと話す住民たちの声を伝えました。


次に新型コロナウイルス感染症の影響で中断していた、形成外科手術を行うスマイル作戦の再開について、米良より調査ミッションを行ったと報告しました。最後にハウジングファースト東京プロジェクト(HFTP)について米良より報告しました。医療相談と季節に応じた衛生キットの配布を毎月2回実施し、2023年の利用者はこれまで以上に多かったこと、また、今後は政策提言に軸足を移し、より広範囲において課題の解決をめざしていくことを伝えました。

質疑応答は第一部、第二部それぞれに設けましたが、多くの質問が出て、予定時間をオーバーしました。最後は気軽にできる支援方法を紹介し、参加者の皆さんにご協力を呼びかけました。


質疑応答から


通訳をめざしていますが、トラウマを抱えた難民の方とのコミュニケーションで気をつける点を教えてください。
通訳者としては、まず、言われたことを正確に訳すことが大事です。もう一つ、トラウマを抱えた方への対応には「心理的応急処置(Psychological First Aid)」として三つのLが大切だと言われています。Look(様子を見る)、Listen(言うことをよく聞く)、Link(必要なところへつなげる)の三つです。また、トラウマについて詳しく聞き出すより、その人たちが求めているニーズをまず充足させることが大切だと思います。


ロヒンギャ難民へ関心の低下など、現地の事業に影響が及んでいますか?
国際的に支援額が減り、食料配給の金額が減らされるなど影響が出ています。人々は精神的にこれまで以上に不安を抱えています。NCDsは後回しになりがちで、感染症が優先されたりしている現状です。


ロヒンギャ難民キャンプでは、どうやってニーズを調査し、事業にするにはどういうプロセスを経ているのですか?
保健ボランティアが個別に家々を回わり、30~50項目の質問をしてニーズを把握します。現地の状況や国の政策、方針に沿って、ニーズと世界の医療団の強みなど、いろいろな要素を加味してプロジェクトを決めています。


ラオスで病院の医療レベルが低いということですが、公的病院と私的病院の割合はどちらが多いのでしょうか? また、行政の統制はどの程度効いていますか?
地域格差が大きいです。首都ビエンチャンや県の中心部は医療レベルが高いのですが地方の村では低いです。私的病院はビエンチャンに2件あるほか小さなものはいくつかありますが、ほとんどの人が公的病院に行きます。国の保健制度が利用でき、母子医療が無料になるからです。また、人口の70%は僻地に住んでいますが、そこには行政の運営する公的病院しかありません。
医療の統制については中央の保健省の強い指導がありますが、地方にいくほど低下する傾向がみられます。


ハウジングファースト東京プロジェクト(HFTP)について、2024年以降ほかの地域へのシフトをどう考えていますか?
能登の震災をきっかけに石川県で活動する人々とつながることができました。被災された外国人が多く、そういった医療につながれない人々を医療につなげる活動をする予定です。ただ、活動を全国に広げるといっても大規模な事業はできないので、連携がとれるところと協力しながら進めていく予定です。

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