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オンラインイベント「ジェンダーの視点からみたロヒンギャ難民キャンプの6年」を開催しました

ロヒンギャの人々が、ミャンマー軍による激しい弾圧を逃れて隣国バングラデシュに逃れてからちょうど6年目にあたる8月25日(金)の夜、世界の医療団は、オンラインイベント「ジェンダーの視点からみたロヒンギャ難民キャンプの6年―現地インタビューを通して女性の生き方を考える―」を開催しました。学生や会社員、NGO/NPO職員など、61名が参加してくださいました。

イベントでは、はじめに世界の医療団のメディカル・コーディネーターで看護師の木田晶子が、ロヒンギャ難民をとりまく現状と3人の女性に行ったインタビューを紹介しました。難民キャンプの治安は悪化の一途をたどり、ギャングの抗争、人身売買、麻薬取引などが日常化していること、世界的なインフレと物価高騰による経済的な困窮に加え、支援に対する規制も厳しくなっていること、そんな中で、女性たちは家庭内暴力やレイプなど日常的に暴力にさらされていること、自分たちで意思決定することができず、児童婚や若年妊娠を強いられ、性感染症のリスクも高いことなどが報告されました。3人の女性へのインタビューでは、ミャンマーに比べて難民キャンプでは就労や勉学、医療へのアクセスが改善され、若い女性の価値観の転換が認められるものの、結婚によって家族から就労を禁止されたり妊娠を強制されるなど、伝統的、保守的な価値観に絡めとられてしまう姿が浮かび上がってきました。

次に国際協力NGOジョイセフ理事長の勝部まゆみさんから性と生殖の健康と権利(SRHR)とジェンダー平等についてお話しいただきました。SRHRは女性の基本的人権であり、国際社会でもその認識と重要性が高まっている一方で、世界では進展と後退を繰り返していること、また、平時に存在するジェンダーの不平等は、緊急時により悪化し、自然災害、紛争、パンデミック等の折には多くの女性への精神的・身体的・性的暴力が報告されていること、ジョイセフの活動地のザンビアの事例をもとに、ジェンダー平等な社会を作るためには、単に女性への支援や保護だけでなく、女性のエンパワーメントを妨げている社会の根底にある差別や偏見に基づくジェンダー規範や制度、法律、政策などを変え、構造的障壁を取り除くことが必要であると話されました。

その後のクロストークでは、世界の医療団プロジェクト・コーディネーターの中嶋がモデレーターとなり、木田と勝部さんとともにロヒンギャ難民と、ロヒンギャ難民だけでなく世界のさまざまな国でも共通している課題について話を深めていきました。さらに勝部さんからは日本におけるジェンダー不平等の現実についても問題を提起されました。また、世界で見られるバックラッシュ(揺り戻し)については、人権侵害がある一方で、世界がコミットした約束を守るために活動している人道組織や支援組織もある、団体間のネットワークを作り、何が起きているのか情報を得て、押し戻されないような支援が必要である、と話されました。木田からは、地道な啓発に加え、現地でロールモデルになる女性の存在があれば、エンパワーされる可能性があると指摘しました。


質疑応答では次のような質問が出ました。

次世代を形成する若者に対してはどうか

木田 支援のニーズは高く、世界の医療団でも10代の若者をヘルスプロモーターとして育成していたが、バングラデシュ政府の取り締まりが厳しくなっているのに加え、家族のなかでの稼ぎ手としての期待から対価を払わないと活動できない状況がある。

勝部さん 木田さんのお話から、若者の巻き込みが難しい複雑な背景を改めて学んだ。ジョイセフでは活動を通して、若い世代が社会を変える重要な役割を担っていることを実感している。国際社会では国際会議に若者に登場してもらい、政策決定の場で若者の声を聞こうという状況が生まれている。未来の担い手としてではなく、「今を担う」ということで発言力が増している。大人世代の責任として若者の発言の場を作ることは重要。



同じ女性の立場で日本からできることは?

木田 生理の貧困やピルの承認など、ロヒンギャ女性が抱えている問題は、日本の女性や世界の女性の問題でもある。私たちの問題であると「自分ごと」として考える。自身の性と生殖の健康や権利を考えることから始まり、ロヒンギャ女性につながっていく。まず自分の意識を高めることが必要。

勝部さん 木田さんのおっしゃる通りだと思う。海外については紛争や災害などニュースに取り上げられて支援が集中するが、復興時や平時も支援は必要で、常にこうした問題がある、ということを思い出してアンテナを張っていただくことが重要。国内の問題については、最近は一般の人々の意見を聞くパブリックコメントの場も設けられている。当事者の声として伝えることが必要で、どういう人たちが発信しているか、政府関係者も見ているので、積極的に関与していってほしい。ジョイセフのメールマガジンやウェブサイト(https://www.joicfp.or.jp/jpn/)でも情報を発信しているので、見ていただきたい



ほかにもさまざまな質問をいただきましたが、時間となり、終了となりました。お答えできなかった質問には個別の回答や、ウェブサイト等での活動報告をもって回答に代えさせていただきます。

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