東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート8

今回は、協働している「相馬広域こころのケアセンターなごみ」の南相馬事務所でこころのケアを担当している落合庸子看護師のレポートをお届けいたします。

東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート8
南相馬事務所では戸別訪問や仮設住宅でのサロン、遺族の会、母子の支援等多様な活動を行っており、その中で私は戸別訪問の支援をさせていただいています。戸別訪問は継続訪問を行っている震災遺族と精神的支援の必要な方160ケースに加え、新たに保健センターや仮設住宅の支援員から依頼されるケースが対象です。

南相馬市は津波と原発の両方の被害を受けています。支援対象者の現在の住まいは、震災前からの自宅、仮設住宅、借り上げ住宅、被災した土地で再建された自宅、新たな土地で再建した自宅と様々です。今後は復興住宅への移行が進み、さらに住環境に違いが出てきます。また、同じ南相馬市内でも帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域等に分けられており、各区域によって今後の帰還の見通しや賠償金に差が見られています。このように個々に状況が違い、この差によって住民間の不満が生じやすく被災地域の中でも課題の多い地域といえます。

「一瞬で50年の努力がなくなってしまった」 
これは訪問した70代のご夫婦の言葉です。このご夫婦は津波で自宅が全壊、長年手入れをしていた田畑も被害にあいました。それだけではなく子供や孫は県外に避難したため、にぎやかに集う時間も失いました。放射線被害の不安から孫が南相馬に遊びに来ることはありません。今後は復興住宅に移る予定ですが、その住宅はまだ着工すらされず入居の見通しは立っていません。

「みんな戻ってこない」
津波で被災した家をリフォームして仮設住宅から戻られた方の言葉です。頑張って元の場所に戻ってきたものの、近所の人は戻らずに孤立した状態となっています。家の周辺は津波被害で更地となり震災前と全く違った景観です。家を元通りにしても震災前の生活は戻ってこないということを自宅に戻ってから実感されています。

私が訪問させていただいたケースも、このようにひとりひとり状況が違い、3年4カ月が経過した今の時期だから生じる不安や悩みがあると感じました。この不安や悩みを解消する手段が見つからないケースが多いですが、定期的に訪問することでほんの少しでも心が軽くなり前を向いていく後押しができたらと考えています。

被災地域での心のケアの終わりは見えません。長期的に支援活動を続けていきたいと思っています。

看護師 落合庸子

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