オンラインイベント「世界難民の日によせて―シリアの現場から―」を開催しました

6月20日(火)、世界難民の日(World Refugee Day)の当日にオンラインイベント「世界難民の日によせて―シリアの現場から―」を開催しました。多くの方々にご関心をお寄せいただき、93名にご参加をいただきました。

イベントでは、はじめに世界の医療団の海外事業プロジェクト・コーディネーターの中嶋が世界の難民の状況や取り巻く課題、また世界の医療団が行っている各国での難民支援について説明。2022年2月に勃発したウクライナ危機以降、世界の難民・避難民・庇護希望者など、故郷を離れざるを得ない人々が1億人を超えているなか、各国で起きている入国阻止や、受入国・地域の疲弊、また、支援資源がひっ迫している状況などをお話ししました。たとえば、ロヒンギャ難民キャンプで難民たちに支給されている食料支援の額はこれまで1人あたり12ドルであったのが、今年3月に10ドルに減り、さらに6月には8ドルに減額となりました。難民たちは今後も減らされてしまうのではないか、という不安のなかで生活していることを伝えました。

次に、今回のイベントのゲストであるPiece of Syria代表理事、中野貴行氏よりシリアの現況と課題、そしてPiece of Syriaの取り組みについてお話をいただきました。Piece of Syriaはシリアの魅力を伝え、「シリアをまた行きたい国にする」という思いのもと、子どもたちに教育を届ける活動を行っていらっしゃいます。これまでに2,600人以上に教育の機会を提供してきたとのことです。2011年の紛争開始後、シリアは国民の56パーセントが難民と国内避難民となりました。教育に関しては、紛争前の就学率は99.6パーセントであったのに対し、今は3分の1の子どもたちが教育の機会を得られていないそうです。そのようななか、Piece of Syriaは子どもたちがよりよい教育を受けて、平和や復興の主体となって未来のシリアを担っていくため、楽しく学び、遊ぶことができる幼稚園や小学校の環境整備、また、教師がお金の心配をせずに仕事を続けられるための支援などを行っているとのことでした。中野氏のお話からは、シリアの魅力をたくさん知ることができました。

その後は、Piece of Syriaの中野氏、世界の医療団の中嶋、そして、この日のもうひとりのゲスト、日本経済新聞の渡辺夏奈氏を迎え、3人でのクロストークの時間を設けました。渡辺氏は国際報道センターの記者で、世界の医療団のトルコ・シリア地震の緊急支援活動について取材をしてくださったこともあります。渡辺氏は、必ず記事になる話題から、記者の問題意識によって記事になる話題があり、たとえば、人道危機についてはウクライナについての報道が多いなかシリアについては少ないという、報道の「格差」について話されました。


日本において、シリアについて伝わりにくさを感じることはありますか?

中野氏 シリアについては国の名前は知っている人が多いと思いますが、ネガティブなイメージを持っている人が多いと感じています。実際に私が体験したエピソードをお話すると「え、そうなの」という驚きをもって聞いてくれることもあり、興味、関心はもっていただきやすい国ではないかと思います。

渡辺氏 トルコ・シリア地震から3ヶ月のときに、世界の医療団のシリア人スタッフに取材して記事を書かせていただきました。それを書いた動機としては、トルコの報道量が多いのに対して、シリアも被害が大きいのに報道が少なく、書かなければいけないなと感じたからです。


今後、取り組みたいことはありますか?

中野氏 今後も活動を続けていくことです。大きく2つあります。支援者の方のなかには「私の1,000円でなにが変わるだろう」と思う方もいらっしゃると思います。私が青年海外協力隊のときにシリアで出会った女の子に、大きくなったら何になりたい?と聞いたら、お金持ちになりたい、と答えました。その子は、お金は天国には持っていけないから、生きているうちにお金持ちになって子どもたちの夢をかなえるための学校を作りたい、私が活動する姿を見てそのように考えるようになったと話しました。小さな活動が未来を変える力になるのかもしれないと思いました。また、もうひとつの取り組みたいことは、シリアの魅力をもっと掘り下げていくことです。シリアがどれだけ壊れてしまったのかを伝えるのではなく、どれだけ楽しい国かということを伝えていきたいです。

渡辺氏 知るだけで終わらせない、ということは私も考えていることです。どうやったらより多くの人が関心を持ってもらえるのか、やり方を模索しつつ、今後も記事を書いていきたいです。

中嶋 医療保健の分野でもそうですが、治療によって、また健康を保つことによって、人々が希望を持てるのだと思います。私たち3人は分野が違いますが、これからも協力し合って活動を続けられたらと思います。

最後に、質疑応答を行いました。事前にいただいていた質問を含め、当日もシリアや難民についてのたくさんの質問をいただきました。予定終了時間を過ぎたにもかかわらず、最後まで関心をお寄せくださった皆さま、ありがとうございました。

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