オンラインイベント「ウクライナ緊急医療支援 活動報告 激戦地ザポリージャの活動を中心に1年を振り返る」を開催しました

5月11日(木)、オンラインイベント「ウクライナ緊急医療支援 活動報告 激戦地ザポリージャの活動を中心に1年を振り返る」を開催しました。当日は、学生、医療従事者、NGO職員など57名の方々にご参加いただきました。

イベントでは、世界の医療団スペインのプロジェクト・マネージャーで、緊急対応のプロフェッショナル、ラファエル・ラグエッセが、現地の状況と世界の医療団の活動について、動画を交えながらお話しました。
今回は、ウクライナにおける世界の医療団の活動のなかでも、戦闘の最前線である南東部ザポリージャでの活動を中心に説明。この地域は紛争により医療施設が破壊されたり、医療従事者が避難したりして、人々が医療にアクセスしにくい状況にあります。このような背景から、世界の医療団は、①医療施設の調査を行い、ニーズを見極めたうえで、②必要な資機材・医薬品を提供しています。そこで非常に困難であったのがそれらの輸送でした。安全を確保しながら慎重に行わなければなりません。また、サプライチェーンが機能不全に陥っているため、物資はウクライナ国外から調達する必要がありました。こうした活動は単純なようではありますが、時間がかかり、非常に骨の折れるものであるとラファエルは話します。ザポリージャでは、17ヶ所の医療施設を通して約5万人を支援することができました。また、具体的なエピソードとして、妊娠5ヶ月のときにわずか700グラムで誕生した赤ちゃんが世界の医療団の支援で提供された保育器で命をつなぐことができたという話の紹介もありました。

ザポリージャのチームリーダーであるダリオはビデオメッセージで次のように現地の状況を話しました。「紛争が始まってから、ザポリージャでは400回以上のミサイル攻撃が行われています。人々は翻弄され、18万人以上が避難し、これには4万8,000人の子どもたちが含まれています。この状況は医療保健サービスにも影響を与えています。ザポリージャの保健当局の予算はひっ迫し、人々のニーズに応えきれていません。私たちは病院や避難シェルターなどから支援の要請を受けます。医療従事者、燃料、医療資機材、医薬品などが不足しているのです。私たちはこれに応えようとしています」



世界の医療団ネットワークが2022年に実施した支援の数


886,313人に医療資機材・医薬品など物資を提供
11,404件の医師・看護師による診療
8,925人にグループカウンセリングを実施
5,998人に個別の心理カウンセリングを提供
329人に助産師によるオンライン相談
153ヶ所の医療施設を支援


ラファエルからの報告のあと、事前に寄せられていた質問を含め、参加者からの質問にラファエルと世界の医療団 日本の中嶋が回答しました。

身体的な傷を負った患者も多いと思いますが、こころに傷を負った患者も多いと思います。そのような患者にはどのようなケアをしていますか?

中嶋 巡回診療車でグループカウンセリングや個別の心理カウンセリングを提供しています。ただ、戦闘地域である東のドンバス地方には入れませんので、オンラインカウンセリングを実施しています。それに加えて昨年4月からはウクライナ全土でヘルプラインを開設しています。幸いウクライナの通信状況は悪くありませんので、そういったことができています。


医療支援の現場、生活はどのような状況でしょうか?

中嶋 問題は高齢者など、逃げられない人々への医療アクセスが断たれているということです。また、紛争の影響が少ないウクライナ西部に多くの人々が逃れますので、西部では平時よりも多くの医療サービスが必要になります。


現地ではどのようなニーズがありますか?具体的に教えてください。

ラファエル 医療施設にニーズ調査をしたところ、医療資機材や医薬品が足りないことが分かりました。また、基盤となる医療従事者が避難しているなかで、残っている医療従事者に研修を行ったり、医療従事者がいないところでは私たちが巡回診療車で直接診療したりしています。
中嶋 現在、ラファエルが所属する世界の医療団スペインと協働して事業を実施していますが、新しく世界の医療団ギリシャとも連携し、破損した医療施設の復旧をする事業も開始しました。こちらについてもあらためてご報告します。


世界の医療団の現地スタッフも危険を感じながら働いていると思います。その原動力はなんでしょうか?

ラファエル ウクライナ人のスタッフにとっては、自分たちががんばらなくては、自分たちが自分の国を助けていくんだというのがモチベーションになっていると思います。彼らを見ていて本当に驚きますし、感銘を受けます。

 
命と向き合う場面も少なくないと思いますが、希望を感じられるエピソードがあれば教えてください。

ラファエル 現地に出張したとき、健康を保つための生活習慣などの啓発に同行しました。そのときに参加者のひとりから直接「ありがとう」と言われました。現地の言葉で言われたので最初は分からなかったのですが、通訳してもらって分かり、それがうれしかったです。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新記事

参加する

世界の医療団は皆様からの寄付・
ボランティアに支えられています。