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トルコ・シリア地震 トルコにおける地震後のニーズ・アセスメント



<日本語訳>

世界の医療団は2016年からトルコのハタイ県で活動しています。国境を越えたシリア北西部における活動の拠点を県都のアンタキヤに置いているため、これによりハタイ県での緊急対応を迅速に行えています。世界の医療団は他の団体とともに、2016年から2019年までハタイ県でシリアからの避難民を対象に、基礎診療、心理社会的支援、身体リハビリテーションサービスを提供しました。移動医療チームは2月6日の夜に被災地に到着し、緊急対応を開始しました。

ハタイ県とアンタキヤはまだアクセスが極めて困難な状況にあります。街の大部分と建物が破壊され、道路を塞いでいおり、完全に破壊された道路もあります。停電しているため、夜間は真っ暗で、寒さも厳しい状況です。私たちスタッフも含め、凍えるような寒さの中で眠っています。現在、市内にはいくつもの避難用テント場が設置されていますが、テントの中でも暖房が必要です。

特にアンタキヤでは人々が広範囲に避難しており、残った住民はトルコ災害緊急事態対策庁(AFAD)が管理する指定のテント場に移転しています。過剰に積もった粉塵は市民の健康を脅かすほどになっています。しかし、他の地区の住民は自宅に留まることを希望しています。ただ、余震が続いているため、人々はトラウマを抱え続けています。また、水源の汚染は感染症の大きなリスクとなっています。

移動医療チームはすでにアンタキヤなどを含むハタイ県を拠点に活動しています。最も弱い立場にあり、支援が届きにくい人々にサービスを提供しています。

現在、世界の医療団は応急処置対応、健康診断、薬の配布、トラウマに対する心理的応急処置を実施しており、心理的に安全な空間作りを行っている最中です。

移動医療チームは、ハタイ県の都市部と農村部で、健康相談や心理サービスを提供しています。各チームは、医師、助産師、臨床心理士、看護師、ケースワーカー、心理社会的支援担当者、保護担当者で構成されています。これらの移動チームは、政府機関や他の援助団体がサービスを提供できない地域で、テントを回って支援を提供しています。適切な支援のため、他の団体を紹介することもあります。

世界の医療団はまた水衛生施設や主に女性や子どもたちが立ち寄り、個人とグループのカウンセリングを受け、洗濯室やシャワーを使い、食料を受け取ることができる安全なスペースを設置しました。世界の医療団のチームは、情報セッションや感染症を予防するためのキットを提供しています。

世界の医療団はアンタキヤ、デフネ、サマンダーの10以上の地区で、77人の被災者にインタビューを行いました。うち75%は女性で、25%は男性です。回答者の74%は成人(18歳~50歳)、26%は高齢者です。


トルコ・シリア地震
©MdM Türkiye


インタビュー結果


シェルター、暖房、冬服へのアクセス


住まいの支援はほとんどなく、回答者の38%が近所の屋外で、11%が車内で、さらに11%が家の庭で生活しています。テントで生活している人は23%で、個人所有のコンテナで生活している人が1人います。また、暖房の必要性も非常に高いとほぼすべての回答者が表明しています。夜間はマイナス10度まで気温が下がるので冬服の必要性も大きいです。


精神衛生と心理社会的支援


回答者の35%が少なくとも一人の家族が死亡し、45%が救助を待っている家族がいると答え、死者の数が多いことから、地震の影響はかなり大きなものです。対象者には若者や子どもは含まれていませんが、ほぼすべての回答者が、子どもたちのための心理社会的ケアや子どもに優しい空間の必要性を訴えています。

また、かなりの割合の人々がトラウマによる心理的苦痛やショックの症状を訴えています。彼らには孤立したり、逆に一人でいることを避けたり、涙を流したり、怒りや焦りを感じたりする傾向があることが報告されています。すべての回答者が食欲の変化、96%が睡眠パターンの変化を述べています。また、悪夢を見ることは93%が報告し、91%が身体的症状を挙げています。


衛生


住まいに関してと同様、被災地では非食料物資の必要性も非常に高いです。衛生用品の不足、ポータブルトイレ、がれきの下に遺体が残っている状況は公衆衛生に大きなリスクをもたらしています。下痢や皮膚病の発生が少数ながら報告されています。非食料物資の提供を受けたと回答した人はほとんどいませんでした。


利用可能な支援に関する情報提供、既存の支援と連携した支援の必要性


もう一つの重要なニーズは既存の支援に関する情報です。このニーズが満たされていると回答した人は皆無でした。同様に、利用可能な支援へのアクセスための支援も必要であり、79%が関連支援を受けたことがないと回答しています。


医療サービス・医薬品


アンタキヤの病院も損傷しています。世界の医療団がAFADなどの他団体と協働して得た情報によると、ハタイ教育研究病院は部分的に稼働しており、ニーズ調査が続けられています。国際的な支援でアンタキヤに72床の病院が設立されましたが、人々による一次・二次レベルの医療サービス利用は深刻な影響を受けており、このことは回答者からも確認されています。医療サービスへのアクセスや投薬の必要性が満たされていないと回答した人の割合は、それぞれ44%と42%でした。また、41%の人がニーズは満たされているが、その程度が低いと回答しています。




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