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パレスチナ自治区 ガザ・ヨルダン川西岸

占領と封鎖のなかで


map 1967年の第三次中東戦争以降、イスラエルの軍事占領下に置かれているパレスチナ・ガザ地区とヨルダン川西岸地区。50年以上が経過する今も占領は続いています。
ガザ地区は、2007年からイスラエルによって陸海空を封鎖されており、周囲を壁やフェンスで囲まれ、「天井のない監獄」と呼ばれています。また、種子島と同じほどの面積に約200万人が暮らす、世界で最も人口密度が高い地域のひとつです。人口の半数以上が難民であり、3分の1の人々が極度の貧困状態にあります。
ヨルダン川西岸地区にはイスラエルの入植地が存在します。占領地に入植地を建設することは国際法では違反とされています。近年増加していく入植者たちによる暴力行為―ブルドーザーや爆弾で民家を破壊、オリーブなどの農作物を荒らし、金品を奪い、民間人を暴行する―。日常の一部となったこのような状況に、人々は強いストレスを受けています。

このプロジェクトを支援する

*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。


ひっ迫する医療


ガザ地区内では医療施設、救急車などが攻撃の対象となり、十分に機能していません。専門的な知識を持つ医療従事者は少なく、封鎖によって必要な医薬品や医療機器も足りません。頻発する停電によって医療機器が使えなくなることもしばしばです。稼働している医療施設には患者が絶えることなく訪れ、緊急を要さない手術を受けるには、平均して16ヶ月も待たなければいけません。疾患を抱えている人のなかには、ガザでは受けられない治療を必要としている人もいますが、外国で治療を受ける人に与えられる出国許可の件数は徐々に減少。2018年には、52人が出国を待っている間に死亡しました。新型コロナウイルスの流行によって規制はさらに厳しくなり、現在は緊急のケースの一部しかガザ地区から出ることが許可されていません。


こころのケアの空白


緊迫した状態が絶えず続くなかで、こころの安定を保つことは非常に困難です。人々は不安や睡眠障害を抱えていたり、子どもは幼児退行、学業の遅れや社会的スキルの発達に影響がみられたりします。ある地域を対象に行った調査※によると、性別や世代を問わず、多くの人々に集中力の低下、フラッシュバック、記憶喪失を含む認知障害といった症状が見られました。しかし、このような不調がある人のうち、こころのケアを受けた人は約30パーセントしかいませんでした。自分の感情を話すことへの羞恥心を持つ人が多いこと、また、膨大なニーズがあるのにも関わらず、こころのケアを提供できる医療体制が整っていないことがアクセスを阻む原因です。

※世界の医療団とAIDA(Association of International Development Agencies)による調査「NO PEACE OF MIND(2022年)」

 

ヨルダン川西岸アル・ジフトリック町の女性の話
私は入植者たちの破壊行為に強い怒りを覚えます。子どもたちの目の前で起こっているのですから。朝の礼拝のときに涙が流れてきたこともあります。疲れていますし、悲しいです。ずっと恐怖のなかで生きたからか、私はいつも「ほかの誰か」に自分を置き換えています。なんという人生なのでしょう。きっと呪われているのでしょう。



Palestine
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破壊されたガザの街並み



PALESTINE GAZA MDM
©Olivier-Papegnies-Collectif-Huma

パレスチナとエルサレムを隔てる壁



世界の医療団の活動


世界の医療団は1999年、ヨルダン川西岸地区で心理社会的支援を開始。現在は地域、内容を拡大して活動を行っています。

ガザ地区

緊急事態に備え、迅速かつ的確な医療を提供できるよう準備しています。現地の医療従事者に救急医療の特別なトレーニングを提供することで、地域の医療体制を強化しています。

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ヨルダン川西岸地区

北部ナブルスとヨルダン渓谷北部で、イスラエル軍や入植者の暴力によってこころのケアが必要な人々に心理社会的支援を提供しています。医療従事者には、人々が抱える精神的な疾患を正しく診断するためのトレーニングを行っています。
世界の医療団の心理社会的支援は、グループディスカッションに力を入れています。実際に被害に遭った人や恐怖を抱えている人が集まり、経験を共有することは、精神的な回復力を高め、ストレスをうまくコントロールする助けになるのです。



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人々の証言


もし家族と一緒に逃げられるのなら、そうしたい
―ヨルダン川西岸地区ブリン村の女性


怖い夢をみます。寝ている間に家を壊されるんじゃないかって心配になるんです
―ヨルダン川西岸アン・ヌワイマ村の少女


2020年12月、イスラエル軍がブルドーザーでやってきた。私たちは頭に銃を突きつけられ、すべての金品を奪われた
―ヨルダン川西岸アン・ヌワイマ村の高齢男性


私はただ安全を感じたいんだ。でもヨルダン川西岸の北から南までそんな場所はない。どこが安全か教えてくれ
―ヨルダン川西岸アル・ジフトリック町の高齢男性




< ご支援はこちらから >

先の見えない占領と封鎖のなかで、医療支援が必要とされている状態が続いています。
ぜひ皆さまの力をお貸しください。

*世界の医療団へのご寄付では、所得控除または税額控除の寄付金控除が受けられます。
*世界の医療団は、受け取った寄附金を特定の支援プロジェクトのみに充てることなく、
頂戴した寄附の総額を支援活動全体に分配することを原則としています。

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