東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート4

今回は、福島県相双地区(南相馬市、相馬市、新地町)で世界の医療団から派遣している臨床心理士のレポートをお届けいたします。

協働している「相馬広域こころのケアセンターなごみ」が毎月2回、相馬市保健センターで、土曜開催している”ちょっと一休みの会”は、震災以降、家に閉じこもりがちになっている地域住民の方が外に出かけたり、心配や相談の機会のために作られた会です。

東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート4
“ちょっと一休みの会”は、何か相談したいことがあれば相談もでき、保育士がいるので子供たちが遊ぶこともできる場となっている。私は月に1回参加しているので定期的に来られる親子と会う事ができる。最初の頃はなかなかお母さんのそばから離れる事が出来なかった幼児が、楽しそうにお母さんから離れて遊ぶ事ができるようになったり、成長ぶりが目に見えて分り、うれしく思う事が多い。

活動は午前中のおよそ2時間で、おやつの時間、体操の時間、絵本の時間などプログラムがゆるやかに決められている。季節に合わせて工作が行われる事もあるのだが、簡単にできるようにある程度スタッフの方で作られていて、短時間で持って帰れる物を作る事ができる。

私自身が参加していてとても楽しい気持ちになる活動であるのだが、遊びを一緒にしていながらふと感じる事がある。
ボールプールというのがあり、幼児用のプールにボールをたくさん入れてその中で遊ぶものである。子供も大人も楽しそうにその中に入っていき、ボールをかき混ぜて泳ぐ真似をしてみたりする。3.11の震災以前だったら私はそのプールを揺らしてみたり、ボールを波に見立てて「波だ。波だ。」と子供たちに声がけをしていたかもしれない。揺さぶったりすると子供たちが喜ぶのでそのような遊びをしていたと思う。けれどこの活動ではできない。

この遊びの場面になると私が意識をしすぎる事がある。遊んでいるうちについ、私が「波だ。波だ。」と言ってしまったらと心配になってしまうからだ。何故こんなに意識してしまうのかと考えたのだが、子供たちと遊んではいるが、直接まだ地震の時の体験を聞いたりしていないからかも知れない。

そんな中、活動中地震が起こったことがあった。震度3ではあったが、縦揺れで大きな音がして私は怖かった。地域の方はかなり冷静で、「3.11を経験したのでこんなの大したことない。」と言われていた。地震が落ち着いた後は地震が関東でも起こった時に気をつける事をアドバイスしてくれたりした。その人ご自身の家は全壊してしまったのに、ボランティアを気遣う様子が見られた。この方だけではなく、この活動を通じて感じることだが、自分が大変な時にでも他者を気遣える人が多く存在する。

そのような気持ちの源になるものはなんなのだろうととても知りたくなる。するとしばらくして幼児の一人が「フレー!フレー!」と言い出した。少し離れたところにいたので、なぜその言葉を言ったのかはすぐ理解できず、地震だったが気にせず、運動会の練習でもしているのかと思ったが、地震が起こりその幼児は「怖い」と言ったようで、すぐに「そうだ!フレー!フレー!」と声を出したのだと分かった。「地震の怖さに勝つための自分なりの掛け声だったようだ」とスタッフの方が言っていたが、幼児は幼児なりに地震に対処しようとしているのだと理解した。「フレー!フレー!」の言葉は今も私の耳に妙に残っている。子供たちが体験した3.11の記憶は活動を通じながら少しずつ理解し、今後の支援に活かしていきたいと思っている。

佐藤 綾子(臨床心理士)


東日本大震災:福島そうそう現地医療活動レポート4

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