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ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3

2013年3月11日~22日、駐在看護師を日本からサポートしている小児科医早川依里子氏がラオスを訪問した。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3
ラオスでは医師不足解消のための人材育成と看護教育の一貫性を担保する取り組みが始まっているが、その成果はもう少し先に見えてくることである。当面は、少数ながら医師が勤務する病院を除けば、大半のヘルスセンターの主たる担い手は医師ではなく看護師やその他のスタッフである。医師不在の施設で彼らに期待される役割は診断・処方におよぶ一方で、限られた専門教育しか受けることができなかったスタッフたちは、限られた医療資源しかない現場で常に悩みながら診療を行っている。彼らがどんなことに対してどのように悩んでいるのかを理解できれば、より実践にいかせる指導を行っていくことが可能になると考える。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3
従って、日頃よりMDM駐在看護師やラオス人ヘルススタッフは、現地の実情を把握し真のニーズをくみ取るため、粘り強いリサーチに取り組んでいる。さらに、早川医師自らが渡航する機会には、小児科医という別の視点をもってヘルスセンターを視察、郡病院でも医師同士の意見交換・情報収集もおこなった上で研修内容を調整する。

世界の医療団日本が企画する研修の参加者は、受けてきた教育レベルや時期が異なる病院スタッフとヘルスセンタースタッフであり、期待される役割と知識のギャップも今は大きい。さらに、対象となる2郡では5歳未満児の診療・健診の無償化を導入したことにより、ヘルスセンターや病院を受診する小児は徐々に増えてくると考えられ、今後、スタッフたちがより幅広い小児疾患を経験する可能性が考えられる。こういった背景も研修を構成するうえで工夫を要する点である。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3
様々な情報を考慮して、初回に当たる今回の研修では、午前中を座学にあて、様々な一般的小児疾患を紹介した。多くの異なる疾患の存在を知ることにより鑑別診断(*)の重要性を理解し、そのための問診、診察のプロセスの大切さを伝えることを目的とした。
午後は実践への応用を考え、世界の医療団スタッフによる診療の実演を行った後、参加者をグループに分けてロールプレイ学習を行った。

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3
研修を行うこと自体も、今後よりテーマを絞ったトレーニングを企画していくうえでの様々な情報収集の場となった。研修内容が実践に活かされているか、また各施設で参加できなかった他のスタッフに伝達共有がなされているかを確認しながら、フォローアップ研修も行いつつ、次回トレーニング計画にも早速着手していくことになる。

(*)鑑別診断:よく似た病気を区別して診断すること

ラオス小児医療プロジェクト:現地活動レポート3

早川医師からの言葉

小児科の説明をするとき、「こどもは大人のミニチュアではない」という言葉をよく引用します。小児の特徴はまず「発育する」ことです。そして「発育する」ことは「変化する」ことです。私は亡き恩師から「小児は点と点でなく、線で診なければいけない」と教えられました。発育は継続的であり、ある時点だけでとらえるのではなく、経過を追うことが大切です。またそれぞれの過程で健康上問題となることも異なります。

そういった小児の特徴を理解したうえでこどもを診ることが重要であると伝えること、それがラオスにおける小児医療のボトムアップに繋がります。こどもが持っている「生きていく力」を積極的にサポートし、人生の流れの基本となるところにいるこどもの将来を考えて医療を行うことの大切さを伝えていけたらと思っています。

写真

1)ムンラパモク郡Kadanhヘルスセンターで聴診するヘルスセンターのスタッフ(右側)とヘルスセンターを巡回しながら監督に当たるMdMJのメディカルオフィサー(左側)

2)診断についてディスカッション中

3)4)スクマ郡での研修 人形を使った口腔内の診察指導

5)ムンラパモク郡での研修 午後のグループワーク

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