ASEANはこれ以上の”ロヒンギャ難民ボート危機”を回避せよ

ロヒンギャ難民を支援する16の人道支援団体は、難民が保護され、約200名のロヒンギャが海上で命を落とした一連の遭難事故「ボート危機」が繰り返されることのないよう、11月12日~15日に開催される第37回ASEAN首脳会議にて、あらゆる手立てが講じられることを要請します。モンスーン期が終わり、「航海」の季節が近づいています。男女、子どもも含めた多くが、命がけの危険な「航海」を再開することになるでしょう。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2020年1月以降、少なくとも2,400人の難民がアンダマン海とベンガル湾で船に乗り込みました。難民の3分の1以上(36%)を占めているのは、子どもたちです。そして、その多くがバングラデシュの難民キャンプから逃れたロヒンギャであり、彼らは人身売買の犠牲者であり、過去にはミャンマーでの暴力と迫害から逃れてきた人々です。ボートは粗末なもので、食料や水が不足し、もちろん治療も受けることができない状況であったことに加え、生存者からは船内での人身売買業者による暴力や虐待の報告もなされています。約200人が海で死亡または行方不明になったと、UNHCRが発表しています。

今年に入って、難民を乗せた船の多くがマレーシア、タイなどでの上陸を拒否され、洋上を漂流する事態が発生しています。これは国際人権法、人道法、海事法にも違反する、非人道的行為です。さらには、難民の保護を掲げたASEANの公約、そして「ノン・ルフールマンの原則」にも反しています。幸いなことに、無事に上陸し、保護されたケースもありました。インドネシアでは、7ヶ月近く洋上を漂流していた297人が乗る船が、アチェの漁師たちによって救助されました。政府が遭難者を救助すれば、人道支援団体は当局を支援します。

「航海」シーズンの到来に備え、ボート難民である脆弱な立場にある人々を保護するために、ASEAN加盟国は、包括的かつ協調的な対策を喫緊に講じる必要があります。難民の保護と受け入れ態勢を整えるべく、行政当局、関係機関の地域間の連携強化を図るとともに、2010年のASEAN「海上遭難者及び船舶の捜索救助協力に関する宣言」でも掲げられた「遭難者の捜索・救助と安全な上陸」を保障しなくてはなりません。また、2016年に設立された東南アジアにおける非正規移民保護のための「ASEAN緊急人道・救援信託基金」から適切な資源を投入し、活用することを求めます。

マレーシア、インドネシア、ミャンマー、タイは、密輸・人身取引など国境を越える犯罪に対する地域協力の枠組み「バリ・プロセス」参加国であり、この協定は海上遭難者に対しても安全な上陸を促す地域間連携の取り組みであると認識します。難民危機への共同対応について、関係国が一同に会し議論するために、「バリ・プロセス」の協議メカニズムとタスクフォースを有効活用することを要請します。

関係諸国は、難民に対し海上の国境を開放すべきで、いかなる状況下でも人命が危険にさらされる可能性のある船の上陸拒否を行ってはなりません。難民や移民を含む遭難者の保護と支援を提供するため、海洋法を遵守した対応が速やかに行われるよう沿岸警備隊などの関係機関への周知徹底を要請します。各国政府がUNHCRを含む人道支援機関・団体による上陸した難民への十分かつ持続的な人道支援アクセスを確保し、提供することも極めて重要です。

最後に、ロヒンギャ難民危機は元来ミャンマーに起因するものではありますが、ASEAN加盟国の指導者は包括的かつ国際的対応が必要とされている現状を認識しなければなりません。第37回ASEAN首脳会議では、「ボート危機」の根本的要因に対処することを焦点にした明確な対策が講じられなければなりません。長年続くロヒンギャへの差別に終止符を打つためのミャンマー政府とのより率直な対話を含め、ラカイン州諮問委員会による是正勧告と提言を真摯に捉え実施することが望まれます。また、大量流出の発端となった2017年および過去そして現在も続くロヒンギャへの迫害と暴力の犯罪責任を裁く国際裁判への協力をミャンマー政府に訴えます。

署名団体:
ActionAid
CARE
International Rescue Committee
Lutheran World Federation
Médecins du Monde France
Médecins du Monde Japan
Médecins du Monde Switzerland
MOAS
NONGOR
Norwegian Refugee Council
Oxfam
People in Need Myanmar
Plan International
Save the Children
Solidarités International
World Vision International


*本プレスリリースは2020年11月10日に国連人道問題調整事務所(United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (UNOCHA))が発表したプレスリリースを意訳したものです。日本語訳と発行については発行元より承認を得ておりますが、翻訳の正確さに責任を負いません。
原文:https://reliefweb.int/report/myanmar/asean-must-prevent-another-rohingya-boat-crisis



本会議に参加する日本政府に対しても、「ボート危機」に対し協調性と連帯のもと難民の保護を行うこと、またロヒンギャ問題に関し、ASEAN全体としてのミャンマー政府との対話を積極的に働きかけることを要請します。

認定NPO法人世界の医療団
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン

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