©Maho Harada

形成外科医 與座聰 インタビュー

続けていることが自分ではとても意外で、嬉しいことの一つ
1996年ルワンダミッション以来、スマイル作戦に継続的にご協力くださっている形成外科医 與座聰へのインタビュー全文です。

形成外科医 與座聰 インタビュー
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世界の医療団のスマイル作戦にご協力いただけることになった最初の契機は何だったのでしょうか。
きっかけは、形成外科の研修医のころNYでの経験になります。教授を初めとして医師の多くが、近くの市民病院に出向きHIV患者の手術を行っている現場を見ました。リスクの回避はもちろん自己責任ですし、手術費用を貰うわけではありません。アメリカでは、医療とは技術の修練だけではなく社会への還元という面が大きい事を知らされ、新鮮に感じました。

帰国後、紹介されたアメリカの医療ボランティア団体の要請で、フィリピン・ミンダナオ島のミッションに参加しました。医療器具、材料、食事すべてにおいて用意されていて、最初に想像していたより、とても安全で快適でした。反面、そんなものだろうかという疑問もありましたが。

その年の暮れに、ちょうど日本人形成外科医の参加を希望していた世界の医療団より、勤務していた病院を通して世界の医療団の「スマイル作戦」の紹介と参加要請がありました。それを受けたのがきっかけです。

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一番初めのスマイル作戦で印象に残っていることは何でしょうか。
「設備の乏しい場所で手術を主とした医療活動はどこまでできるのか」
1996年 冬、ルワンダに派遣されました。総勢5人。日本人は私だけでした。私にとって最初の「スマイル作戦」です。内戦から2年経過していましたが、ゲリラ戦が首都キガリで再燃したという新聞の記事がありました。パリ経由で到着したキガリの国際空港は、ロビーの窓ガラスがことごとく割られ、建物には銃弾の痕が無数に残っていました。宿泊場所となる世界の医療団の施設は襲撃を避けるためか、市内から離れた町の高台にあり、銃で武装した民兵が玄関を守っていました。舗装された道路は少なく、街灯もない真っ暗な町でした。手術は到着して2日目から始まりました。顔に内戦で受けた傷や、ひどい火傷の痕が目立ちました。どれも致命傷を免れたものの、強い機能障害に陥った状態です。十分な手術器具もなく、包帯やガーゼも不足がちでした。おのずと対症療法の手術が多くなりましたが、それでも生きながらえさせるためには最良の手段であったと思います。手術はおおむね午後9時頃に終わるのですが、人手が無いので手術器具の消毒や洗浄を手伝い、宿舎に戻るのは11時過ぎることも度々ありました。皆で、作り置きのシチューを温めて遅い夕食を済まし、ほとんど泥水のようなシャワーに入ると、あっという間に眠ってしまいました。毎日が手術に費やされ、病院と宿舎の往復で1日が終わるタフなミッションでしたが、現地に融和するフランス式のボランティアに納得していく自分を感じました。

興味深かったのは、2つの部族が銃を持って争っていても、正午になると国旗が上げられ街行く市民は立ち止まり国家斉唱をする。このような状況でも愛国心が強い事が驚きでした。


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1999年にご参加 くださった当時と現在では、スマイル作戦へのニーズが変化していると感じられることは何かありますか。
「スマイル作戦」の最終目的は患者の満足にあります。そこが他のボランティアとの大きな違いといえます。つまり結果が悪ければ手術の数は、評価となりません。しかも対象となる部位が顔や手足となるので、結果の判断は素人でも容易にできます。医療ボランティアの多くが公衆衛生や予防医学にシフトしていくのは医師の技術に頼らずたくさんの患者が助けられるからで、当然の成り行きだと思います。では「スマイル作戦」は必要とされないのか。むしろ個人と深く関わる手術ミッションはより必要性を増していると思っています。家族の誰かが生まれつきの、あるいは事故や紛争で障害をきたし、口に出せない深い苦悩を持ちながら社会生活を続けていく。これは見ていてつらいものです。特に途上国では生命に関わる疾患の治療が最優先されるので、外見の治療は顧みられない。だからこそ生きる質を高められる手術が必要と思っています。普通であることが財産なのです。一人の患者が満足することで、親しい者たちが、さらには周りのみんなが心から喜んでくれる。数字には決して出せないけど、溢れるほどの感謝の気持ちを感じとる事ができます。そして、そのような状況を体験して、現地の若い医師達が形成外科に興味を抱き、我々のミッションを引き継いでくれたらと願っています。


形成外科医 與座聰 インタビュー
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これまでスマイル作戦にご参加いただいている長年のご経験の中で、一番嬉しかったことについて教えていただけませんか。
同じ釜の飯の仲間達; フランス人の医師達、ミッションに興味を持って過酷な状況でも毎年参加してくれる日本人の医師達との出会いでしょうか。手術に関しては設備の乏しい場所がほとんどなので、うまくいったという満足感より無事に終わったという安堵感が主です。うれしいと言うよりほっとする感じ。

「スマイル作戦」の患者たちは貧しく、教育を受ける機会の少ない方が多いのですが、態度やしぐさの端々に心の豊かさ、真摯さを感じることが多々あります。教育と教養は別なのですね。教養の有る人になりたいです。あ、今からでは遅いか。いずれにしても結果をだしてこそのミッションなので、スタッフも目一杯働いてくれます。特に女性の看護師さんたちはタフで優しくて、恐くて頼りがいがあります。技術と知識と経験をすりあわせ、それを新人に伝えていく。そこに組織としての医療ボランティアの良さを感受することが出来ます。ルワンダのミッションでは正直、辞めようかと思ったのも事実ですが、その後16年も続けていることが自分ではとても意外で、嬉しいことの一つでしょうか。それはきっと共感してくれる人たち、実際にミッションに参加しなくともねぎらってくれる人たちがいたからでしょうね。


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スマイル作戦とは?

先天的、あるいは戦争、事故、病気など後天的に顔面や身体に奇形や損傷を追いながらも手術を受けることができない患者たちに手術を施す形成外科のプロジェクトです。患者の多くは、奇形や損傷による機能的な不具合だけでなく、古い信仰や通説、偏見によって社会から疎外された孤独な生活を余儀なくされています。世界の医療団は、患者に手術を実施することにより、奇形や損傷を修復するだけでなく、彼らの顔に笑顔が戻り、更には人間としての尊厳と誇りを回復し、社会へ溶け込み新たに生きていくことを願い「スマイル作戦」と命名しました。また、手術を直接行うだけではなく、現地の医療スタッフへの技術の移転、育成も目的の一つに掲げています。
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