東日本大震災:現地医療活動レポート19

地域の自立とは


東日本大震災:現地医療活動レポート19
世界の医療団の活動は、地域にある力の回復のお手伝いである。
そのために、一つ一つの診療や相談、運動・リラクセーションの会を活動のコアにしながら、’セルフケア’のコンセプトと方法が地域の人々に残ることを最終目標としている。
現場に入るたびに、震災に関係する記憶、震災に関係ない人生経験、強い気持ちや好奇心に触れる。それらを今後のまちづくりにどう活かしていくかを一緒に考える活動。
大槌町はもとあった生活に戻るにはあまりにも被害が大きかった。だからこそ、地域の中で不足しているならば、いち資源として、地域から出てきたアイデアの実現をお手伝いする。目指すところは未知の大槌。皆さんの心にあり続けるだろう以前の大槌を大切に受け止めながらも、無理に震災以前の「もとどおり」をゴールにはしない。
運動チーム活動が2012年に入り本格化、一時的な資源を地域の資源に変えていくために何にはたらきかけていくのかを自問しながらの半年であった。

今回は、1月から4月にかけて運動チームが感じてきたことを日記風にお届けします。

東日本大震災:現地医療活動レポート19

2012年2月3~5日


今回は徐々にではあるが、参加者が増えてきているように思われた。共同実施団体の大槌町社会福祉協議会の皆さんの声掛けに依るところが大きい。運動中も社協の方々との連携ができてきたような手応えを感じた。また、今回は試験的に運動班を二手に分け、遠野まごころネットのお茶っこでも運動を実施した。今後もこのような方法により、活動場所を増やせるかもしれない。これからも多くの方々に運動による心身両面の効果を実感してもらいつつ、運動が地域に根付くよう、試行錯誤しながら活動したい。

2012 年2 月17~19 日


支援が本当に必要な人達に届いているだろうか、という疑問を持ちながらも、自分たちの限りある能力と資源の中で出来ることを続けている。今回は、ある地区の住民の方々からの要望で教室を実施することができた。他地区からも、同様の要望が出ているとのことで、徐々に活動が広がりつつあると感じる。また、運動教室を主催していただいている社協の方々が、運動指導面もサポートしてくださることが増えてきて心強い。今後も常に試行錯誤しながら、少しでも多くの方々に、少しでも自立に繋がるような支援を届けていきたい。

2012年3月9~10日


今回はいつも活動を共にして頂いている社協の相談員さん達を対象に、ボールの使い方講習の場を設定できた。その中で、ある相談員さんが「ボールの新しい使い方を発見した」と声をかけてくれた。相談員さんが自分で試行錯誤してくれたことは、とても嬉しかった。運動チームは、運動を心のケアに役立ててもらうと同時に、それが少しでも自立につながればと願っている。我々の支援活動が自立に繋がっているのかどうか、常に気にかけてきたが、少しホッとした。今後も気を抜かず、でも小さな喜びを共有しながら支援を続けたい。

2012 年3 月23~25 日


初めて外でウォーキングを行うことができた。高台のお地蔵様にお参りして記念撮影をした。皆さんすがすがしい表情であった。これまでは寒さと、「変わってしまった街を見たくない」という声(を他の地区できいたため)に配慮して屋内の活動を中心としていた。部屋から出たくない、その気持ちを受け止めながらも、これからは少しずつ外に出て、新鮮な空気を吸っていただく機会も作っていきたい。<br> また今回は、将来的には住民が主体となって運動の場がつくられていくことが理想的だという話を、一部の社協スタッフと共有することができた。また、一部の地域では、声掛けや運動の場の設定をするリーダー的存在を養成して欲しいと言う声も出ている。これからも対話を続け、運動の推進だけでなく街のコミュニティーづくりの良い形を模索していきたい。

4月6~8日


今週は3名のスタッフ(うち2名は岩手県在住)が新たに参加しました。今後、住民の中に運動を根付かせるために、様々な方に関わって頂けたらと考えています。住民が自分たちで自分たちの心身のケアができるようになるために、何をすべきで、何をすべきでないのか、指導者それぞれが個性を発揮しながらコンセプトを共有して支援に当たれたらと思います。
また、現地に近い地域に住むスタッフは、やはり住民の心情を良く理解されていると感じました。被災地から遠い立場、近い立場、それぞれの視点からアイデアを出し合えたら、今後の活動にとってプラスになると感じました。

世界の医療団 運動チーム
泉水 宏臣・甲斐 裕子
(財)明治安田厚生事業団 体力医学研究所 研究員

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