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ラオス小児医療強化プロジェクト:現地活動(村落健康教育活動)レポート Vol. 2-2

2017年10月に第1回目のVHC(村落健康普及委員会)研修を開始してからもうすぐ2年が経ちます。

2017年の振り返りでは、VHCメンバーが自分たちの役割を自覚し、それぞれの村落でその役割を遂行していくモチベーションが欠けていると思える言動が見受けられました。VHCは各村の住民から選ばれたメンバーで構成する機関であり、村人に一番近い健康活動執行機関にあたります。しかし、現状はVHC責務の遂行業務は無給に等しく、村長などその他の役職との兼業、家庭や農業との両立は容易ではありませんでした。
そこで、2018年は2017年からのVHCへの研修を継続しながら、VHC活動を構造として支えられるよう県・郡保健局との話し合いを進めました。また、VHCの責務を明文化した覚書を作成、VHC研修中に郡保健局・村落グループ長(複数の村を管轄する)・村長・ヘルスセンター・VHCメンバーの間でこの覚書への署名式を行いました。
VHC一人一人の生活を考えたサポートには及びませんが、これによって、VHCが一つのユニットとしてより強く認識され、任命された役割を協力し果たしていく意識づけになりました。また、その他のプロジェクトにも携わるVHCの負担を少しでも軽くするため、MdM事業以外での健康関連プロジェクトなど、類似の活動についても情報を整理し、なるべくMdMとその他プロジェクト活動内容が重複しないよう、常に情報を更新するようにしています。

そして2019年、県・郡保健局と2年間を振り返りました。その結果、3回目のVHC研修は、各VHCが自分たちの村で行う活動をアクションプランに落とすということを目標としました。

ワークショップ形式で実施した今回のVHC研修では、各村での健康に関する問題点を話し合い、その結果どういった現状に直面しているのかを話し合いました。さらに、問題の根源を掘り下げ、その問題を解決するにはどのようにアプローチしていくのか?というステップを踏むことで、考察を深め、村ごとにVHCのアクションプランをまとめていきました。

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ワークショップも2日目になると、室内の壁が模造紙でいっぱいになってきました


例えば、ある村では高齢者層が伝統的風習を優先し、若い母親や父親が子どもを病院に連れていく行為を抑制する傾向がありました。今回、策定されたアクションプランには、権威者を含めた村の高齢層に働きかける健康集会の実施が含まれています。

ラオス小児医療強化プロジェクト 自分たちで問題と解決策を考案する、目に見える形でプラン化する、こういった参加型手法は新しくはありませんが、参加したVHCメンバーや郡保健局スタッフには新鮮だったようで、Problem treeとしてまとめられた模造紙を大事そうに持ち帰るVHCメンバーの姿が印象的でした。
全てのVHC研修を終えたあと、全ヘルスセンター、郡保健局スタッフ、そしてMdMスタッフで会合を持ち、VHC研修の結果を考察し、各VHCがアクションプランを推進していくために必要なサポートを話し合いました。

また、ヘルスセンターや郡保健局へのサポートの要望があります。具体的にいつどのような形でヘルスセンターがVHCと連絡を取り、要望に応え、進展を把握するのかなどを検討しました。
2018年のもう一つの反省として、VHCに一番近い相談役であるはずのヘルスセンターが、VHCの活動をモニターするという仕組みが明確でないことも挙げられました。VHCを直接的にサポートしながら村民の状況を把握することは、一見楽なようにも思えますが実際は容易ではありません。VHCを待つ、VHCの活動を促す、などの間接的な作業がはいるためです。
更には、定期的に村を訪問するヘルスセンタースタッフが、同じヘルスセンターのスタッフと、時に同じ村落の健康情報について全く異なる見解を持っていることさえありました。それほどに情報の扱いとは難しいことなのです。
2019年はこういった点も考慮しながら、VHC研修・モニタリングを通じてヘルスセンターがより村落の状況を正確に把握し、VHCによる村落健康普及活動に長期的に関与を深めていくことを目指しています。

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ヘルスセンタースタッフ(ペンを持つ男性)もVHCのワークに真剣に参加しています(VHC研修時)



*本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。

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