G20を極度の貧困状態にある人々への医療費無料化への契機に

G20を極度の貧困状態にある人々への医療費無料化への契機に

就業や雇用をテーマとするG20サミットの会合の開催と、社会保障のための国際委員会(委員長:チリ共和国のミシェル・バチェレ氏)の今年度のレポート発表を前に、世界の医療団は2005年に始まったニジェールにおける医療費無料化政策についての調査書を公開した。この調査では、医療無料化政策の正当性や、この政策の与える貧困状態にある人々の健康状態へのプラスの効果があらためて明らかにされた。一方で調査書は、医療無料化政策は長期的に取られなければ有効ではないことも指摘しており、フランスがホスト国である今回のG20での各国の取り組みが求められている。

世界中の数百万人の人々にとって、医療費を支払いの義務付けは、治療を受ける際の不公平を生みだす主要因となっている。毎年、1億人以上の人々が医療費の無理な捻出のために貧困状態へと陥っている。彼らの中の数百万人の人々は、経済力がないために治療を受けること自体をあきらめている。

こういった状況を受けて、ここ5年間の間、歳入が少なく貧困状態にある国々には、保健に関する社会保障のシステムを導入することが要求されている。この方針の実施のために、極度の貧困状況にある人々に対する基礎医療保健の医療無料化政策を実施した国々もある。世界の医療団は、ニジェールをはじめとし、ハイチ、ブルキナファソ、マリといった国々でこれらの政策を支持し、政策実行のための財政的な障害を取り除くために活動を続けている。

ニジェールの例は、医療無料化政策の正当性や、医療サービスの利用率に関してプラスの効果を示している。2005年より、ニジェールは妊産婦と5歳以下の子どもを対象に、医療費を無料化する政策を導入した。この政策により、医療サービスの利用回数の著しい上昇を示す結果が表れた。こうして、2005年には40パーセントの妊産婦しか医療サービスを利用していなかったのに対し、今では85パーセントの妊産婦が医療サービスを受けている。5歳以下の子どもの医療アクセスの向上に関しては、この医療費無料化政策により、乳児死亡の主要因となる病気の治療のためのサービスの利用頻度が、明らかに増加している。例えば、2006年以来、下痢の治療のために医療サービスを受けた子どもは、4倍になっている。

こういった前向きな結果にも関わらず、この政策の継続性は十分に保障されているとは言い難い。医療費払い戻しの大幅な遅れや、出資や国際的な支援の不足は、この医療社会保障システムの成果を揺らがせている。「いわゆる『無料化』の政策は、持続的な融資と入念な計画のもとに行なわれた場合、医療アクセスの状況を大いに改善することができると確信しています。この政策は万人のための医療保障システムの実施に貢献していますし、海外の出資者の支援を得るに値しています」と世界の医療団フランスの事務局長、ピエール・サリニョンは語る。このメッセージこそ、今年の11月にカンヌで開催されるG20の場で、世界の医療団が訴えようとしているものである。

社会保障の普遍的な基盤構築はG20の協議事項にも入っているが、医療費無料化政策による最も不安定な状況に置かれた人々への医療保障が、避けて通ることのできないすべての社会保障の重要な柱であることが認識されることが重要である。G20に先立って11月26日、27日にパリで行われる就業・雇用をテーマとする会合は、この政策の必要性を明確に訴え、万人のための医療保障の分野で見込みのある改革に取り組もうとしている歳入の限られた国々へ強いメッセージを送るチャンスである。

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