東日本大震災:現地医療活動レポート11

岩手県大槌町「こころのケアチーム」に参加して

東日本大震災:現地医療活動レポート11

©Eric Rechsteiner/MdM

私が参加した活動時期は災害から約3ヶ月が経とうとしている頃でした。関西出身の私は日ごろ看護師として働く中、阪神淡路大震災から16年経つ今でも、当時の悲しみをずっとかかえている方達に何人か出会ってきました。災害直後の急性期ではなく比較的ライフラインが整い、今後「心のケア」が長期に渡って必要となってくることは神戸の経験から予測できていました。しかし、私自身、精神科領域での経験はなかったのですが、とにかく何か少しでもお手伝い出来ることがあればという思いからボランテイアに参加するきっかけとなりました。

主な活動は保健センターから割り当てられた担当の地区、避難所に「こころのケアチーム」として精神科医、心理療法士とともに巡回し、随時診察やカウンセリングを行うといったものでした。世界の医療団チームが滞在しているところから活動地域までは車で約1時間半。東北の美しい山々を越え、海岸に近づくにつれて今までテレビの映像で見ていた被害の状況を目の当たりにしました。瓦礫は大分撤去されて道も整備されてきたというものの、町の商店街だった辺りはすべて壊れて何台もの車は逆さまに屋根に突き刺さり、防風林である高い松の木が切り株だけが残っていたり。それでもふと海のほうに目をやれば、美しい穏やかな三陸の海が広がっていて、とにかく私には理解不能なことが起こったのだと自分に言い聞かせるしかありませんでした。そして避難所で暮らす殆どの方はこの津波により愛する家族や友人、家までを突然にして失ったという経験をされた方です。そのような中でもそれぞれの避難所では、皆、役割当番があり驚くほど規律正しい生活をされていました。様々な団体からの炊き出しの食事を何よりも楽しみにしている人達、芸能人の来訪時には笑顔ではしゃぐ人達、お互いに助け合って少しずつ乗り越えようとしている姿に東北の方の人間としての強さを感じました。しかし一方では、不眠や気分の落ち込み、フラッシュバックなどに悩む方、また時間が経つにつれて少しずつ気持ちが落ち着いてくることで亡くなった家族に対する罪悪感を持つ方、行方不明の家族の遺骨だけでも見つかって欲しいと切実に願う方、やり場のない気持ちをどこにもって行ったらいいのか困惑している方にも多く出会いました。そして、それぞれの施設の職員や復興に向けて取り組んでいる職員の方々もまた被災者であり、皆ほとんど休むことなく働いていらっしゃいました。実際、私自身もお話を聞きながら、涙であふれそうになった場面が幾度とあったことを覚えています。

今後、避難所から仮設住宅に移るにあたって、また様々な新しい問題がでてくることが考えられます。これからも長期間に渡る「こころのケア」、「グリーフケア」の支援が間違いなく必要であることを実感しました。そして改めて今回の震災で被災された方々に心よりご冥福をお祈りし、これからの復興に向けて応援していきたいと思います。

看護師 尼田  歩

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