東日本大震災:現地医療活動レポート3

「泣いたの、初めて」と言って話をしてくださった方が何名かあった。「無我夢中で走り続けていました、私は大丈夫と思っていたのにね」。

東日本大震災:現地医療活動レポート3
震災より約一ヵ月半が経過し、 大槌町でも仮設住宅入居の申込みが始まった。また、津波被害により1階部分が浸水したものの、2階エリアでなんとか生活を送ることが可能な方たちは避難所よりご自宅へと生活環境を戻し、まだまだ不便を感じながらも、少しずつ普段の生活を取り戻しつつある。

時間の経過と共に、震災直後の過度な緊張感が少しずつほぐれる中、一方では未だに多くの身元不明者が存在し、瓦礫撤去作業中に犠牲者のご遺体が発見されることもしばしある。また、仕事や家屋、車を失った方たちがこの先どのように生活を再構築できるのか、現実に直面した上での新たな不安が高まっていることも事実である。 こうした状況下で、被災された方々の「疲労感」が目立ってきた。ある避難所のリーダーは我々に「もう疲れた、できるものなら、この場から逃げたい。」ともらした。また、別の相談者は震災後のストレスでつい子供に辛くあたってしまう、と不安を述べた。人々が抱えているストレスの種類が多岐化している。

こうした変化に伴い、我々、世界の医療団による「こころのケアチーム」の活動も、当初、重点をおいていた「傾聴」から、休むことに抵抗を感じる方々に休養を促したり、不安要素に対する具体的で実際的なアドバイスを提供できるよう、その形を変えつつある。

先日は司法書士の先生方にご同行いただき、各避難所にて相談会を開催した。必要な情報がなかなか入手できない被災地にあって、ローン返済や保険に関する知識など、現実問題に即した適確なアドバイスを専門家にご提供いただくコーディネートをした。
別の日には高校教員向けの「心のケア」と題した講義を行った。先生方もまた、被災者当事者でありながらもさらに生徒たちの苦しさを支える立場にある。適切な知識は、その気持ちを支えてくれる。
実際に避難所を訪問できる時間は限られているため、電話による相談サービスも展開している。また、避難所滞在者へのマッサージの提供も継続して行っている。

ある避難所の方に「弁護士さんに相談することはどんなことがありますか?」と尋ねたところ「こころのケアだよ」と仰っていた。自分でいろいろとしなければならないことがたくさある。それらの作業を一緒に手伝ってくれることが、疲労の極致にある方々にとって、もっともよいケアの一つなのかと思われた。

更なる長期的な復興支援に向け、我々医療チームは今、何をすべきか。そして何を残すべきかを考え続けたい。

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