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シリア:紛争から8年、真の悲劇はいまだ続いている

8年前の今日、3月15日、紛争が始まりました。国際社会において、時間とともに戦争の現実は風化されつつある一方で、紛争当事者の不処罰が続くシリアでは今も紛争は現実として日々の中にあります。終わりなき紛争はシリアの地に破壊と荒廃をもたらし、医療をはじめとした人道支援のニーズは計り知れません。その対応策を協議するブリュッセルで開催された会合にて、世界の医療団(MdM)は人道支援の強化とシリア情勢に対する国際社会の関与を改めて要請しました。

8年もの間、悪化の一途を辿るシリアの人道危機は、シリアに残る市民だけでなく、近隣諸国へと移った避難民にも耐え難き苦難をもたらしました。

- 死者40万以上、1,132万人が医療援助を必要としている。2018年3月の1,130万人から増加した。長期にわたる紛争の影響から国内ほとんどの医療施設が損壊、医療者は不足しており、市民の医療アクセスが確保できていない。

- 530万人のシリア人が避難を余儀なくされ、難民となった。そのほとんどがレバノン、ヨルダン、トルコの近隣諸国に滞在する。管理上、財政上の観点から、国外避難民の医療アクセスも大きな課題となっている。

- 8年の戦火では、医療システムが意図的な攻撃の対象とされ、シリアの医療者の3分の2が国外へと避難した。

- 特にシリア北西部および北東部に滞在する国内避難民は劣悪な生活環境にあり、感染症の脅威に晒されている。

- シリアの人々の15%が紛争経験からトラウマを抱え、メンタルヘルスケアを必要としている。MdMも日々支援活動に奔走しているものの、紛争当事者が率先して支援と復興に取り組まない限り、この目に見えない危機の傷跡は次世代まで続くことになる。


世界の医療団フランスの理事長フィリップ・ド・ボトンは、次のように述べています。
「8年の紛争はシリアを壊滅へと導きました。誰もが最悪の事態を脱したと考えてしまっているかもしれません。しかし、人々のこころに残る恐怖や不安は、年月が経つにつれて薄れていくどころか蘇り、トラウマとなるのです。今も悲劇は続いています。メディアや国際社会の関心がなくなるということは、特に保健医療従事者に影響を及ぼすことを忘れてはならない。医療者への攻撃の70%がシリアで起き、2018年にも120人の医療者が犠牲になっている。医療者にとって、世界で最も危険な国であるといっても過言でないでしょう」

長年、シリア国内で活動するMdMは、人々の健康と医療アクセスに関する人道支援ニーズが喫緊の課題であることを訴えるために会合に参加しています。
MdMはEU、国連、シリア政府がシリア危機は終わっていないことを認識し、支援と復興に向けた取り組みを強化するよう要請しました。国際社会はシリアの人々の医療と健康ニーズに応え、継続した医療サービスを確保するための必要な対策を講じなければなりません。
また、今回の会合では、改めて、医療従事者の保護と国際人道法の遵守が国際社会によって問われなければなりません。

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