©Eric Rechsteiner

世界の医療団日本、相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会

過去7年間の「福島こころのケアの実践と教訓」を発表

2019年3月11日、世界の医療団日本(理事長:ガエル・オスタン)と相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会(なごみ、理事長:大川貴子)は、7年にわたる福島県相双地区での協働の経験によって編み出された包括的なこころのケアのノウハウとパートナーシップの教訓を広く共有する目的で、冊子「福島のこころのケア:実践と教訓」を発表します。

「福島のこころのケア:教訓と実践」2019年3月発行

↑こちらからご覧いただけます。

執筆・編集・発行
世界の医療団
相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会(なごみ)



東日本大震災後8年経てども、終わりの見えない原子力災害の影響で、福島のこころのケアのニーズは時とともに変遷し複雑化してきました。被災から復興の過程で地域のつながりが分断されてしまった浜通り地区では、生活基盤や周囲の環境の激変や度重なる移転のストレスや疲労だけでなく、帰還先や避難先で多様な背景を背負ってくる人々と新たにコミュニティを築いていかねばならず、住民は大きな精神的、心理的、社会的な負担を経験します。

一方では、原子力災害に起因する子育て世代の専門家の県外流出が著しい福島では、肥大するニーズに対して保健医療福祉人材が慢性的な支援者不足に陥っています。全国的にも保健医療福祉分野の人手不足が深刻化する中、福島県沿岸部では中長期的な保健医療福祉人材の育成、確保、定着に取り組みつつも、短期的には県内外からの人材派遣に頼らざるを得ません。

福島のこころのケア 福島におけるこころのケアのニーズは、天災に起因するものとは異なり、長期化する復興の過程において新たな課題が提起されます。2012年初めより、世界の医療団となごみは地域の主体性を重んじつつ、外部の知見やスキルを導入する協働体制を組み、当事者の意思を尊重し、個々人に寄り添った包括的で柔軟な支援を心掛けてきました。



福島のこころのケア 災害直後のこころのケアの手法については、「サイコロジカル・ファーストエイド」のようなガイドがあるものの長期化する災害、またその復興の段階におけるこころのケアについての著作は多くありません。「福島のこころのケア:実践と教訓」は、避難指示解除が続く被災地で帰還先、避難先で今後も必要とされるこころのケアのニーズに応えると同時に、福島を越えて、今後も発生しうる災害の被災者に対するこころの復興に資するものと期待されます。
また、本冊子は、復興の過程における地域の保健医療福祉機関と外部支援団体の連携のあり方を考察し、震災後10年の節目が迫る中、被災3県におけるこころのケアを支える恒常的な支援体制の議論に一石を投じるものです。

なごみ理事長 大川貴子
「地震・津波・原子力災害という幾重もの被害を受け、かつ精神科医療が崩壊してしまった相双地区において、なごみは地域のニーズを把握しながら、精神医療、保健、福祉に関する新しい支援システムの構築を目指し活動しています。世界の医療団との協働活動を行なうことで得られた教訓を、多くの皆さまと共有し、様々な場で活用頂ければと思います」

世界の医療団日本 事務局長 畔柳奈緒
「世界の医療団はなごみの理念に共感し、地域の支援者自身が主体的に取り組む復興の過程に関与し、緊急援助から復興まで当事者に寄り添った切れ目のない支援を心掛けてきました。震災後10年を控え、今、外部支援団体として役割やビジョンが改めて問われています」


福島のこころのケア



「・・・被災地では「自分の3・11」や「あなたの3・11」を語る場面はとても少ない。人口のぶんだけ「私の3・11」があるのだが、それは心のなかに封印されている。手間暇がかかっても何年かかっても、私たちは「一人一人の3・11」を聞かなければならないのだと思う。被災地の人は、すべての「自分の3・11」を語る権利があり、そして悲しむ権利がある。 ・・・向こう何十年にわたって、震災を語ることが求められるだろう。そのためには「それを聞く人」を育てなくてはならない。」
メンタルクリニック「なごみ」院長の蟻塚亮二氏と副院長の須藤康宏氏による共著「3・11と心の災害」より抜粋

福島のこころのケア

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