世界の医療団のCSRセミナー ~企業とNPOとの理想的な融合を考える~ レポート

世界の医療団は、2010年11月25日ホワイト&ケース法律事務所にて、日頃パートナーとして世界の医療団にご協力をいただいている企業の方々からパネリストとしてお迎えし、企業とNPOの理想的融合を考えるセミナーを開催しました。

世界の医療団のCSRセミナー ~企業とNPOとの理想的な融合を考える~ レポート

近年日本の企業にも広く認識が広がってきた企業の社会的責任(CSR)活動ですが、まだ一般的ではありません。そこでNGOの立場から、そして企業の立場からCSRについて考える為、このセミナーを企画しました。幸いに多くの方々のご参加をいただきCSRに対する認識の再確認、理解の一助となり、有意義なセミナーとなりました。

 企業は事業理念のもとに営利活動を行い各種のステークホルダーが関わっています。世界的に広く活動している世界の医療団のブランド・ネームヴァリューを活用していただく一方、世界の医療団では企業からの財政的支援、役務提供支援、メディア活動支援を引き続きいただきたいと考えています。相互のより深い理解のもとに企業とNPOとのパートナーシップを確立していきたいと念じております。


 世界の医療団の医療現場からは、外科医・麻酔医の宮尾陽一氏がカンボジア「スマイル作戦」でのご自身の経験を基に発表されました。

 パネリストは以下の皆様で、世界の医療団の企業パートナーであるとともに日常の業務の中で多様なCSR活動を実行されている方々です。パブリックリソースセンター田口由紀絵氏の司会の下に、各プレゼンテーター方々からそれぞれのCSRでの経験をもとに企業とNPOとの関係について次のような発表がなされました。


1. アメリカンエキスプレス・インターナショナルINC 個人事業部門マーケッティング部部長 内田一康氏:
アメリカンエキスプレスの基本理念の一つである「社会に貢献する良き市民」に沿って行動する事で「世界で最も尊敬されるサービス・ブランドになる」を具現化していく。事業の中核であるカードを基にしてカード会員、加盟店、社員そして会社/アメリカンエキスプレス財団が共通の社会的課題の解決に協力している社会貢献活動を支えるネットワークを構築している。
年間約3千万ドルの予算で、「多様な文化遺産の保護・修復」、「地域社会への貢献」、「明日のリーダー育成」をテーマにグローバルな支援を実行している。協働される皆様がWin-Winの構図が出来るようにプロジェクトを考え実施している。
 
2. アンスティテュエステダムジャパン株式会社 ジェネラルマネージャー ラファエル・ジュタン氏:
 当社はスキンケアのエキスパートです。美しいだけでなく健やかで生命力溢れる肌を創ってきています。当社の製品販売・サービスに加えCSRを通じてブランドの存在意義を各ステークホルダーに伝え、同時に社会の形・方向性に影響を与える事を認識して、CSR活動に積極的に取り組んでいます。
 世界の医療団は当社のブランドイメージに合い且つ活動しやすい環境を示されていたことから協働する相手として選択した。今後の活動は「一億人のバレンタインプロジェクト」として子どもの問題を切り口として労働、病気、栄養失調、教育、人権などの問題を発信していく。

3. エキスパートグループ・ホールディング株式会社 取締役 吉田倖子氏:
当グループでは社会貢献憲章として次の三点を掲げCSR活動を推進している。
(ア) 全員参加:
(イ) 受益者の見える社会貢献:
(ウ) 心の健全育成を伴う社会貢献:
単に「資金を出す」のではなく自身が参加することを実感できるように、また、支援が受益者も将来支援をする立場になるであろうと理解されていくようにと考えている。支援者と受益者とを繋ぐことが重要と考え、支援活動の対象を評価している。活動には支援する側と受益者側との相互理解が大事で、何を目的として具体的に何をしているかが明示される必要がある。
日本の寄付文化は、淡路神戸大震災を機に、急速なインターネットの発達と共に日本のボランティア活動が広がった。企業も事業を通して社会に貢献することが本質であり、環境への取り組み、ボランティアへの社員参加なども進んでいるが、一方、金銭での寄付にはまだ一般的に確立されたものがなく何処にどの様にするか迷いがあるように見える。企業に関係する多くの人々が納得する資金の遣い方が要請されており、NPO側からもこの状況を理解し企業が寄付できるよう提案が必要である。これらが継続的な活動の基礎となり、心豊かな社会を期待する。

4. ホワイト&ケース法律事務所 アソシエイト外国法律事務弁護士 ニューヨーク州弁護士 関谷智子氏:
事務所創業設立以来の長い歴史の中で昔から社会貢献活動を実施してきており、世界各地に展開されている事務所に文化として浸透している。CSR担当部門もありCSR活動を支え社内外の広報を実施している。
当事務所では次のCSR活動を行っている
① 慈善活動・法教育:公益活動で無償法律相談など実施している。米軍での同性愛者差別問題など人権擁護、法の下の平等に関わる事を進め、国際模擬法廷・国境なき弁護士団・法教育プログラムへの参加など行っている。
② 地域ボランティア:小規模ではあるが事務所員の地域でのボランティア参加、寄付金を出すなど。
③ プロボノ:世界の医療団 日本への法律相談もその一つと位置付けられるが、無料での法律相談を行っている。
④ 環境活動:環境負荷を低減させる運動を行っている。
事務所にとってCSR活動は、対外的には事務所のイメージアップ、ブランド力の強化であり、社内的には働く人々のモラルを引き上げ、交流を活発にさせ連帯感を醸成し、事務所での仕事のしやすい環境を作る。CSR活動はGlobal Standardとなっており、顧客と従業員から求められるものである。


質疑応答では以下の点が話された。
1. 世界の医療団への支援のきっかけ:
ホワイト&ケース法律事務所では、両者に友人がいたことがきっかけで、世界の医療団の法務事項の専門家がいない所に新たなシェルタープロジェクトが始まり、法律の専門家の支援が必要となった。同事務所のCSR活動として取上げられ無償での法律アドバイスがされており、世界の医療団では大きな助けになっている。
2. パートナーを選ぶ基準:
アメリカンエキスプレスではCSR活動は広報部門が担当であるが事業部門と協働している。選定の基本は、パートナーの信頼性、実績、透明性が基本だが、顧客からの要望もあり支援が金額ではなく目に見える内容(例えばポリオワクチン3人分とかマラリア治療薬など)で具体的に示される相手を選んでいる。
3. 寄付の継続性:
エキスパートグループでは「支援者の気持ちを受益者に、受益者の気持ちを支援者に伝える」を基に、両者が常に近い関係にあるようにし、志の籠った支援金とし気持ちをお互いシェアするように努める。

 最後に、世界の医療団本部(フランス)の理事長オリヴィエ・ベルナールより、参加された皆様に衛星通信を通じてお礼のご挨拶。約2時間に渡るセミナーが終了した。

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