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ラオス小児医療強化プロジェクト:

現地活動(医療スタッフ能力向上)レポートVol. 1-4 ポケットブック研修

WHO発刊「病院における小児診療ガイドブック」いわゆる”ポケットブック”に基づく初めての研修が、2018年7月に実施されました。郡病院の医療サービスの向上を図ることを目的としています。今回のレポートでは、郡病院スタッフを対象に行なった研修の様子をお伝えします。

ポケットブックとは、「病院における小児診療ガイドブック(*1)」の通称です。いつでも取り出して使えるように、その名の通り、手のひらサイズです。保健省の国家保健戦略と行動計画には、郡病院より高次に位置付けられる医療施設における子どもの診療に関し、このポケットブックに基づくサービス向上が記されています。

2017年にジェニファー・ヤン小児科医が、小児医療専門家として県・郡病院によるヘルスセンターのスーパービジョン活動に同行しました。(ラオス小児医療強化プロジェクト現地レポート:ジェニファー・ヤン医師「スーパービジョンから見えてきたこと」)。その際、ヘルスセンターでのIMCI(Integrated Management of Childhood Illness:小児疾病統合管理(*2))の促進に加え、ポケットブックを活用することで、郡病院の医療サービスの質を向上することが推奨されました。その目的は、ヘルスセンターから搬送された患者を治療する郡病院の診療技術を向上することです。郡病院で対応できれば、さらに県病院まで搬送する必要がなくなります。
このアドバイスを取り入れ、世界の医療団では2018年から、郡病院スタッフを対象にポケットブック研修を開始しました。

2018年7月、第1回目のフアムアン郡での研修には、ビエンチャンの国立病院からベテランのトレーナー、アンファイバン医師を招へい。経験の浅い県病院トレーナーを補助してもらうためです。
研修の冒頭で、彼女は「ポケットブックを使用した郡病院の強化は、国家保健戦略に基づく重要な取り組みだ」と前置きしたうえで、3日間にわたり県病院トレーナーをうまくサポートしながら、参加者である郡病院スタッフにも直接・間接的にご指導くださいました。

アンファイバン医師

ポケットブック研修の初回は、アンファイバン医師のアドバイスで、ETAT(Emergency Triage Assessment and Treatment:トリアージとアセスメントに基づいた緊急対処)、 新生児がかかりやすい疾病、こどもの呼吸器疾患、脱水症状、熱の対応にテーマを絞って行われました。
ガイドブックの解説、マネキン等での実践訓練、さらに過去の事例等を思い出しながら、受講者とトレーナーで質疑応答の時間をもち、各テーマについて知識を深めました。

国立病院トレーナーと県病院トレーナーによる研修は、郡病院の受講者から高い評価を受け、さらに研修開始前にもアンファイバン医師から指導を受けた県病院トレーナーは「3日間の研修中に多くを学び、自信につながった」と話します。

そして、郡病院の受講者たちは「今までポケットブックを参照してきたものの、正しい使い方を知らなかったが、今回の研修でよく理解できた」と語ってくれました。研修中は、マネキンを使用した実践訓練も行いましたが、順番を待つ受講者の待ちきれない様子が印象的でした。

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研修後に行ったトレーナーチームの振り返りミーティングでは「受講者が今回の学習を日々の診療で実践していくこと、そして、ポケットブック研修を継続していく必要があること」とアンファイバン医師は強調しました。

2019年には、フアムアン郡とソン郡において、世界の医療団と県保健局で第2回目のポケットブック研修を計画しています。県保健局は研修を継続、さらに他郡にも展開していくことを希望しています。

その実現のためにはいくつか課題があります。当面の課題は、県レベルのトレーナーをより計画的に育成し、県全体の研修計画に具体的に落とし込むこと。そして、将来的に県保健局が自分たちで研修を継続していくためには、企画力と同時に予算の調整力を強化しなければなりません。
世界の医療団は、県・郡保健局が自ら計画を立て実践することを意識し今後も研修をサポートしていきます。

(*1) WHO発刊Pocketbook of Hospital Care for Children
(*2) WHOやUNICEFが、医療資源の限られた地域で使用を推奨している診断ツール。5歳未満児の死亡原因で上位を占める下痢や肺炎に重点を置く。


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徐々に自信をつけた県病院トレーナー(左)が小児マネキンを利用した実践練習をファシリテートしています。



*本事業は事業資金の多くを外務省「日本NGO連携無償資金協力」の支援を受け、2017年2月より活動を展開しています。

*これまでの「ラオス小児医療強化プロジェクト」活動記事はこちら

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