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ロヒンギャの人々とともにコミュニティ・レジリエンスを創る

藤田容子看護師:「難しさはいっぱいあるけれど、できることも少ないかもしれないけれど、ゼロにはならない、やり続けていかなくては」

―バングラデシュ・コックスバザールの難民キャンプでの支援活動も第2フェーズへ―

「先の見えない不安を抱える人たちは、支援があることで気持ちも救われることもある、難しさはいっぱいあるけれど、できることも少ないかもしれないけれど、ゼロにはならない、やり続けていかなくては」
現地にて、前プロジェクトから立ち上げまでメディカル・コーディネーターとして活動した藤田容子看護師にお話を聞きました。 


キャンプ住民の中でも、さらに弱い立場にある人たちがいる

4月中旬から8月中旬まで、メディカル・コーディネーターとしてバングラデシュ・コックスバザールに滞在、活動に参加しました。活動としては、先日、ロンチした「ロヒンギャ難民コミュニティ支援プロジェクト」の立ち上げ、例えば事業計画書の作成や活動に伴う下準備を行っていました。
新プロジェクトでは、アウトリーチを通じ必要な人を医療に結びつける活動から、医療ニーズのある人だけでなくコミュニティ全体に働きかけ、予防に力をいれていくことに重点を置いています。地域の回復力:レジリエンスをそのまま上げるために、キャンプ住民の健康知識、態度、行動を改善させることに働きかけていきます。 

藤田容子看護師 前プロジェクトを通じ、実際、支援対象者の約6割が医療につながりました。同時に、これまでの経験で負ったトラウマや難民キャンプでの暮らしからくるストレスから、メンタルヘルスケアのニーズは依然としてとても高いということなど、新たなニーズを把握することができました。ストレスのはけ口は、弱い立場にある人に向けられやすく、女性、子どもがその対象になりやすい、また女性や子どもの体とこころの健康は、意思決定を持つ男性に左右されやすいこともわかりました。また14才から17才のユース層は、地域社会や支援サービスからも取り残されやすく、犯罪に巻き込まれやすいとされています。キャンプ内の教育支援も初等教育がメイン、働く機会も少なく、シェルターでひとり留守番することが多いのがこの世代です。取り残されがちであるユース層はメンタルヘルスケアも必要であることが多く、自宅にいる子たちをコミュニティ活動に巻き込んで、地域社会全体に働きかけていこうという発想につながりました。


日々発生する犯罪、事件、キャンプの治安は悪い

キャンプ内は区分けされていて、それぞれキャンプ・イン・チャージと呼ばれる監視役がいるのですが、なにせキャンプ全体で70万人を超える人がいるため、日々発生する揉め事や事件に対処しきれていません。ほとんどのロヒンギャの人は携帯を持っているため、何かしら事件や暴力などの報告があると、あっという間に情報が拡散されていきます。実際、凄惨な事件も報告されています。
暗い部分に着目するのはよくないとは思いますが、悲惨なことは今も起きています。 
学校教育も支援サービスがあるにはあるのですが、全員が受けられているわけではないんですね。


子ども、若者がもつ情報発信力

今回、なぜコミュニティでの健康教育にユースを起用したのか?、大人の場合、長年培ってきた健康行動をいきなり変えた方がいい、と言われても、簡単にできることではないですよね。子どもは純粋で、教えたこと、知識が行動に結びつきやすい。例えば手洗いの方法、ゴミ出しの方法、地域のことを考えて一人一人が行動しましょう、というようなことを教えると、すぐに行動につながります。それらを家庭で兄弟姉妹に見せる、示すことでさらに拡がりを見せる、そういった子どもが持つ発信力に着目しました。そしてその子どもたちが大人になって、彼らの子どもに、コミュニティに、というように、世代をまたぎ、その知識が伝えられていきます。


40人のユースたちとともに。。。

少し前に、活動に参加するユース40人も決まりました。みんな、わくわくしているというか、活動への意気込みが感じられます。教育を受けていない子が多く、特に女の子はほぼ全員読み書きもできません。文字で伝えられない場合、やはり絵を中心に言葉で説明していくことになると思います。これまでのプロジェクトで育成したバングラデシュ人のコミュニティ・ヘルスワーカー(CHW)やロヒンギャ・ボランティアらコミュニティ・モビライザー(CM)が彼らに研修をしていきます。研修は、コミュニティで活動するってどういうこと?から始まり、「コミュニティの人々にアクションを起こしてもらうから、コミュニティ・モビライゼーションって言うんだよ」、ボランタリーワークとは?まで、CMやユースのプロモーターに学んでもらいます。彼ら自身がコミュニティにある健康問題を把握、その健康問題をコミュニティにどうやって伝えるのか、働きかけるのか?そういったキーメッセージを理解してもらい、彼らの行動にも取り入れてもらうための研修です。
例えば、絵が描いてあるフリップを使って、ストーリーを仕立ててもらい、なぜ下痢になったか、をそれぞれが考えていきます。同時に、ツールは自分たちで作ることもできる、どういうコミュニケーションツールがあるか、どういうふうにコミュニケーションツールを使えばいいか、などを伝えています。


看護師になったきっかけ、そしてバングラデシュへ

高校生の時、テレビで赤十字の看護師が、シエラレオネの栄養失調にある子どもたちにポリッジを食べさせている姿を観たのが、看護師になりたいと思ったきっかけです。その姿が目に焼き付いて、離れませんでした。看護師になれば、こういう活動に携われることができるんだと思って、看護師を目指しました。赤十字社の看護師になったものの、看護師として一人前にならなければ、そんな国際看護の現場には行かせてもらえないことに気付き、日本で懸命に看護師の仕事に取り組みました。その間、私は国際医療の現場に関わりたいという希望をことあるごとに訴えていたところ、国内救護に携わるようになったんです。原発事故の影響で福島県いわき市に避難する浪江町からの被災者の方たちが、無料受診や病院が混雑することに引け目や遠慮を感じ、病院へ行く必要があるにも関わらず行けない、そういった診察に行きにくさを感じる人たちへの保健支援のプログラムなどにも参加しました。以降、国際看護活動に加わる機会も増え、海外では、パキスタン、ハイチ、インドネシア、フィリピンなどで自然災害での緊急・復興プログラムに参加してきました。日本では小児科看護師をしていたのもあり、子ども向け栄養補給プログラムなどにも携わりました。その後、家族の仕事の関係で、中東に滞在していました。しばらく前から、国際看護の仕事に集中したい気持ちが高まり、仕事に復帰、世界の医療団のロヒンギャ支援活動に参加することを決めました。


ロヒンギャの人々と自分たちができること

ロヒンギャの人たちは、安全と権利が守られない限りは帰還できない現状にあります。先がみえない、かつて住んでいた場所に帰りたいのに、帰れない。キャンプには、多くの支援団体が活動していますが、それでも十分ではありません。
公平・公正な支援がすべての住民に行き届いているかというとそうは言えない、支援から漏れがちな人たち、より脆弱な立場にある人たちにも、公平に支援が行くようになることが、まず最初に必要なことだと思っています。難しさはいっぱいあるけれど、できることも少ないかもしれないけれど、ゼロではない、やり続けていかないといけない、先の見えない不安を抱えている人たちは、支援があることでたったひとつであっても救われていることもある。ニーズがあって、できることがあるならば、それをやめてはいけないと私は思っています。

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