©Guillaume Pinon

難民とは、 生き延びるためのただ一つの道

今もなお、多くの人が住み慣れた場所を離れなければならないという苦難にみまわれています。中東・アフリカ、アジア地域からの難民の主な流入先である欧州では、難民をめぐる軋轢も引き続き生じています。
難民と呼ばれる一人ひとりの個人はみな、私たちと変わらぬ、どこかの国や地域の市民です。しかし彼らは今、大きな困難の中で生きることを余儀なくされています。

暴力の連鎖から逃れるため、アフリカ・中東地域からボートで海を越え、アジアでは迫害されているロヒンギャの人たちが徒歩で国境を越えて隣国へ。こうして住み慣れた土地を離れた人の数は、昨年1年間だけで全世界で2540万人に上りました(UNHCR)。これは東京都の人口のほぼ2倍に当たります。

しかし、たどり着いた先で安らかな生活を送れる保証は何もありません。拒絶、暴力、医療へのアクセスの途絶、そして社会からの疎外。難民になった背景はさまざまでも、難民としてたどり着く状況は、驚くほど似通っています。
中でももっとも弱い立場にあるのは女性や子どもたちです。

©Guillaume Pinon


長く過酷な旅路


難民 2歳の娘を連れて逃げたギニア人女性ヴィキさん(仮名)はこう振り返ります。
「あの時、私たちには殺されるか逃げるかしか選択肢がなかった」。

しかし、彼女たちの逃避行は非常に苛酷なものでした。マリ、ブリキナファソ、ニジェールを横断し、時には死体が転がる砂漠を渡ることもありました。たどり着いたリビアでは性奴隷のように扱われ、半ば人身売買のような状態でヨーロッパにたどり着きました。この間、娘は命を落としました。激しい苦しみがヴィキさんの体と心を蝕んでいます。

誰にでも保障されるはずの、いのちの安全とささやかな暮らしを求めて、人々は大きなリスクをとりますが、その代償に得られる暮らしは、安らかさとは程遠いのが現状です。どこかの国や地域の「市民」だった一人ひとりが、いのちの安全を求めて難民になり、ふたたび新たな土地の市民になるまで、世界の医療団は寄り添い続けます。


欧州にたどり着いた難民たちに立ちはだかる壁


難民

9/10


診察を受けた難民の10人に9人が心に傷を負っています。(*Centre Primo Levi)


54%


施設利用者の54%が、仏語圏の施設で仏語を話せず、十分に意思疎通ができませんでした。
(*Centre Primo Levi)


86%


施設利用者の86%が、病気の治療の際に受け取れる補助を受けていませんでした。(*Caso:2017)

*Caso: 世界の医療団が展開するクリニック *Centre Primo Levi: 世界の医療団が他の支援団体と共に運営する施設。いずれもパリ市内



こころと体、そしていのちを守る傘


難民を取り巻く社会の変化を感じながら支援活動を続ける中で、世界の医療団は、私たちに求められている役割、使命の重大性を再確認しました。

難民たちは、生きるための逃避行の中であらゆる困難に遭い、また新しい土地では言葉も通じず、さまざまな支援や福祉サービスにアクセスできないばかりか、孤独を感じています。将来が見えない不安を抱える日々を過ごす中で、心身ともに疲弊しているのです。

難民 求められているのは、医療にとどまらず必要な支援を受けるための行政手続きを手助けできる法律家や通訳など、さまざまな専門的なサポートです。

こうした状況を受け、アフリカ、中東、アジアからヨーロッパの広い範囲での数々の国境を越える移動ルートで医療へのアクセスの確保と、難民の受け入れ・サポート態勢の強化を目指し活動しています。刻々と変わる情勢の中にあっても、難民が置かれている状況を的確に把握し、包括的な支援を行うためです。



世界の医療団の取り組み


◆医療の提供と安全の確保
紛争地、通過国、到着地の各地点において、その地のニーズに即した医療を提供します。

◆難民流入地域の受け入れ態勢の強化
地域で適切な対応ができるよう、公的な保健医療サービスを含む、医療組織に対し、基盤の強化や人材育成を行います。

◆社会や法律などの抜本的な改善
データに基づいた、医療へのアクセスなど難民が直面する問題を明らかにし、尊厳を持って暮らせるよう各国政府、国際社会へ働きかけます。


皆さまからのご寄付は、難民が心身の健康を取り戻すための支援として届けられます。
健康は明日を生きるための希望につながります。どうかあたたかいご支援をお願いします。


©Guillaume Pinon

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