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04.12 2016

東京プロジェクトに新パートナー、医療部門を担うクリニックが開院

-ゆうりんクリニック院長西岡医師にお話を伺いました!


東京プロジェクト(「NPO法人 TENOHASI」、「べてぶくろ」「精神科訪問看護ステーション KAZOC」、「世界の医療団」)に新たなパートナーが加わりました。「つくろい東京ファンド」、そして新たに立ち上げたばかりの「SWOC:ソーシャルワーカーズオフィス/クリニック」、その医療部門を担う「ゆうりんクリニック」が4月1日開院しました。
院長は、世界の医療団の東京プロジェクト担当医師でもある西岡誠医師(内科)。ゆうりんクリニックの名前の由来から院長になった経緯まで、お話いただきました。
 

ゆうりんクリニックという名前の由来は?

私がいつも持ち歩いている「論語」に「徳孤ならず必ず鄰有り(有鄰)」という言葉があってそこからとりました。もともとは「徳のある人は孤立しない、必ず仲間が集まってくる」という意味です。みんなのため役立つことをしていれば、必ず同じ志の人が集まってくると私は解釈しています。また「私たちがあなたの良い隣人でありたい、困っているあなたの隣に居たい」との想いも込めています。ここで言う「隣人」とは、ただ地理的に近くにいる人ではなくて、「困ったときに寄り添って助けあう関係にある人」だと思っています。「困っている人」と「私たち」の関係は「よき隣人」でありたいと思うんです。「仲間」という言葉には、個人的にちょっと違和感があります。「支援者と被支援者」という上下関係を含んだ言葉も嫌だ。「隣人」という距離がしっくり来ます。


東京プロジェクトの活動に参加されたのは?

初めてTENOHASIの炊き出しに来たのは2013年の12月です。行ってみたら、あまりにいろいろな人がいて驚きました。ご飯配って、鍼灸マッサージやって、ほっと友の会(お茶会)やって、イスラム教の人たちがカレー配っていたり。つい最近まで野宿していたような方も支援する側にいる。
不思議でした。ガチガチの闘争団体じゃない、慈善事業でもない。いったい何なんだ?と。
その頃、大阪の仕事が一段落したので森川すいめいさん(世界の医療団・TENOHASI理事/精神科医)に「勤務先を探している」と話したところ、「ぜひ私のいる病院に」と誘われました。「精神科病院だけど、内科の患者さんがうじゃうじゃいます」と。そこでメールで「勤務条件を教えて下さい」と問い合わせところ、その返事が「西岡さん、町を作りましょう。自殺者の少ない生きやすい町を池袋に作りましょう、やりましょう」でした。びっくりしました。給料とかの条件を聞いたのにそれには全く触れておらず、正直「何言ってんるだ?」と思いましたよ。四十を超えた大人の話じゃない。でもとりあえず「がんばります」と返信して東京に来ました。


そして現在はクリニックの院長になられるわけですが、どうしてクリニックを作ろうと思ったのですか。

クリニックの必要性は以前から感じていました。昔は、ホームレスの人を救急で病院につれて行っても「何でこんなやつを連れてきたんだ」と怒鳴られ、まともな医療を受けられないことがしばしばありました。今はちょっとまともになりましたが、障がいがあって自分のことをうまく話せない人や、親しい人には話せるけど病院では話せなくなってしまうような人はたくさんいて、話せないから適切な医療を受けられない。そんな人を親身に診てくれたり、生活困窮者の状況をきちんと理解して診てくれる病院は、残念ながら多くはない。

支援をやっていく中で気が付いたことがもう一つあります。路上生活者は一様に健康状態が悪い。「自立生活サポートセンターもやい」の「こもれびカフェ」に亡くなった当事者の方の写真が飾ってあるけれど、見るとみんな若くて、50~60代で亡くなっている。これは成人に達した江戸時代の人の平均余命です。現代日本で江戸時代程度の寿命しかない人たちがいる。それも、飢死や凍死ではなく、路上生活で身体を蝕まれて、検査も治療も受けられないから悪化して、高血圧やガンや糖尿などの病気で命を落としています。

医療相談に来る人の多くは風邪とか腹痛を訴えるから、とりあえず対症で市販薬などを渡すけれど、その陰には重大な疾患が隠れていることが多い。だから路上から脱出しても、平均寿命まで生きる人というのはとても少ない。既存の支援活動の中では、本当の病気のケアがスポンと抜けています。対症もやるが、身体の根本のニーズにもきちんと対応する支援が必要です。 さらに気がついたのは、路上生活者の中には支援するのが難しい人がたくさんいますが、そんな人を支援する中心は医者じゃなくてソーシャルワーカー。ソーシャルワーカーというのは支援する団体のスタッフだけではなくて、毎週の夜回りでおにぎりを渡す当事者スタッフとか、直接アプローチして話しかける人、現場に出る人。それをサポートするクリニックでないと体調も良くならない。だから、SWOCの中心理念は「資格のある人ではなくて、関係を結んでいる人が主力」。です。 それを支える「ソーシャルワーカーに使い勝手のいいクリニック」にしたいと思っています。使いやすい、モノが言いやすい、そんな医者、クリニックでないといけません。今は病院と患者との間で板挟みになっているワーカーが多い。そんなワーカーたちに「ちょっとここで診てもらおうよ」「ここでコーヒー飲んでいこう」という感じで使ってもらえればいい。クリニックといいながらも、ソーシャルワーカーの支援機関でもありたい。

池袋に来てから、「人が健康になるのに、医者はいらないのかも」と思うようになりました。路上の人が生活相談に来て、そこでワーカーやボランティアと関係ができて、医者が診る、それが一番です。路上の人同士で「お前、ちょっと診てもらったらええんちゃう?」とか言って来てくれるのもいい。

そんなものはよそでもある、という批判もあります。「自治体によっては医療単給(生活保護 の医療扶助だけを給付して、路上から病院に通う)があるし、緊急のときは救急車、金がなかったら無料低額診療(低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行う事業。厚生労働省は、「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者が無料低額診療の対象と説明している。東京都内では20カ所の医療機関で実施している)があるのに。。。」
でも、無料低額診療所でも薬は有料、救急車は、救急病院に駆け込む必要がない人が使ってもらっては困る。だから、悪くなるまでみんな我慢して、ギリギリになったら呼ぶ、でも「短期だったら無料で診る、薬も出す」という無料診療部門のあるクリニックがあれば、みんなが気軽に来ることができます。「今日は風邪薬だけ出すから、困ったらまた来てね」という感じで。生活保護が必要な人はクリニックからファックス申請して、それからは医療扶助で来てもらえばいい。
また「無料で診るとモラルが低下する」という声もあります。でもね、炊き出し夜回りの医療相談でも薬を出していますが、みんな2~3日分で有り難がってくれて、「1ヶ月分くれ」という人なんか居ません。モラルハザードにはならない。むしろ、本当に来て欲しい人が来ないのが現状です。


クリニックでの診療は?

診察は週3日、私が内科・森川医師らが精神科を診ます。これからは医療相談も変わります。週末の炊き出し会場で行う医療相談では、市販薬しか出せません。だから例えば「血圧がかなり高いからあの処方薬がないと危ない。でも、「ここでは出せないから救急車呼ぼう」という時に、これからは「ゆうりんクリニック」に連れてきてもらって必要な処方薬を出し、ワーカーが泊まるところを確保して週明けに生活保護を申請する、というふうに途切れないケアが可能になります。


ソーシャルワーカーの給料を確保するために医師の報酬を抑えると聞きましたが。

はい、私=院長は無給です。他で稼ぎます。私以外の医者は勤務医になるので無給にすると 労働基準法違反ですから、一応給料は払いますが、最低限に抑えます。その医者がもらった給料を寄付するのは自由です(笑)。


今後の展望は?

飲酒の問題一つをとっても、なぜ人は酒を飲むのかと考えると、明日、仕事でも何でも「やること」がある人は飲んでもあんまり無茶をしない。でも、「やること」や役割を失うと無茶苦茶飲む。医者は「飲むな」と言うけど、酒を飲まなくても済む環境をつくることがどんな薬よりも有効です。人が健康になるのに必要なのは、「その環境をつくる」=「人がつながっている街をつくる」ことです。「医者がたくさんいる街」ではない。
5年後10年後を考えると、路上の方はだんだんと減って、高齢者・認知症にフォーカスを 移していくことになると森川さんは見越しています。それに備えて、認知症ケアのできる人を育てていきます。ここで一番にやっていきたいのは医療従事者の研修です。特に若い医者や看護師にとっては、最高の研修機関になります。病院や在宅ケアだけではわからないことがここでは学ぶことができます。
もうひとつ、当事者の方への情報提供をやります。今、夜回りでチラシを配っていますが、他に読むモノがないから、皆さん結構読まれてるいるようです。「薬使わずに血圧下げる方法」「薬を飲まずに眠れる方法」とかそんな情報を「ゆうりんだより」!?として配布したい。チラシ一枚で健康にできることもあるんです。


活動を通して、見えてきたことは?

既存の制度ではうまくいかない人がこんなにいて、その隙間を縫って貧困ビジネスがこんなにはびこっている。ここに来れば、今の世界でどんなことが起きているのかが見えてきます。


最後に、読者にメッセージを。

うーん、どうしようか・・・
野宿の人も 家のある人も 若者も 年寄りも みな健康で幸せでありますように!
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