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ラオス小児医療強化プロジェクト現地レポート:ジェニファー・ヤン医師「スーパービジョンから見えてきたこと」

6月上旬、小児医療専門家によるスーパービジョン(高次の医療施設が管轄区内の病院やヘルスセンターを巡回し管理・指導を行なう活動)が実施されました。
今回、小児医療専門家として、メルボルン大学小児科学部国際小児医療センターで臨床講師を勤め、小児医療分野、ラオスの小児医療においても深い知見を持つジェニファー・ヤン医師を派遣、医療システムの構築に欠かせない大切な活動から見えてきたことをヤン医師が述べています。

今回、私たちはカウンターパートのスーパービジョン(高次の医療施設が管轄区内の病院やヘルスセンターを巡回し管理・指導を行なう活動)に同行し、観察と助言を行いました。
ラオスにおいて、不定期、かつ臨床経験豊富な医療者によってスーパービジョンが行われることはまれであり、臨床指導というよりは報告義務のあるデータ収集のためのチェックリストを利用し、チェックボックスに印を入れて終わることの方が多いのが現状です。

ラオス小児医療強化プロジェクト現地レポート:ジェニファー・ヤン医師「スーパービジョンから見えてきたこと」
本来、スーパービジョンは定期的に行われるものであり、意義ある助言が現場の医療スタッフに届くようにすることが必要です。特にフアパン県のように、多くの村が病院から遠い、道路事情がよくない場合、村々に一番近い存在であるヘルスセンターのスタッフがより高度な医療技術を身につけること、これがまず必要とされています。
そのため今回の同行では、県・郡病院スタッフからなるスーパービジョンチームに対し、チェックリストに沿った確認によって問題が判明した場合、ヘルスセンタースタッフに対するフィードバックの時間をどんなふうに盛り込んでいけるかを具体的に例示することに努めました。
これは短時間かつ小さな工夫ではありますが、スーパーバイザーであるスタッフにとっては重要な思考の切り替えになるものです。スーパーバイザーがチェック作業を、単なる事務作業と認識するか、それとも、ヘルスセンタースタッフによる実践技術向上を促進する指導機会をとらえる補助ツールとして認識するか、の大きな違いがあるからです。

ラオス小児医療強化プロジェクト現地レポート:ジェニファー・ヤン医師「スーパービジョンから見えてきたこと」
私たちスーパーバイザーチームがヘルスセンタースタッフによる子どもへの診察を観察していた際、ヘルスセンタースタッフは、どうしたら自分たちの技術が向上するのかとスーパーバイザーチームのフィードバックを求めてきました。
また、一緒にスーパービジョンを行なった県や郡の病院スタッフも大変熱意をもって活動にあたっており、私が例示した医療スタッフの監督方法をすぐに真似て自分のものとしていたことに感心しました。
スーパービジョンを受けたヘルスセンターのスタッフからは、1回のスーパービジョンで3年分は学んだという声も聞かれました。ヘルスセンターからのこの発言は、県・郡のスーパービジョンチームにとって喜ばしいフィードバックで、彼ら自身がスーパービジョンのあり方を問い直し変えていく動機となることだと考えています。

(補足)今回紹介したスーパービジョンは、サポーティブ・スーパービジョンといい、現場のスタッフに対し良い点、改善点をフィードバックし、患者への診察看護の質向上を促進していくものです。そこに、質問に応えたり、実践を振り返りながら的を絞った技術指導(ティーチング)をほんの少し盛り込みます。指導というよりは、本人たちが改善すべき点に気づき、実践における改善案にたどり着くまでの試行錯誤作業を一緒に行います。

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写真上:
ヘルスセンターで小児健診中。ヘルスセンタースタッフ(マスクをしている男性)の様子を、Jenniferと郡病院スタッフが見守ります。(スーパービジョンで「3年分は学んだ」と言ったスタッフです)

写真中:
県病院スタッフ(左端)が、ヘルスセンタースタッフに代わり、健診後の母親への説明をデモンストレーションしている様子。

写真下:
郡病院スタッフ(手が写っている手前の方)が診察記録の確認をしながら、ヘルスセンタースタッフ(左)に質問しています。全工程が終了してから郡病院スタッフやヘルスセンタースタッフにアドバイスをするため、Jennifer(右)と県病院スタッフ(中央)がそのやり取りを見守ります。

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